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物理学科(基礎理工学専攻 修士課程2年【※】)

山梨県・山梨県立吉田高等学校出身

勉学、学校行事と積極的に取り組んだ高校時代に得た、学びへの気づき。その気づきをきっかけに進んだ物理の世界で、現在は超電導の物質特性を調査して理論を拡張させる研究に取り組んでいます。探求心を胸に主体的に学び続けてきたこれまでを振り返りながら、大切にしている学びの姿勢や自分を成長させてくれた出会いなど、今の自分を形づくったモノやコトについて語ってもらいました。

【※】インタビュー時点(2022年8月)の在籍学年です。

物事の基礎を理解する。
進学の道を決めたのは、
高校時代の学びへの気づき。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

勉学に勤しみながら、学校行事にも積極的に参加して学生生活を謳歌していたと思います。高校1年の時から生徒会に所属していたので、学園祭をはじめとする学校行事を、参加側の一生徒としてだけでなく運営側としても楽しめたのはいい思い出です。大学受験が近づくにつれて勉学に注力するようになり、3年次の後半ともなると、起きている時間はすべて勉強に費やしました。切り替えが得意な方ではなかったので、息詰まりを感じて精神的にも身体的にも辛い時期ではありましたが、それでも合格に向けてあきらめずに走り続けることができたのは、友人や家族、先生方の支えがあったからこそだと思います。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

高校時代に僕が学んだのは、物事の基礎を理解することの重要性です。高校3年で出会った英語の先生から、「英語学習は単に単語を覚えるのではなく、英語を使う人がどういう意図で使う単語なのかを考え、単語の意味を理解することが大事だ」と教わり、学問の本質を理解する重要性を学びました。それ以降、教科書に英文を構成している英単語ひとつひとつをちゃんと理解しようとするようになりましたし、学問への取り組み方も変わったように思います。そんな経験から、大学ではより高いレベルで物事の根幹部分を探求したいと考えるように。進学先については、設備や制度の他、受験組や内部進学者、留学生など多様な価値観を持つ人が集まること、それからOBとのつながりの強さに魅力を感じ、慶應義塾大学理工学部を選びました。

物理学科の特徴を教えてください。

論理的思考で議論好きな人が多いと感じます。例えば、授業やセミナーで疑問に思ったことについて意見を交わし合ったり、自分の研究でつまずいたことを研究室内で共有したりと、先輩、後輩、教員問わず議論を交わすのは日常茶飯事です。物理学科は他学科と比べて、学生数に対して教員数の割合が高いというのも特徴の一つです。この環境が学生と教員の間でも盛んに議論が行われやすい環境づくりに一役買っているのではないかと感じています。特に自分で研究を進めていく修士になると、授業だけでなく、そういった議論を通じて新たな視点を得られたりもするので良い刺激になっていますね。

日々の対話から得る、
新たな視点と
一生モノのスキル。

授業や実習、研究などで、思い出に残っているエピソードはありますか?

修士1年の時はコロナ禍で研究室への入室も制限され、リモートが続く中で課題に行き詰まってしまったことがありました。本来なら研究室内で先輩に相談しながら研究を進めるのがベストなのですが、コロナ禍でそれもなかなかできず。この経験を通して、やはり先輩とコミュニケーションを取りながらやっていくことの大切さを実感し、悩んだ時にはできる限り研究室に足を運び、先輩と対面でコミュニケーションをとるように心掛けました。先輩と雑談や議論をすることで自分の思考や抱えている問題がクリアになり、解決策が浮かぶこともあったので、人とコミュニケーションを取ることは、研究活動においてはとても大事だと実感しました。勉強は自分で黙々と進めて消化していくものですが、研究は議論を通して自分では気づかなかった視点や欠落していた知識を補いながら一歩ずつ進めていくもの。先輩達との対話は、勉強と研究の違いに気づくいい機会にもなりました。

現在所属している研究室を選んだ理由はなんですか?

