Profile

電気情報工学科(総合デザイン工学専攻 修士課程1年【※】)

宮城県・宮城県仙台第二高等学校出身

高校時代は物理部に所属。レーザーを用いた実験に取り組むなど、大学院生となった現在とさほど変わらない生活を送っていたといいます。慶應義塾大学入学当初は、理論物理的な観点から光の本質を探究したいと考えていた彼女。しかしながら電気情報工学科でレーザー加工に出会い、光を使った物質の加工に魅せられます。現在は研究室初となる“生分解性プラスチック”を使用した発電デバイスの研究を行うなど、一貫して“光”を探求する日々。コロナ禍で環境が一変してしまった学部時代のお話や、学びの幅が広いからこそ選択肢が広がる今後の進路についても伺いました。

【※】インタビュー時点(2022年8月)の在籍学年です。

入学の決め手は「学門制」。
興味はひとつでも、
将来への選択肢は幅広く。

高校生活はどのように過ごされましたか?

実家が開業医だったこともあり、顕微鏡や液体窒素といったものが身近にありました。そのため昔から理系に憧れがあり、中学時代には科学サークルへ。その流れで高校では、同じ中学出身の友人たちと一緒に物理部に所属しました。 部活では「全国高等学校総合文化祭」に出展する先輩方のお手伝いや、レーザーを使用した実験に明け暮れる日々で、3年生のころには大学院レベルの実験にまで手を出し始めるなど、すでに大学生のような日々を送っていました。学園祭の実行委員も3年間務めていたので受験との両立は大変でしたが、大きな組織をまとめあげるといったコミュニケーションスキルを学ぶいい機会だったと思います。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

当初、第一志望は地方の大学だったのですが、高校の先輩や両親から「慶應義塾大学はOB・OGのつながりが強く、東京にあるからこそ就職にもプラスに働くんじゃないかな」というアドバイスをもらいました。
また高校時代から光に関する理論物理と機械工学に興味があり、将来は実験的な観点から宇宙の未知の部分を解明してみたいと思っていたものの、実験装置を作る側に行きたいのか、それとも理論物理の研究者になりたいのか、受験当時は迷っていたんです。そこで、どちらの道も残しておける学門制【※】に魅力を感じて慶應義塾大学理工学部への入学を決意しました。結果的に猶予が1年間あり色々学べるところも良かったです。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する、慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。なお、2020年度の理工学部入学者から学門制が変更となり、各学門から進学できる学科が一部変わりました。学門制の詳細は以下のリンクを参照してください。

電気情報工学科の特徴について教えてください。

ハードウェア技術とソフトウェア技術それぞれに専門の指導教員がいるので、どちらも中途半端にならず深く学べるところが魅力だと思います。学部3年生になると、ハードであれば半導体の物理を、ソフトであればプログラミングをというように科目が選択できるのですが、どちらも知っていることは就職活動時の強みになると思います。 理工学部の中でも電気情報工学科は男女比率が9:1と特に女性が少なく、最初は「誰と話そう……」と戸惑うこともありましたが、だからこそ女性同士の結束感が生まれ仲良くなりましたね。また男女限らず自分の意見を持っている個性的な人たちが多く、皆やりたいことや方向性が明確です。自分の選択肢を最大化するための方法を考えている人が周囲にいることは、良い刺激になりました。

興味の中心は変わらない。
楽しみながら突き進む、
研究と語学の両立。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

現在は「レーザープロセシングを用いたエネルギーデバイスの作製」という研究を行っています。卒業論文の研究で、プラスチックにレーザーを照射して炭素の構造を作るところまでは進めていたので、今はさらにその先の研究として、発電デバイスである「摩擦帯電型ナノ発電機 (Triboelectric Nanogenerators, TENGs)」を、土に還る生分解性プラスチックで作っています。一般的にTENGsは金属などを使用しているため、あまり環境には良くありませんが、植物由来の分解できる材料から発電できるとなれば、これほど良いことはありません。将来的には山中での灯りや温度のモニタリングなどに使用して、あとはそのまま廃棄できる、自然環境と共存できるような発電デバイスになると面白いですね。

