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機械工学科(開放環境科学専攻 修士課程2年【※】)

東京都・私立帝京大学付属帝京高等学校出身

中高一貫校に通う中、熱中したのはプログラミングの部活動でした。計算により何かをシミュレーションするという部活内での遊びは、今の研究にも繋がっているそうです。国語・英語・社会といった文系教科が苦手と言い放つ彼の進路は、「理工系一択」と迷いがありませんでした。慶應義塾大学理工学部入学後はアクティブに活躍する学生に多くの刺激を受け、現在は自身も研究の傍ら“人材を育てる”活動に注力しているとのことです。高校とはまるで環境が異なる大学生活の過ごし方、そして大学全入時代において大学の持つ意味について話を聞きました。

【※】インタビュー時点(2019年7月)の在籍学年です。

苦手な記憶力は論理的な思考力でカバー。
独自の勉強法を編み出し、
受験を突破した。

大学に入る前はどのような学生でしたか?

天文図鑑などを好んで読むなど、子どもの頃から根っからの理系でした。中高一貫の学校に通っていたのですが、中学1年生からプログラミング部に所属し、中学3年生になってからプログラミングに熱を入れ始めました。計算によって何かをシミュレーションするといった、今の研究にも繋がるようなことで遊んでいました。その他にも、「Newton」や「Science」といった科学系雑誌を読むのも好きでしたね。
ただ反対に、国語・地理・英語といった文系の教科は嫌いかつ苦手でした。勉強は好きな方にだけのめり込み、部活も趣味の延長線上といった感じだったため、結果として英語・国語・社会ができない学生になってしまいました(笑)。
しかも、そもそも記憶力があまり良くないため、英語の小テストはちゃんと勉強しているにもかかわらず、ほとんど0点近いような成績で…。好きな数学であっても、公式を暗記するといったことは苦手でしたね。

暗記が苦手とのことですが、受験勉強はどのようにしていましたか?

受験勉強に関しては、受験日が近づくほど勉強の量は増えたものの、予備校などに通わず、過去問をひと通り解く…くらいでしょうか。苦手な英語は当落線上にありましたが、これをカバーできるよう理数で満点を取れば良いだろうと思っていました。
苦手な暗記に関しては、論理的な思考力や推論から物事を導き出すことでカバーしていました。例えば覚えられない公式があれば、テストの際は先に公式を起こしてから問題を解くといった、独自の方法で乗り切って。周囲に話すと「嘘だろ!」と言われますけどね(笑)。

最初から理工系に進もうと思ったのですか?
また、慶應義塾大学理工学部を選んだ理由を教えてください。

理系一択でしたね。好きなことだけ勉強してきた結果、英語・国語・社会が必要な大学は必然的に無理かと。中でも、私大トップクラスの研究力を持つ慶應義塾大学は、機械工学を学ぶには最も良い環境だと思いました。慶應はブランド力が高く就職にも強いため、将来の選択肢も広がるかなと(笑)。受験は慶應を含め私大を2つ、国立を1つ受けたのですが、合格圏のなかでは一番魅力的な大学でした。

積極的に学ぶ姿勢を忘れない学生。
技術力を磨く場を提供する大学。
大学に進学する意味は、ここにある。

実際に入学してみて、どんな印象を受けましたか?

合否の当落線上にいたため、慶應には自分より成績が良い人がいるわけですよね。入学できた暁には、そういう人たちとたくさん関わりたいと思っていたのですが、実際自分の知らないことを知っている人たちに出会えて良かったです。
IT系の「Computer Society」と、ロボット系の「慶應義塾大学ロボット技術研究会」というサークルに入会したのですが、高校生のころからロボットコンテストや競技プログラミングに参加しているアクティブな人が多く刺激になりました。高校時代の自分はそのような大会があることすら知らなかったのですが、他の学生は既に外部に出て交流していたとは思いませんでした。これはプログラミングに限らず、慶應のあらゆる部活動・サークルで感じたことで、「自ら積極的に他人と関わり合い、活動をする学風」だと言えますね。

機械工学科の特徴やメリットはどんなところですか?

