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情報工学科(開放環境科学専攻情報工学専修 修士課程2年【※】)

東京都・私立慶應義塾女子高等学校出身

好奇心旺盛で、様々なことにチャレンジしてきた高校時代。当初は数学や経済に興味を持ちながら、大学での実践的な授業によって自分の得意分野を見つけ、情報工学科へと進みました。研究室では自らの研究をわかりやすく紹介する展示を行ったり、国際会議で議論をしたり、専門分野を活かしたアルバイトを続けるなど、幅広い挑戦から理論と技術を身につけてきた学生時代。その培った力を社会でどのように活かしていきたいのかも語ってもらいました。

【※】インタビュー時点(2019年7月)の在籍学年です。

興味に従って挑戦していた高校時代。
教授の熱意あふれる言葉から
理工学部という進路へ。

どのような高校時代を過ごされましたか?

慶應義塾大学の一貫教育高校に通っていたのですが、生徒の主体性を重んじる自由な校風だったことと、受験勉強がない代わりに、自分がやってみたいと思ったことに挑戦する高校生活でした。小さい頃からパソコンに興味があったので、プログラミングを学べる部活に所属して簡単なゲームを作ったり、当時はフィギュアスケートが流行っていたので、スケート部にも所属して浅田真央選手を目指してみたり(笑)。部活以外にも個人的にマジックを勉強したり、小説を書いたりと、その時々で興味があったことを広く楽しんできました。ひとつのことだけよりも、いろんなことに興味を抱く性格なのです。

パソコンに興味を持ち、理系の道に進んだきっかけを教えてください。

父が家でパソコンを使って仕事をしているのを見て、「私もやってみたい!」とパソコンで遊ばせてもらったのがきっかけです。あと、家から秋葉原が近かったので、身近な環境にパソコンや電子機器類があったのも、自分の人生を左右する理由だったのかなと思います。学校は理系よりも文系の授業の中身が濃かったと感じていたものの、もともと私は数学が好きだし得意でした。数学は答えが一つに決まることと、論理的に解を導き出す過程が面白くて魅力的に感じていたのです。

慶應義塾大学理工学部を選んだ理由を教えてください。

得意な数学の道に進もうと思ったものの、当初は経済学部と理工学部で迷っていました。そんな時に大学の全学部の教授が高校に来て、学部紹介をしてくださる機会があったのです。そこで理工学部の管理工学科の教授が解析について具体的に説明しながら、「理工学部は4年、もしくは(大学院を含む)6年間を通して、あなた達を鍛え上げます!」と語る熱意あふれる言葉に、こんな先生の下で数学をもっと勉強したいと感じました。それに管理工学科だと経済に関することもできるし、いろいろ学べて一石二鳥なのかなと。
あと、塾内高校向けの研究室見学ツアーに参加して、様々な研究室を実際に見学できたのも良かったです。教員が高校生の私たちにもわかりやすく音声認識についてのデモンストレーションや解説を用意してくださり、先輩たちも熱心に研究や学生生活について語ってくださったので、理工学部に良いイメージを持ちました。

実践的な授業から見つけ出した。
自分が輝くことができて、
身近な情報工学という分野。

入学してみて、理工学部の学生にどんな印象を持ちましたか?

理工学部には全国からいろんな人が集まっていますが、一貫して言えるのは自分がやりたいことにしっかりとチャレンジし、その分野の中で最先端を走っている方が多いことです。プログラミングの大会で表彰されたり、アプリを開発したり、ベンチャー企業の立ち上げに関わって軌道に乗せていたり。一見、派手に見える友人でも話してみると、実は博士課程への進学を希望するほど研究への情熱を持っていたり…。みんなが一生懸命に夢に向かって前進し、それを励ましあえる環境は特徴的だと思います。そんな場や周囲の人に恵まれて感謝しています。

情報工学科に魅力を感じて、選んだのはなぜですか?

入学当時は数理科学科か管理工学科に進もうと考えたため、「学門2【※1】」に進みました。しかし、私は学部2年に進級する際の学科分けの際、最終的に情報工学科を選びました。それは、学部1年生の時にクラスの友人やサークルの先輩から刺激を受けたり、講義を通して自身の学びたいことがしっかりと見えたからです。特に、学科を選択する際に行われた情報工学科の研究室を見学できるツアーで、IoT (Internet of Things)やVR (Virtual Reality)を始めとする情報工学の面白い技術に触れ、今まさに急成長していく分野にワクワクしたのが大きな決め手になりました。机に向かって数学を解くのも、経済を紐解く統計も楽しかったけれど、自分自身がこれから一番輝いていきたいのは情報系の分野だと気づいたのです。その点で、「学門制【※2】」が非常に役立ったと感じています。
情報工学科の研究は、ロボットや自動運転、AR (Augmented Reality)、表情認識、CG (Computer Graphics)、ビックデータなど、デジタル情報社会に生きる私たちにとって身近に感じられるものが多いのです。私たちの身の回りにあるありふれたものを動かしているのが情報の力で、それらに欠かせない知識を深く正しく学ぶことができます。また、理論を学ぶだけにとどまらず、「テーマに沿ったウェブページを作る」、「ゲームやロボットを作成する」、「センサーを使って面白い発明を実装する」といった実践に踏み込んだ授業も多く、勉強したことをすぐに活かせる環境であることはすごく魅力的でした。

