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機械工学科(総合デザイン工学専攻 修士課程2年【※】)

英国・Marymount International School London出身

米国、英国そして日本と4歳から高校卒業までを海外で過ごしてきて、“日本語が苦手だった”と語るほど海外生活に慣れ親しんでいた彼女。高校卒業後に選んだのは、日本の大学で機械工学を学ぶこと。日本人である自分をしっかりと理解し、日本のものづくりの技術を海外へ発信したいと語る彼女は慶應理工学部でどんな学びと経験を得てきたのでしょうか?強い信念を持って自分と向き合ってきた学生生活を振り返ってもらいました。

【※】インタビュー時点(2018年9月)の在籍学年です。

海外で浮き彫りになった
“日本人としての自分”。
日本で学ぶラストチャンス。

海外での高校生活はどんな過ごし方をしていましたか?

高校の始めの頃は、イギリス人の多い中高一貫の現地校に通っていました。日本の学生のように塾に通う子はまずいない環境だったので、当時はあまり勉強はしていなかったですね(笑)。イギリスの教育方針は日本とは少し違い、高校の前半で自分の専門分野を3教科に絞るんです。私は理系分野が得意だったので理系教科を選択しました。そして真剣に将来のことを考え始めた高校3年生の時に、より広い視野や選択肢がもてるインターナショナルスクールに転入しました。そこは、イギリス駐在の親をもつ子がたくさん通っていたので、中国やスペイン、メキシコなどとても国際色豊かな環境でした。勉強以外にも部活で水泳にのめり込み、毎日朝5〜7時に朝練して学校の終わりにも泳いでという生活でした。

なぜ、海外生活が長かったのに日本の大学を受験しようと思ったのですか?

転入したインターナショナルスクールでは、本当にいろんな国の人と接する機会が持てました。そんな環境の中で次第に「日本人としての自分」を強く意識するようになったんです。長くイギリスで暮らしていてもやっぱりどこか自分は「外国人」扱い。それなのに日本人としての文化や生活経験もなく、もどかしい思いをしていました。一方で周りの同級生は自分の国のことを誇りに思っていて、そんな姿を見て羨ましいと思いました。それをきっかけに私ももっと真剣に日本のことを理解したいと思うようになり、大学進学という“最後のチャンス”を使って日本の大学を受験しようと決意しました。

なぜ理系科目を専攻したんですか?

高校に進学してディプロマ・プログラム(DP)を修了して大学入学資格(国際バカロレア【※】資格)を取得しました。これは、国際的にどんな国に行っても通用するものなので自分の選択肢が広がると考えました。そのプログラムは6つのグループから教科を選択する方式で、始めのうちは言語・理数・文化など幅広く取ることを意識していたのですが、後々選択をする時に一番好きだった理数系の道に進むことを決めました。
あとは、日本とイギリスを比較すると日本は「ものづくり」が今でも根付いているんですが、イギリスは産業革命以降衰退してしまってあまりものづくりに力を入れていないんです。だから、自分がものづくりを日本で学んでイギリスや海外でその強みを持って貢献できたらと考えました。

【※】国際バカロレア…国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム。このうち16~19歳を対象とした「ディプロマ・プログラム(DP)」を修了した生徒には、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与えられる。

海外との繋がりを大切に、
大学に求めていたこと。
そして、それを実現できる環境。

大学を選ぶ際にどんなところをポイントに選びましたか?

まず、私のように帰国生入試で大学を受験するとなると、受験可能な大学や学部が限られます。そんな中、慶應義塾大学はどの学部でも受け入れてくれる幅広さがありました。さらに、理系の学科での受け入れがあるのも珍しかったです。日本の大学に入っても「海外と繋がりを持ち続ける」というのは自分で大切にしていたポイントだったので、それが叶う大学だということや在学中に海外経験が積めるという視点でも選びました。実際に、夏休みの間に日本に帰省して大学キャンパスを訪問した時に構内に英語サークルのチラシが貼ってあるのを見て、ここでなら英語を活かせるチャンスもありそう!と実感しました。

実際に入学してみてどんな印象を受けましたか?