メリットとしては「 JABEE認定 【※】」と呼ばれる、国家資格である 技術士 の1次試験が免除になることです。あとは四力(機械力学・材料力学・流体力学・熱力学)と呼ばれる必須の学問が学べるところではないでしょうか。ただこれら二つは、教員から受動的に知識を教えてもらうといった点では高校と変わらないかもしれません。そもそも、大学でなければできないことを提供するために大学はあると私は思っています。
大学全入時代に、ただ卒業しただけでは無意味です。大学で何をしていたか、何に関わっていたかが重要となるなかで、機械工学科ではJAXAなど様々な企業・研究所の工場見学や企業での仕事の疑似体験など、外に出て学べるカリキュラムが充実しています。お互い切磋琢磨して技術力を磨く場を提供するのが大学の価値だと思いますが、慶應は良い環境を提供してくれています。

【※】 JABEE認定 …機械工学科の教育プログラムは、2003年度から 日本技術者教育認定機構(JABEE: Japan Accreditation Board for Engineering Education) の認定を受けています。機械工学科の卒業生は技術者としての知識・能力を十分に有していると見なされ、技術士の1次試験が免除されます。

現在の研究室を選んだ理由を教えてください。

自分の得意分野であるプログラミングや機械学習などの技術を生かすには、機械工学科の計算機系の研究室を選ぶ必要がありました。なかでも泰岡研究室は研究結果の発信に力を入れており、論文の数も学科の中でトップレベルだと思います。「他の人の研究を引き継ぐよりも、自分で考えた研究をやりたい」という思いを泰岡教授が快諾してくださったところも決め手となりました。
学部生のうちはほとんど教員とコミュニケーションを取ることはありませんが、研究室に入ると密接にやり取りすることになります。泰岡教授や研究室の人々がフレンドリーだったという雰囲気の良さも、選んだ要因のひとつですね。

AI人材をもっと育てたい。
従来の教育とは異なる
新たなシステムを提案。

現在取り組んでいる研究テーマはどのようなものですか?

大きく分けて2つありますが、ひとつは自らが所属する泰岡研究室で取り組んでいる「分子シミュレーションと機械学習の融合研究」で、もうひとつは「量子コンピューターに関する研究」です。
後者は研究途上のため具体的なことはあまり話せませんが、前者は、タンパク質・高分子・カーボンナノチューブといったものの特性を、原子・分子レベルで計算して情報を導き出すといった研究です。研究開始から2年強ということもあり、実社会にはまだ活きていませんが、将来的には創薬(薬剤の発見や設計)に貢献できると考えられています。
現在の薬の開発では、ひたすら実験を繰り返すという方法が取られていますが、これは非効率的ですよね。「分子シミュレーションと機械学習の融合研究」が実現されれば、計算機による素早い計算によって実験結果を正確に予測することができるため、実験の手間を減らして開発コストも下げることができます。

研究以外で、いま一番打ち込んでいることはありますか?

私がいま力を入れているのが、「慶應義塾大学AI・高度プログラミングコンソーシアム【*】」での活動です。コンソーシアムの代表である伊藤公平教授の受け売りですが、これからの日本にはAI教育が非常に求められています。新聞でも「AI人材を25万人育成」という記事を見かけたりしますが、圧倒的に不足しているのが現状です。そもそも大学にコンピューターサイエンスを教えられる教員が少ないため、従来のように大学教員が学生に教えるというシステムでは間に合わないのです。
そこで考えたものが「慶應義塾大学AI・高度プログラミングコンソーシアム【*】」で、これはAIやITスキルの技術力が高い学生が次世代を育てるといったものです。やがて育った学生が教える側に立つといったサイクルができれば、AI人材をたくさん育成することができます。また、育成する側の学生にはきちんと報酬が支払われます。生活のために多くの時間をアルバイトに割き、勉強の時間が取れずにいる学生を守るためにも一役買っています。

【*】「 慶應義塾大学AI・高度プログラミングコンソーシアム 」は、人工知能や機械学習、高度プログラミングに興味のある塾生が集い、自主的に勉強できる学びの場です。学部や学年は問いません。すでに、勉強会や講演会、コンテストなど様々な企画がされています。

今後の進路は既に決まっていますか?

博士号を取得した後、技術を活かして働ける研究所か研究機関への就職を希望しています。自ら考え、自身のスタイルでやっていくことが好きなので、営業職のようにコミュニケーションが必要なところは性格上難しいですね(笑)。入学した際は博士号の取得はさほど考えていなかったものの、学部4年生になってどんどん研究をやるなかで、自分が向いているのは研究だと感じ、必然的に博士号を取得しようと思うようになりました。
研究機関では予算の獲得が大変そうだと教員の方々を見て痛感していますが、人に何かを教えて広げたいという思いはあります。昨年、私が教師となる「慶應義塾大学AI・高度プログラミングコンソーシアム」の実験的な講習会を開いたのですが、この講座は大成功でした。そもそも企画を立ち上げるのは得意なので、そういった自分の強みも活かしながら、将来の進むべき道を決めていけたらと考えています。

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