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機械工学科(開放環境科学専攻 修士課程1年【※】)

東京都・慶應義塾高等学校出身

陸上競技、イギリス留学、さらには趣味のクラリネットとさまざまなことに挑戦したアクティブな高校時代。“選択肢を狭めたくない”という自らの信念のもと、常に広い世界を追い求め、大学へ進学しました。入学してからこれまで、勉強や研究など多忙な学生生活の中で、どのように学びと自分のやりたい道を両立してきたのか。そして、どんな視点で楽しさや学びを見出してきたのか、大学生活を送る上でヒントとなるお話を聞かせてもらいました。

【※】インタビュー時点(2022年8月)の在籍学年です。

挑戦することで、
広がる選択肢。
幅広く活動した高校時代。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

思い返せば高校時代は好奇心に従い、とにかくいろんなことに手を出していた気がします。部活の陸上競技では800m走を週5回みっちりと練習しつつ、小学校の頃から始めたクラリネットも個人で練習を続け、高校吹奏楽部の定期演奏会に出演したこともあります。 また、高校2年の時には1年間学校のプログラムでイギリスへ留学に行きました。学校の先生や両親の後押しもあり、自分自身としても興味が湧き面白そうだなと。留学先の高校はイギリスの中でもかなり歴史の古い学校で、まるで映画の中の世界。朝から晩まで時間を共有する寮生活は非常に新鮮でしたし、授業、課外活動、余暇とバランスよく配分されたスケジュールが印象的でした。父がアメリカ出身ということもあり、英語での会話に苦労はありませんでしたが、エッセイを書く課題などを経験して、英文でアウトプットする力が鍛えられたと思います。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

一貫教育校に通っていたため、学内推薦という形で進学しました。小さい頃から図鑑が好きで、特に理科に興味があったこともあるのですが、大きなきっかけになったのは、留学先の学校で受けた化学の授業です。それまで受けていた授業のような、座学と実験が分断されたものではなく、少人数のクラスで実験をベースに進めていくものだったので、実際に教科書で見ていたような現象を目の前で体感できたことは進路を決める後押しになりました。
理工学部の中では、まだ何をやりたいかははっきりと決まってはいなかったため、最終的に一番幅広い選択肢が用意されている学門4(現:学門D)【※】を選びました。

【※】学門4…機械工学科・システムデザイン工学科・応用科学科・管理工学科の4つの学科に進学可能であった「学門」。2020年度入学者からは、各学門の名称と構成が変更されています。

高校時代の留学経験から、海外の大学への進学は視野になかったのでしょうか。

高校2年生を海外で過ごしたので、一度日本で落ち着きたいという思いもありました。また、何事においても、あまり将来の選択肢を早い段階から狭めたくないという気持ちがあったので、学門制【※】があることや学部から大学院まで留学プログラムが充実していることも、将来の選択肢が増えるという点で、魅力を感じていましたね。 留学というと限られた人に与えられるチャンスだと思われがちですが、現塾長が「優秀な学生はどんどん海外に行きなさい」ということをおっしゃっていたのを入学前に聞いて、慶應義塾大学は外に開かれた挑戦できる環境なんだと良い印象を持ちました。 【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する、慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。なお、2020年度の理工学部入学者から学門制が変更となり、各学門から進学できる学科が一部変わりました。学門制の詳細は以下のリンクを参照してください。

自ら手を動かす。
実感を伴う学びが、
研究の楽しさを広げる。

機械工学科の特徴を教えてください。

ひとつは、研究分野が非常に多岐にわたることです。機械工学といってもロボットやエンジン分野もあれば、最適デザインを追究する研究もあり、応用数学の研究室もあります。さらに研究の手法も幅広く、理論やシミュレーション、実験などさまざま。 また、実地で活動したり自ら手を動かしたりする授業も多く、身の回りの課題をテーマに実験や測定を行う「創造演習」や、国内外の現場へ足を運ぶ「工場見学」、企業課題に対して学生ならではの視点で解決方法を発表する「ものづくりプロジェクト」など、主体的に計画して実行することや、大学内にとどまらず現場に足を運ぶなど貴重な体験ができる授業も充実しています。機械工学科は、理工学部の中でも比較的人数が多いため、学生も多様ですし、研究対象も世の中と結びつくものが多いため、ある意味では一番“理系らしくない学科”かもしれません。バラエティに富んだ専門性を持つ教員や同世代との日々は刺激的でした。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

