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情報工学科(開放環境科学専攻 修士課程2年【※】)

東京都・豊島岡女子学園高校

宿題やテスト、部活に追われた高校時代から培ってきた、要領よくこなす力。幼い頃から好きだった理系の道へと進んだ後も、研究や趣味の数独の分野でその力を発揮しているといいます。制限のある学びから、主体的な学びへのシフトは、彼女にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。慶應義塾大学理工学部で得られた多くの経験と学び、そして改めて気づいた自分の本当に好きなこととは?

【※】インタビュー時点(2022年8月)の在籍学年です。

学業と遊びのバランス。
自身の興味に素直に従うことで、
世界が大きく広がった。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

都内の中高一貫校に通っていました。進学校だったため、6年間にわたって受験を意識したカリキュラムが組まれていて、宿題やテストに明け暮れる日々でした。ただ、部活は全員必ず入らなければならなかったため、勉強ばかりという生活ではありませんでした。部活のほかにも好きなテレビやラジオ、アイドルを応援するなど、ごく普通の高校生活を送っていました。高校2年次にはほぼ全カリキュラムを終えて、3年生からは受験モードに。受験勉強に日々奮闘する中で、いかに要領よく進めていくかという力が高校時代に身につきました。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

もともと、小学生の頃から算数が好きだったことに加え、数学や物理が得意だったため理系に進もうと決めました。受験する大学を具体的に決める時期になり、理工学部の学科について調べていた際に、プログラミングが面白そうだなと直感的に感じ、情報工学科に興味を持つようになりました。高校の授業でも簡単なサイトを作る中でプログラミングには触れる機会がありましたが、もっと本格的に原理から学んでみたいなと。とはいえ、自分が本当に向いているか分からなかったため、学門制【※】はピッタリでした。入学時点で情報工学科に6割ほどは心が決まっていましたが、1年次に哲学や物理化学、生物などさまざまな授業を受けられたことは視野が広がり非常に良かったです。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する、慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。なお、2020年度の理工学部入学者から学門制が変更となり、各学門から進学できる学科が一部変わりました。学門制の詳細は以下のリンクを参照してください。

学生生活の中で、研究以外に打ち込んだことはなんですか?

飽き性なところもあるため、色々なことをやってきました。大学1年次に加入していた映画製作サークルでは、映画の編集に興味を持って取り組んでいました。1年生10名ほどで映画製作をしたり、夏には長野県小諸市を舞台に映画を製作したり、映画祭で上映をさせてもらう機会にも恵まれました。もう一つ所属していたエレクトーンサークルは、できたばかりのサークルで運営も大変でしたが、3年次には三田祭で野外ライブを、4年次にはコロナ禍のためオンラインでのライブを開催しました。4年次のオンラインライブでは、私が編集したコンサート動画がYouTubeで2,000回近い再生回数を記録するなど、予想以上の反響がありました。 大学の活動とは離れますが、小学生の頃から好きな数独は、大学生になってからより熱を入れて取り組んでいます。与えられた問題に対して法則をいち早く見つけ紐解いていく作業は、プログラミングでゴールまでの筋道を理論的に考える思考方法や、仮定をもとに試行錯誤するところに通じます。2年前には数独の日本大会で16位に。最近では世界大会にも挑戦しています。

社会と結びつく。
実践的な学びが、
情報工学科の魅力。

情報工学科の特徴を教えてください。

情報工学の理論を学ぶ座学に加えて、ラジオの通信系の回路を自分で組むAMFM回路実験、動的なWebページ制作、Unity【※】を用いたゲーム作成、センサを使ったサービスの実装といった多岐にわたる分野の実験を行える授業が特徴です。 実社会と結びついた研究が多いことから、企業との共同研究を行っている研究室も多数あります。学部生の授業でも企業の方の講演を聞く機会があり、実社会でどのように研究を活かすことができるのか具体的にイメージすることができました。また最先端の考え方や技術に触れたことで、自分の研究分野を決めるのにも役立ちました。 【※】Unity…ユニティ・テクノロジーズ社が提供する、ゲーム開発プラットフォームのこと。

研究などで、思い出に残っているエピソードについて教えてください。

学部4年の卒業論文が国際学会に通ったことは思い出に残っています。研究室の大槻教授が論文をたくさん発表されていることもあり、海外への発信を積極的に後押ししてくださいました。本来であれば、実際に海外へ赴いて学会で発表するチャンスもあったのですが、残念ながらコロナ禍でそれは叶わずビデオ発表となりました。それでも、英語での論文執筆や研究発表動画の作成は良い経験になりました。またそれに加えて、論文が国際ジャーナルに掲載されたこともその後の研究に対するモチベーションに繋がっています。

英語学習についてはどのように行ってきましたか?

