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機械工学科(総合デザイン工学専攻 修士課程1年【※】)

山口県・県立宇部高等学校出身

もっと広い世界を見てみたいとの思いから、高校時代より関東エリアの大学を志望。より選択肢を広げるため、勉強一筋の高校生活だったといいます。現在は「バイオメカニクス」と呼ばれる生物の運動を細かに計測する研究を行っていますが、高校時代は宇宙の研究や脳の神経デバイスの伝達研究など、さまざまな夢を抱いていたと言います。入学後に徐々に学びたい分野を絞り、幅広い選択肢からどのようにして現在の研究へとたどり着いたのでしょうか? 新設研究室の一期生として奮闘する様子や今後の進路についてのお話も伺いました。

【※】インタビュー時点(2020年11月)の在籍学年です。

広い世界を見てみたい。
将来の選択肢を広げるべく、
勉学一筋だった高校生活。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

仲の良い友人とともにソフトテニス部に所属していましたが、受験を控えていることを考えると、勉強に専念する必要があるなと。ひとつのことに全力で取り組みたくなる性分のため部活は1年間で退部し、後の2年間は勉強一筋の高校生活を送りました。志望校については特に主だった理由はなかったのですが、地方に住んでいたため漠然と関東に憧れがありました(笑)。関東の志望大学に進むには学力が必要だと考え、学校が終わるとそのまま塾の自習室へ行き、夜10時まで、1日5〜6時間は自習を続ける日々でしたね。塾の帰り道にて、大学に入ったら思いっきり遊びたいといった話を友人としつつ、寝る前に好きなアニメを30分観ることだけが当時の息抜きでした。高校時代は勉強漬けの毎日を送っていましたが、目標があったからこそ頑張れたのだと思います。

高校時代より理工学部を目指していたのですか?

実は、第一志望は別の国公立大学だったため、当初から慶應義塾大学理工学部を目指していたわけではありません。併願受験するにあたり、私立理系のなかでも一番難易度の高い慶應義塾大学理工学部を選び受験をしました。
もともと数学と物理が得意だったため、高校の進路選択のときに理系を選びましたが、ただ得意だからという理由だけで理系を選ぶことに自分の中で疑問がありました。文系の進路についても調べましたが、理系の方が圧倒的に自分の望む選択肢が多く、将来への道も広がるのではないかという結論に至りました。

入学前と入学後の印象の違いを教えてください。

山口県より上京したこともあり、単純に都会の高校出身の子が通う大学というイメージがありました。入学前は自分には場違いではと考えていましたが、実際に入学すると、皆さん品がありながらも付き合いやすい人たちばかりで安心しました。
また、慶應義塾大学というよりは大学そのものの良さかもしれませんが、大学は勉強をはじめとした何かに熱中してきた人々が集まる場所です。高校にはいなかったタイプの人々と交流できることや、確かな考えを持つ人たちがコミュニケーションを活発に繰り広げる環境は、自身にとって良い刺激となりました。

座学で学んだ知識を
手を動かし応用することで、
“自分の好き”が定まった。

大学時代に勉強や研究以外で夢中になっていたことはありますか?

入学後は勉強以外のことも楽しもうと考えていたため、硬式テニスサークルに入りました。ソフトテニスの経験はあったものの硬式テニスは未経験だったため、1年次は普通のサークル部員として過ごしていたのですが、「メンバー制」というテニスが上手な人だけが選抜される組織があることを知り、2年生になったら絶対にそこに入りたいと夢中になって練習に励み、先輩方との親睦も深めました。
2年生以降は念願だったメンバーに選出され、団体戦にも2回出場しました。充実した大学生活でしたが、研究活動に向け集中したいこともあり、3年生のときにサークルはきっぱりと辞めました。ひとつのことに全力で集中したくなる性分は、高校時代から変わらないですね(笑)。

機械工学科を選んだ理由や特徴を教えてください。

高校時代に方向性が定まっていなかった自分にとっては、「学門制【※】」によって学科選択の猶予があることは良かった点です。当初は別の学科に興味があったのですが、色々と検討してみると、ものづくりがしたいと思う僕にとっては、機械工学科の方が総括的に見て近しいと思い選びました。
機械工学科は演習形式の授業が豊富で、座学で培った知識を応用して実践的に活かす場が設けられているところが大きな特徴かと思います。座学を活かす場所がなければ、座学にも身が入りませんからね。演習形式の授業が散りばめられたカリキュラムのおかげで、この勉強って何に活きるんだろう、と考えている間に試験を迎えることなく、モチベーションが保ちやすいかと思います。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。なお、2020年度の理工学部入学者から学門制が変更となり、各学門から進学できる学科が一部変わりました。学門制の詳細は以下のリンクを参照してください。

演習形式の授業で、印象に残っているものはありますか?