物事の根本を理解したいという想いを持ち続けていたので、それを探求できる物理学理論研究室(大橋グループ)に入りました。研究対象の超伝導に興味を持ったのは、産業面で幅広く応用できる可能性を秘めた分野だからです。そして、実験ではなく、理論研究を選んだのは、基礎から理論的に物事を考えて学んでいきたいという自分のポリシーがあったから。
また、研究室の大橋教授の存在にも研究室選びの影響を受けました。以前、大橋教授から「研究室に入る前に教授としっかり話をしておくことが重要だよ」という言葉をいただいたことがあったのですが、その通りだと思いました。学生に対して理解のある方だと感じて、最終的にこの研究室で学ぼうと決めました。

大橋教授との会話で印象に残っている言葉はありますか?

大橋教授が常々言われていることですが、「難しいことを教えるにしても、聞いている人が直感的に理解できるように、わかりやすく話をしなさい」という言葉ですね。研究内容を説明する時にも説明が難しくてつい難解な言葉を使ってしまいがちですが、相手にわかってもらうための配慮は必要だと思います。自分の専門分野を正しく厳密に述べることが絶対良いというわけではなく、聞いている相手がわかることが大切。これは研究活動に限らず、就職後も活きてくる原則だと思います。研究なので、ある程度難しいことをやっているように見せないといけない部分もあるのですが(笑)、それは折り合いをつけながら、できるだけ自分でも意識して簡単な説明ができるように気を付けていますね。特に、何か発表をする時は、聞いてくれる相手がどんな人なのか、話す内容についてどこまで知識を持っているのかを考えながら話すようにしています。大橋教授からは、研究を含めてこうした今後に活きてくるスキルを学ばせていただいているなと実感しています。

「本質を理解する」
物理学科で培った学びを礎に
社会に貢献していきたい。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

研究テーマは、『半導体バンド構造における超伝導BCS-BECクロスオーバーの理論』です。超伝導というのは、ある特定の物質を混ぜ合わせて作った材料を一定の温度まで冷やすと電気抵抗がゼロになる現象のことです。超伝導は、逆向きのスピンをもつ電子がお互いに引き合う作用によって安定した束縛状態を形成することで発現します。その電子同士が引き合う力の強弱によって、超伝導の性質は変わってくるので、その変化していく様子を物理的に考えていくというのが主な研究内容です。物理特性を調査する際には、数値シミュレーション、つまり数値計算をしていくことになるのですが、これがなかなか難しく行き詰まってしまうこともあります。特に実験とは異なり、トライアンドエラーを繰り返せば求める結論にたどり着けるわけでもなく、ある程度“ひらめき”が大事になってくる部分もあるので周りの人の意見や視点がとても大切です。研究結果は未知な部分が多いのですが、超伝導の新しい可能性を探るという点で面白さを感じています。

研究室をはじめ、慶應義塾大学の理工学部の魅力は何でしょうか?

大学全体として個人の自主性を尊重する空気があるので、自分で主体性をもって研究を進めたいという人にとってはとてもいい学習環境があると思います。あとは、とても優秀な先輩方がたくさんいらっしゃるので、研究する人間としてとても刺激になりますね。わからないことがあれば丁寧に教えて下さる方ばかりですし、知識の習得の仕方だけではなく、人への教え方についても学ぶ点が多いです。
修士2年となった現在では、後輩に教える機会も増えましたが、教える際は単に答えを渡すのではなく、思考のプロセスから教えるように心掛けています。答えを教えてしまった方が早いのですが、それだと答えを導く考え方が身に付かず、次に問題が起きた時の対応力がつきにくくなってしまう。自分が先輩や指導教員の方々にしていただいたように、思考プロセスを鍛えるための伝え方を心がけています。そういった、考え方の部分など学びの本質が代々伝わっていくのも慶應義塾大学理工学部ならではなんじゃないでしょうか。

今後の進路や目標について教えてください。

通信・ネットワーク事業など幅広く展開している企業へ就職が決まり、来春からはエンジニアとして働く予定です。研究で培った論理的な考え方やプログラミングの知識を活かせる職場ですし、何よりもネットワークの最前線の研究開発に近い所で働けるので、新たなフィールドで必要なスキルを身につけていければと思っています。「上面だけではない、本質を理解しながら物事を考えていく」という物理学科で培った考え方は、どんな分野、職業でも通用する考え方の基礎だと考えています。その考え方をいつも胸に、これからは企業の一員として社会に貢献するため、努力していきたいと思います。

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