一番感じたことは慶應の理工学部は、研究室の数が多いということ。
研究室の数が多いということは、それだけ自分の選択肢が増えます。ものづくりで世界に貢献したいという思いがありましたが、機械工学や医療系、ロボティックス、デザイン系などいろんな貢献の仕方があるのだなと気づかされましたね。私自身、何か1つの分野に情熱を持って入学してきているのではないので、入学してから興味のある方向を探っていくという大学の制度【※】も自分に合っていると感じました。
大学生活に関しては、イギリスではあまりない「飲み会」が結構多いことが最初はカルチャーショックでしたね(笑)。でも入学後にサークルや研究室など人との関わりがどんどん増えてくると、そこが自分にとっての居場所だと感じました。友だちとの時間は研究の息抜きにもなりますし、今でも自分にとって大切な時間です。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する制度のこと。

機械工学科や研究室の特徴はどんなところですか?

機械工学科は他の学科に比べて「基礎」をしっかりと、そして幅広く学べる学科だと思います。特に私は海外生活が長いため他の学生が高校で勉強してきたほど知識がありませんでした。だから、基礎をしっかり学べるという点も魅力に感じましたね。
研究室を選んだポイントは、もともと材料に興味があったということと、「実験」と「解析」どちらもバランスよく関われるというところが決め手でした。さらに、研究室のメンバーが国際色豊かなことも大きな特徴です。慶應理工学部の研究室は海外からの留学生の受け入れも盛んですし、学会発表などで海外と交流する機会が多いのも私にとっては望んでいた環境だったので、とても良い経験になりました。

研究を通して学んだことを、
次は海外へと発信していく。
人のためになる仕事をしたい。

所属されている研究室ではどのような研究をしているのですか?

主に「材料」に着目した研究をしています。
例えば、モノが経年劣化で壊れたりする現象があると思うのですが、どうやって壊れにくくするか、素材を作っている材料をどう変えたらより強度が増すのか、さらにはどんな加工をしたら壊れにくくなるのかというのが私の研究分野です。ものが壊れるという現象は実はまだ解明されていない部分が多く、例えば、割れ目がなぜギザギザになるのか、なぜこの部分で急に曲がったのか、その逆になぜこれはスパッと綺麗に切れたのか、など興味深い分野です。 その現象を基に、あまり特徴のない材料に特殊な加工法を施して機能性をあげることが今の研究室で行なっているテーマです。割れにくいものを世の中に生み出していく研究をしています。

その研究の中で学んだことはありますか?

企業と共同で研究を進めていたため、企業のニーズに応じて特殊な加工を施していくといった経験が学びになりました。また、複数のプロジェクトを抱えながら、同時並行で研究を進めていく力はこの共同研究で身につきましたね。今までの勉強は人より頑張ればなんとかなるって思っていたのですが、研究に関してはそう上手くはいきません。まず、考えることが大事。自分の知識だけではなく、過去の論文や先輩の研究を参考にしながら進めていく地道な作業が必要です。そうすることで時々、失敗だと思ったものが論文になることもあります。そんな失敗も徹底的に解明していけば1つの研究になるのだということに気づけたのも良い学びです。
あとは私自身、帰国子女ということを不利に感じていたイギリス時代とは違って、むしろ英語ができることでたくさん活躍の場が開かれました。それも自分の強みだなと自信に繋がりましたね。

将来はどんな展望をお持ちですか?

現在、外資系のメーカーに内定が決まっています。
仕事内容としては製造ラインの改善というのが主なのですが、「製造ラインリーダー育成プログラム」というものに参加させていただく予定です。いくつかのセクションに分かれた製造ラインの仕事を2年かけて3つ経験し、トレーニングを積んだ上で1つの部門のリーダーになるというプログラムです。色々経験することによって自分の強みも見えてきますし、大きなラインの中で最初の人や最後の人はどんな作業をしているのかを知ることができるのは、自分にとってもいい経験ができると期待しています。

また、卒業しても「海外とのつながり」は大切にしたいです。
日本の理系出身の方は英語が得意ではない人が多く、せっかく優秀で専門的な知識を持っていてもそれを上手く発揮できていないことがもったいないと感じています。幸い自分には語学の部分で強みがあるため、それを活かして海外で日本の技術を発信していきたいと考えています。
その先では、将来的に「社会貢献」を大きな目標としています。例えば、UNの難民に物資を輸送する、加工するといった大きなオペレーションを運営するなど、もっと大きな製造ラインを組めるようになり困っている人に必要なものを届ける仕事をしたいです。
そのためにも、まずは日本をもっと理解し日本の技術や知識を蓄えた上で、また海外に出ていきたいと思っています。

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