入学当時の英語レベルは中高で学んだ文法などの土台部分のみでした。そこまで苦手意識もなかったのですが、英語の授業を受けるなどして、定期的に触れるように意識していました。研究面では、先輩方の英語論文を参考にさせていただいたり、自分で調べたりと地道に続けています。入学する前に、どのぐらいの英語レベルが必要なのか心配する人もいるかもしれませんが、学んでいくうちに研究分野の英単語は覚えますし、たくさんインプットをするのでそこまで心配はありません。 これは大学入学時に実感したのですが、高校までの与えられた環境や決められた範囲でやるといった制限のある学びとは異なり、大学では自由に自分から行動することが重要だと実感しています。それはコミュニケーションの領域でも同じなので、自分の欲しいスキルや学びたいことのために積極的に動いていく姿勢が大切だと思います。

学んだ技術と理論。
そしてその過程が、
社会で活用できる。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

私の研究テーマは「センサを用いた非接触測定による呼吸・心拍検出」です。呼吸や心拍は健康状態を把握する上でとても大切な生体情報です。一般的には、健康診断の際に使用するような電極パッドや日常的に身に着けるスマートウォッチのようなウェアラブルデバイスがありますが、接触時の不快感や装着の煩わしさ、そしてデバイスが高額なことなど課題はたくさんあります。そこで、私の研究では「非接触」というところに着目して、測定時にストレスを感じさせない生体情報センシングを研究しています。センサを用いて人間に電波を照射し、その反射波から生体情報を検出しています。 反射波に含まれる振動情報から心拍検出を行うのですが、この研究の難しさは、呼吸や心拍による皮膚の振動は極めて小さいため、体動や周辺環境の影響を受けやすいことです。将来的にはご自宅で一人暮らしをする高齢の方や在宅医療の患者さんなどの異常をいち早く検知し、介護や医療の現場で活用できるようになります。

現在所属している研究室を選んだ理由はなんですか?

大槻研究室を選んだ理由は主に2つあります。1つ目は、研究室の大きなテーマである生体信号の検出が私自身の経験と結びついていたことです。子どもの頃から不整脈であることもあり、心拍や呼吸の日常的なモニタリングの必要性を強く感じていました。そのため、センサを用いた研究テーマを扱っている研究室は自然と自分の中で第一志望になりました。
2つ目はグローバルかつレベルの高い環境で研究できることです。研究を通して海外での経験ができることを期待していましたが、コロナ禍と重なってしまいあまりその実現には至りませんでした。ですが、大槻研究室には留学生も多く、研究以外でも交流の機会が沢山あるところも良い点です。また、国際学会などに積極的に参加している先輩や博士号取得に向けて研究をしている方もいるため、さまざまな方からアドバイスをいただけることをありがたく感じています。

今後の進路や目標について教えてください。

半導体系のメーカーで、エンジニアとしてAIを用いたDX【※】に関わる仕事に就く予定です。就職活動開始時は、今の研究内容に近い研究職も視野に入れていましたが、改めて自分が何にやりがいを感じるのかを考えた際に、研究そのものよりも、目標に対して効率よく物事を進めることが好きだと気づき、AIを用いた生産現場や研究開発での作業効率化・最適化の仕事(DX)に方向性をシフトしました。 半導体産業は海外の競合他社との競争も激しく、今後更なる発展が求められる業界です。そんな現場でDXの必要性は非常に高く、レベルの高い環境でスピード感を持って働けるのではないかと期待しています。自分の予想を超えるレベルの高い環境に飛び込んでいくことで、新たな自分の成長に繋がることが楽しみです。 【※】DX…Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略。データやデジタル技術を活用してビジネスの現場で変革をもたらすことを指します。

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