実践的な内容が多いと、現実社会における技術をイメージしやすいため、自分のやりたい分野をみつけやすい。今振り返ってみても、理論を学んでいた学部1年生の時よりも、情報工学科に入って手を動かすようになってからの毎日の方が生き生きと過ごせたと感じています。

【※1】学門2…2014年度入学当時に、数理科学科・管理工学科・情報工学科の3つの学科に進学可能であった「学門」。2020年度入学者からは、各学門の名称と構成が変更されます。

【※2】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。

所属している研究室での思い出に残っている体験を教えてください。

私は山中直明研究室に所属しネットワーク技術の研究をしています。「右手で理論、左手で実装」という指導教員の考え方に共感し、ここであればしっかりとした理論を身につけることと、実装やビジネスに繋げる研究のどちらも両立できると考えたからです。研究室では学会発表だけでなく、「 KEIO TECHNO-MALL(慶應科学技術展) 【※3】」という展示会にも毎年参加しています。研究をどのように紹介すればより分かりやすく、さらにはインパクトを与えるのかを研究室のメンバーで相談し、現地でネットワークを構築しデモンストレーションを行いました。デモンストレーションを見せながら企業や他大学の方とディスカッションすることで、研究をより良いものに導くことができ、刺激になりました。こういった展示は日本だけでなく、海外でも行っています。国際会議にもデモ機を持っていき、英語で討論するんです。興味を持ってもらえなければ議論をすることもできないため緊張しましたが、限られた時間で有意義な討論を繰り広げることができたワクワク感は忘れられません。社会で通用するプレゼン能力や英語力を養うことができたと思います。卒業までにもう一度海外に行きたいので、次に向けて勉強中です!

また、山中研究室では夏休み中に子どものための「子供科学教室」を行っていて、それに参加したのも貴重な経験でした。糸電話の糸の代わりに光を使って声を伝える「光糸電話」を作ったのですが、子どもたちは、計算機の分解やはんだづけ、光で声を伝えるという初めての体験に喜んでくれました。子どもたちの学習意欲に触れて、純粋に科学を楽しんでいた初心に帰ることができました。

【※3】KEIO TECHNO-MALL(慶應科学技術展)は、慶應義塾大学理工学部の研究成果を紹介することで、共同研究や技術移転等のきっかけとなる「出会いの場を提供するイベント」です。毎年有楽町にある東京国際フォーラムで12月中旬に開催されており、理工系大学の展示会としては開催19回と長い歴史を持ち、開催の規模も日本最大級を誇っています。

研究とアルバイトで養った知識と技術。
快適なネットワーク環境を整えることで
最新技術の実現を支える。

現在の研究テーマについて教えてください。

ライフラインに関わる研究をしたくて、ネットワークに関する研究を選びました。現在の研究を簡潔に言うと、生物の脳や生態の制御の動きを模倣してネットワークをコントロールする研究です。これまでハードウェアの中にあった機能をいわゆるクラウド化して、ネットワーク内のソフトウェアの機能として動かし、ユーザの契約状況に応じて、様々な機能を適切に配置し経路を制御する「サービスファンクションチェイニング」と呼ばれる技術があります。その配置を制御するのに、環境の変化に柔軟に対応しながら低消費エネルギーで動く生物の仕組みを適用してみようというのが私の研究です。
これを実現すると快適なネットワークを提供できるようになり、身近なところでいうと携帯の通信技術にも活用できる。現在の携帯は4Gですが、これからの5Gを実現するための基盤になります。

学生生活で研究以外に打ち込んだことはありますか?

学部2年生の時からネットワークの保守運用のアルバイトをしています。例えば、ショッピングサイトやSNSが繋がりにくい時があると思うのですが、その原因を究明して復旧作業をしたり、事前に負荷がかかることを予測してシステムの処理能力を高めたりといった仕事です。授業で学んだことを活かしてみたい、その一方で「授業で学んだことだけがすべてではないのでは?」と思ったことがきっかけで始めたアルバイトです。社会に関わって、エンジニアの方々がどんな実務に携わっているかを知りたかったのです。インターンなどの短期間よりも、アルバイトとして長期的に働いた方が深く関われると思って、現在も続けています。研究で学んだことをアルバイトに活かすと同時に、アルバイトで学んだことを研究にも活かすという良い循環が生まれたと思います。

今後はどのような進路に進む予定でしょうか?

通信・ネットワーク関連の会社への就職が内定しています。様々な情報技術に触れてきて、満足度の高いITシステムを作るには優れたネットワークが必要ということが分かり、そんな基盤を支える職業に就きたいと考えていました。自分が研究してきたテーマが商用化される段階に入っているので、専門性も活かせる場所です。人工知能やIoT、自動運転など新しい技術を用いた多様なサービスが出てくる中で、これらを支えるインフラを迅速に提供する必要があるので、ネットワークの安定的な発展を実現したい。そしていずれは、どのような技術を会社として開発していくのかを考える部署にいってみたいです。今まで長期的に何かをするという経験がないので、次の時代を見据えて進むべき道や技術を考え、それがいつか達成できていたら楽しいだろうなと考えています。

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