2年生のときに履修した「機械工学創造演習」という授業です。学生自身が設定した自由なテーマを元に機械工学的観点で研究するのですが、私が行ったのは、プログラムを一切使わず電池とモーターのみのからくりで方向転換を行う「手作り自動掃除機ロボット」というものです。教科書で読んだことを自分の興味ある分野に活かす経験は、自分は何が好きかということに気付かせてくれました。これまでものづくりへの思いは漠然としたものでしたが、形にすることで指針が決まった気がしましたね。
また、3年生のときに履修した「プロダクションエンジニアリング」も、楽しい授業のひとつでした。実際に企業の方に来ていただいて試用車を造り、座席シートの改良をコスト含め具体的にどうするかについて検討するものです。学びと実社会の繋がりを感じられたので、就職した際にこの経験が役に立つのではと思いました。

小さな世界を見つめることが、
やがて世界が驚く
新しいものづくりに。

今取り組んでいる研究について教えてください。

現在は新設の高橋研究室にて「昆虫のバイオメカニクスのためのフォースプレート」の研究を行っています。例えば、壁を登る蟻や空を飛ぶ鳥は、人間には不可能な運動を行っていますが、そのメカニズムを解明することは、生物の運動を模倣したロボットの設計開発に生かされます。そこで昆虫の走行メカニズムを解明するため「フォースプレート」と呼ばれる、プレートの四隅にバネが付いたごく微小な力学計測器を試作し、性能評価を繰り返しています。
本来は微小なフォースプレートを複数配置し、その上をアリなどが歩く様を計測したいのですが、今は前段階の研究として、ショウジョウバエ1匹の重さを量る実験を行っているところです。というのも、実はショウジョウバエなどの微小な昆虫1匹の体重を計測する技術は、まだ確立されていません。現在は何匹もの昆虫の重量を測り、その平均値を取るという方法が行われていますが、将来的には昆虫の翅1枚の重さをも計測できる技術が確立できればと思っています。

なぜこの研究を選んだのですか?

研究室によってはテーマから考えるところもありますが、高橋研究室は教員に勧められたテーマを研究することとなります。でも、自発性がないという訳ではありません。学生の経験値で扱える研究はごく限られたものであるため、私たちのレベルに応じた研究のアイディアを教員が提案くださいます。それを僕たちが、自ら考え、手を動かし、研究に昇華します。
当初は漠然とものづくりがしたいと考えていたのですが、身の回りのことをそのまま微小スケールで再現することで思いもよらぬ応用先が生まれるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)という分野は、非常に興味深いものでした。新設の研究室は教員に対して学生の数が少なく、比較的手厚いサポートが受けられるため、良い成果を出しやすいと言われているのですが、まさに私がMEMSの国際学会に出席できたのも新設の研究室という部分が大きかったと思います。
ただ新しい研究室のため特殊な実験器具までは整備が至ってないこともあり、ときには他の実験室を借りる形でMEMS国際学会に提出するための実験を行っていました。卒論と並行して行っていたため忙殺されていましたが、参加して本当に良かったと感じています。異なる考え方に触れ、その差を認識しあうというのは貴重な体験でした。

今後の進路や目標について教えてください。

メーカーへの就職を希望しています。ものづくりのなかでも、今あるものをブラッシュアップするのではなく、まだ世の中にないものを生み出したいなと。漠然とものづくりがしたいと思い現在の研究室に入りましたが、研究の中のものを作るという側面が楽しいため就職後も続けていきたいと思っています。 卒業研究では目に見えないほど小さな吸盤を体に害のない物質で作るという研究を行っていたのですが、これは抜糸を必要としない胎児の外科手術や、精度の高いロボットハンドの指先に活かされることを目標として研究を進めました。就職後も自身の手で新しい何かを創造し、社会に貢献していければと考えています。

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