私の研究テーマは、「ゼラチンゲル中レーザー誘起気泡の力学」です。これは「レーザー結石破砕術」という腎臓結石の治療法として活用されているものを応用した研究です。集束レーザーによって結石付近に微細な気泡を発生させて、ジェットで結石を細かくしたり動かしたりといった気泡の挙動を解き明かすことを目的としています。技術自体は元々あるものですが、気泡の挙動はまだ解明されていない部分も多く、将来的には医療現場での活用が期待できると思います。というのも、強度が強すぎると正常な組織にもダメージを与えてしまう恐れがあります。気泡の力学が応用できれば、適切な強度のレーザーを用いて周りの組織にダメージを与えずに、より的確に治療することが叶うのです。 研究では、人体組織を模したゼラチンゲルにレーザーを照射して気泡の振動を高速度カメラでとらえる実験をしています。日常生活からはかけ離れたマイクロ秒、マイクロメートル単位の現象なので、自分の知らない世界を目で見ることの面白さを実感しています。

現在所属している研究室を選んだ理由はなんですか?

一番の理由は、流体力学分野の実験ができる研究室だったからです。学部生時代に授業を受けて面白さを感じましたし、まだ解明されていないことがたくさんありそうだというところにも惹かれました。また、シミュレーションをメインにするのではなく、自らの手で実験をして、目の前で現象が起こるのを実感できるという点からも安藤研究室は魅力的でした。
学部生時代に受けていた安藤景太准教授の授業は非常に分かりやすく、コロナ禍により急遽オンライン授業が始まり戸惑うことも多かった3年時でも、板書スタイルで数式を解説する流体力学の授業は印象的でした。また安藤准教授ご自身も海外経験が豊富で、留学を以前から視野に入れていた私の助けになってもらえるのではというところも期待して選びました。

常に視野を広く持つ。
両立も挑戦も、
すべては自分の糧になる。

学生生活の中で、研究以外に打ち込んだことはなんですか?

入学からこれまで體育會競走部で800メートル走を専門に陸上競技に打ち込んできました。中距離は、どの瞬間も気が抜けない競技であるとともに、戦略や体力・気力などさまざまなスキルが必要なところが魅力です。学部4年生の間は怪我を重ね1年間のほとんどをリハビリに費やしてしまったのですが、中距離ブロック長を務めつつなんとか続け、最近では関東インカレ3部(大学院生の部)で3位入賞することができました。 現在でも週5~6回の練習をしているのですが、研究室では信じられないという顔をされます。一方で、研究室活動や研究内容について部内で話すとこれまたすごい顔をされます(笑)。修士に進む際に、競技を続けるか迷ったこともありましたが、どちらの環境にも身を置くことでしか得られない視点や経験があると感じて活動を両立しています。

留学を意識して研究室を選びましたが、今後留学の予定はありますか?

この秋から大学の「ダブルディグリープログラム」を活用して、ドイツ・ミュンヘンの大学へ1年半留学する予定です。このプログラムは通常2年の修士号を3年間かけて取得できるプログラムで、学部生対象の制度もあります。

ドイツに行ってからは授業も取りつつ、研究が主になると思います。主にバイオメディカルという医療工学系のプログラムを学びます。現在の研究にある程度近いことがやれたらと思っているのですが、留学中は一旦現在の研究はストップし、帰国してから再び日本の修士論文に取り組む予定です。忙しくなりそうですが、いろいろとチャレンジしたい自分には合っている環境だと思います。

今後の進路や目標について教えてください。

現在の研究は面白く興味を惹かれるのですが、今のところ博士課程には進まず就職することを考えています。その理由は、幼少時から色々なものにチャレンジしてきたことも踏まえ、多方面に興味を持ってから掘り下げていく性格なので、おそらく研究以外の世界を見てみたくなるだろうと想像するからです。もちろんこれまで学んできたことは間接的にでも何かしら活用したいと思っていますが、まだ方向性は定めていません。今後も留学先での出会いやさまざまなものに触れて変化していくと思うので、海外就職も視野に入れ、選択肢は常に幅広く持って進んでいきたいと思います。

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