Profile

物理学科(基礎理工学専攻 修士課程2年【※】)

北海道・公立北海道根室高等学校出身

北海道根室市出身。「外に出て見識を広め、いつかそれを地元北海道のために役立てる」という決意の元、慶應義塾大学理工学部に入学。昔から興味のあった物理の分野に進み、大学院では「佐々田研究室」でレーザーを用いて分子の性質を研究。天体、環境、生体など、さまざまな分野の基礎になる研究を通して、トライアンドエラーで結果を地道に積み重ねる研究姿勢や考え方を身に着けた。卒業後は北海道に戻り、自動車部品メーカーに就職する予定。

【※】インタビュー時点(2017年11月)の在籍学年です。

生まれは北海道東端の根室。
通っていた塾の講師の言葉が
東京の大学に行く決め手に。

北海道出身とのことですが、東京の大学に行くことは早くから決めていたのですか?

北海道の根室出身です。本州へ行くのに海を渡るため、北海道から出ない人は本当に出ないです。とくに根室は東端の町なので、地元から出ないケースが多いようです。僕の場合は父が東京の大学を出ていたこともありましたが、中学校の頃から通っていた塾の先生が「一度は東京に出なさい」と言ってくださったため、自然と東京の大学に行くという選択をしていました。僕は地元が大好きで、もっと根室を良くしたいと思っています。そのためには、根室にいながら貢献する人も必要ですが、外に出て学び、何かを持ち帰る人もまた必要になります。私は後者を選んだということだと思います。

では受験をする段階で具体的な夢も決まっていたのですか?

中学生くらいから漠然と研究者という夢はありました。子供の頃から科学雑誌が好きで、こういう研究ができたら面白いだろうな、と。ただもともと理系科目が得意で、物事をじっくり考えるタイプだったため、物理系に進むことは決めていました。そしてこれも漠然としているのですが、「理系に強いといえば慶應」という思いがあったため慶應の理工学部を受験しました。

受験に向けてどのように勉強に取り組みましたか?

コツコツと勉強は続けていましたが、本腰を入れたといえるのは高校2年時のセンター当日模試の日から。次はいよいよ自分の番だ、という事実を強く意識しました。所属していた卓球部も引退したため、そこからは勉強漬けの日々。また、良い意味で何もない田舎なので、誘惑が少なかったことも大きいと思います(笑)

友人との交流、学生寮の生活。
あらゆる経験が
やがて自らの力となる。

理工学部に入学してみて、印象はいかがでしたか?

思った以上にいろいろな人がいるな、という印象でした。とくに1、2年時はほとんどの学部が日吉キャンパスで共に学ぶため、文理を問わず様々な学生と出会えました。根室から出てきた当初は衝撃的でしたが、その時に築いた人間関係は、大切な財産になったと思います。また物理学科に限って言えば、独立心の強い人が多いという印象。学問の幅が広く、それぞれが自分の興味の対象に打ち込んでいます。そういった個性の強い人たちの中に身を置けたことも、自身の成長に繋がったと思います。

授業以外で身になったと思う経験はありますか?

男子自治寮に住んだことです。自治寮は“半学半教”の精神のもと、学部、学年、出身地、国籍の異なる男子学生が三人部屋で暮らし、迷惑を掛け合いながらも支え合ってひとつの居住空間を自治によって成立させる場所です。上下関係が厳しかったため、礼儀作法も身についたと思います。こちらに来た目的が、親元を離れて広い世界を見ることにあったため、さまざまな国籍、さまざまな考え方の人たちと寝食を共にできたことは大きな収穫です。

現在の研究室を選んだきっかけを教えてください。

学部3年次に、現在の研究室の指導教員である佐々田教授のゼミがありました。それが高校生の頃から興味があった量子コンピュータ関連の内容でした。この段階でもまだ将来の具体的な目標までは決定していなかったので、興味の向くままに佐々田教授の研究室を選びました。その後、少しずつ研究にも慣れてきたところでしたので、そのまま大学院に進んで研究を続けることに決めました。

天体から生体まで
さまざまな分野に応用される
光による物質解析の研究。

現在はどのようなテーマの研究を行っていますか?

物質に光を当て、その光がどのように出てくるかを検出することで、物質の性質を調べる研究をしています。物質にはそれぞれ好きな色、嫌いな色があり、好きな色は吸収し、嫌いな色は透過します。そこで、当てた光がどのように出てくるかを見れば、その物質の性質がわかるというわけです。逆に未知の物質から出てくる光を調べれば、その物質の同定も可能になります。わかりやすい応用例は、天体です。たとえば太陽にはヘリウムと水素があるとわかっています。行って調べたわけでもないのにそれがわかるのは、太陽から届いた光を解析しているからです。あるいは瞬時に計測できる体温計も、この研究の応用です。

この研究の面白さ、やりがいはどんなところにありますか?

僕の研究は基礎の部分のため、人に伝わりやすい結果がではないと思うことはあります。しかし応用の幅が広いということは大きな魅力です。天体でも、環境でも、生体でも、さまざまな研究の土台の部分を担っているという思いが、モチベーションにつながっています。

今後はどのような道に進む予定ですか?

北海道の自動車部品のメーカーに就職が決まっています。現在の研究と直接関係しているわけではありませんが、仮説を立ててトライアンドエラーで検証し、フィードバックするという研究プロセスはどこに行っても同じ。研究の経験は必ず役に立つと思っています。また北海道に戻って働けることと、本州に本社のある会社のため視野が内向きにばかりならないことも入社を決めた理由のひとつです。地元への思いはいつも心の中にあるので、いろいろな面で北海道に貢献できればと思っています。

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