自然現象の共通の物理法則「普遍性-universality-」の探求が、物理学の目的のひとつです。一方、「超伝導」のように、電子1個の振る舞いからは決して予測できない、物質のさまざまな「階層」がまったく新しい性質を示すこと「創発-emergence-」は、生命科学や社会科学にも共通する考え方です。「普遍性」と「創発」を理解できれば、どのような科学技術に携わっても立派に通用するでしょう。
物理学はすべての科学技術の基礎となる学問です。現代の物理学では、素粒子の世界から、生命や宇宙、経済・社会現象までも扱います。物理学科では、自然現象の根源を探る素粒子・原子核・宇宙物理学研究から、最先端サイエンス・テクノロジーを支える物質開発・計測技術開発に至るまで、新しい物理学の発展を先導する研究を行っています。
卒業後は大学院でより深く物理学を探究し、世界の科学技術をリードする研究者として活躍することもできますし、企業の研究者あるいはエンジニアとして世界中の人々の生活を豊かにするテクノロジー開発に貢献することもできます。卒業後、さまざまな分野で社会貢献できることは、多数の物理学科卒業生の活躍がそれを示しています。
物理学科での教育カリキュラムは、学生が将来基礎科学と応用技術の両方で活躍することを意識して組まれています。「力学」「電磁気学」「量子力学」「熱・統計力学」には、十分な講義時間を割き、着実に理解が深まるよう工夫されたカリキュラムを用意しています。第3学年以降では、より最先端に近い分野についても学ぶことができます。
素粒子論、原子核論、宇宙論を通して自然界の根源を追究しています。また、我々の銀河系の構造、銀河系中心、活動銀河中心核と巨大ブラックホール、星間物質の進化と星形成などの研究を行っています。極限まで小さい素粒子の世界から、銀河系の構造の解明まで、さまざまなスケールで展開される物理現象を理論と実験の両面から探求しています。
微細加工によって展開されるナノスケール物理学は、その特徴を利用することで、半導体や磁性体スピントロニクスデバイスの高性能化を実現できます。また、低温で示す超伝導・超流動などの巨視的量子現象も基礎物理学だけでなく、室温超伝導の実現に向けてその解明が切望されています。計算科学・実験物理学を駆使して新しい物質機能を探っています。
先端的な光源の特徴を極限まで利用し、新しい分光法や光による物質制御法を研究しています。レーザーを光源として使うと、スペクトル分解能や検出感度は飛躍的に向上し、通常の線形光学では現れない非線形光学現象を利用して波長変換などを行うことができます。また、「テラヘルツ」光パルスを用いた物質制御の新分野の開拓に取り組んでいます。
生命体を構成する基本単位である細胞がどのように活動し、生命を保つのかを知ろうとしています。特に、タンパク質や核酸がどのようなかたちで、どのように動いているのか、細胞内小器官はどのような構造を持っているのかを、巨大な電子加速器から得られるX線を用いた構造解析やスーパーコンピュータによる計算機実験によって調べています。
物理現象の機構を基本から学習すると同時に、応用との関連も重視して教育を行っています。物理的なものの考え方と柔軟な思考力を身につけることにより、如何なる問題に直面しても立ち向かっていく能力と自信を持った人材を養成します。
卒業生のうち85%は大学院修士課程に進学し、いっそう専門的な教育を受け、本格的な研究を行います。さらに、修士課程修了者の約4分の1は後期博士課程まで進学し、国際的な研究の最前線で活躍しています。20歳代の若者たちが、世界の研究者に肩を並べて最先端の研究成果を上げられるのも物理学ならではのことでしょう。就職状況も大変良く、本学物理学科卒業生に対する社会の期待の大きさが窺えます。諸君もまた、私たちの学窓から社会へ大きく羽ばたいていくことを願っています。