研究で大変だったことを教えてください。

これまで寺川研究室でも取り組んでこなかった新しいテーマのため、今でも研究は大変です(笑)。周波数を決めて何回も接触させるのですが、どういう機械でやるのかということさえ論文に書かれておらず、電圧を測るときにも新しい測定機器や分析装置が必要でした。機器は研究室で買っていただいたのですが、パソコンに繋いでプログラム自体を自分で作らなければならず、とにかく先行研究が少なかったことが大変でした。
しかしながら高校の物理部時代からプログラミングを少し学んでいたので、その頃の経験や電気情報工学科での授業が役に立ちました。同期に一緒にプログラムを書いてもらったり、研究方針について先輩に相談したりと、研究室のみんなが支えになっていたと思います。

研究以外に打ち込んでいたことはありますか?

祖母が中国生まれということもあり、どういう国なんだろうと昔から興味がありました。大きな国のため地域ごとに文化や雰囲気が全く異なるところが面白いなと、学部1年生のときに第二外国語として中国語を履修したのですが、コロナ禍になって再び自主的に学び始めました。文化に興味があるので、Weibo (中国版Twitter) やYouku (中国版YouTube) のコンテンツを見ていたのですが、それがそのまま勉強になったという感じですね。研究室で受け入れた中国人留学生の方とトークアプリでやり取りした際には「中国語が上手だね」と言われ、学習が生きていることを実感しました。今後は、中国語が堪能な叔父が勧めてくれた「HSK(汉语水平考试/Hanyu Shuiping Kaoshi)」という中国語検定で、自分の語学力も測ってみたいです。

スキルを活かせる道は無限大。
迷える進路が多いほど、
多岐に渡って学んだ証。

コロナ禍における研究・勉学で、工夫していることがあれば教えてください。

コロナ禍では入構が制限されていたため、通える日は実験室でみっちり実験を行い、文献調査や論文執筆といったデスクワークは自宅でこなすなど、大学にいられる時間を有効活用するように意識していました。学部3年生のときは、実験動画を見てデータとともに考察するというオンラインでの実験がほとんどでしたが、自分で手を動かして行う実験よりも実感が伴わない分大変さを感じました。ただ、様々な教員からレポートのフィードバックや、Web会議ツールで1on1が設けられるなど、オンラインならではの手厚いサポートもありました。自宅で一人作業をしていると気が滅入ってしまうので、高校時代や学科の友人などとオンラインで繋がりながらこなしていましたね。

慶應義塾大学理工学部での生活で得られたものは何ですか?

勉強だけでなく、人生の選択肢を幅広く知ることができました。入学当初は日吉キャンパスからスタートするので、色々なバックグラウンドを持つ様々な学部の人たちと関わることのできる環境は魅力だと思います。多様性が非常にあります。
また今年の4月には島根県で開催された国際学会で発表を行ったのですが、そういった機会が多く与えられるところも慶應義塾大学理工学部らしさだと感じます。来年の1・2月にはサンフランシスコでの学会にも参加予定なのですが、英会話はなかなか勉強する機会がないので、英語が堪能な先輩に教えてもらったり、リハーサルを見てもらったりしています。就職に関しても色々な道を選択される先輩が多いので、さまざまな角度から意見が聞けるところも強みだと思います。

今後の進路や目標について教えてください。

博士課程に進学するか、それとも修士を修了して就職するかを決めかねています。寺川研究室を選んだ理由は、高校時代から興味のあった光を使った加工に面白さを感じたからですが、博士課程の学生が在籍していたことも大きな決め手です。もともと、将来への道が広がるのではないかと博士課程への進学も視野に入れていたので、学科内でも数少ない道を歩んでいる先輩の姿を身近で見たかったこともあります。どちらの進路に進んだとしても、元気のない今の日本の産業分野に新しい風で貢献したいという気持ちは変わりません。選択肢が多いことはさまざまなことを学んできたからなので、なんらかの形で大学で培ったスキルが活かせれば嬉しいです。

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