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物理情報工学科(基礎理工学専攻 修士課程1年【※】)

神奈川県・県立希望ケ丘高校出身

中学時代はバスケに熱中し、高校進学の際にも部活動を視野に入れて決めたというほど大のバスケ好き。現在は大学院で遺伝子回路の研究に勤しみつつ、部活動の指導員として中学生にバスケ指導をする日々を送っています。修士となった現在は初参加した国際学会でファイナリストに選ばれるなど、常に挑戦をし続けている彼女に、大学生活で築いてきたものやこれから目指したい未来について語ってもらいました。

【※】インタビュー時点(2022年8月)の在籍学年です。

文武ともに励んだ高校時代。
進学先の決定打は
進路の選択肢の多さ。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

中学で本格的に始めたバスケを引き続きやりたいと思い、バスケットボール部に所属して、部活動に打ち込む日々でした。土日や定期試験前も関係なく、毎朝4〜5時に起きて朝練に行くような生活だったので、学業との両立はかなり大変でした。ただ、制服やヘアスタイルも自由という校風がある一方で、勉学にも力を入れるという方針の高校だったため、学業の手は抜かぬよう、試験前は余裕を持って勉強を進めるなど工夫をしていました。自分自身を分析すると、土壇場で力を発揮するというよりは、コツコツ積み上げていくタイプだったので、自然とそのような勉強の進め方になったのだと思います。また当時、塾にも通っていましたが、勉強は質より量だという考えから、学校の行き帰りの時間を使って暗記をしたり、睡眠時間を勉強する時間に費やしたりすることも多かったです。

慶應義塾大学理工学部に進学を決めた理由を教えてください。

やはり決め手になったのは、学門制【※】です。理系科目が得意だったため、「理系に進みたい」という思いはあったのですが、具体的にどの分野へ行きたいかなど方向性を絞れていない状態でした。他大学の場合、入学のタイミングで4年間の学科が決まってしまう大学が多いため、もし途中で自分に向いていないとなったら厳しいかもしれない。そんな不安もあった中、大学で約1年間勉強した上で学科を決めることができる学門制は非常に魅力的でした。入学時は、高校時代に少し興味があった化学系の学科に進むことができる学門3(現:学門E)【※】を選びました。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。なお、2020年度の理工学部入学者から学門制が変更となり、各学門から進学できる学科が一部変わりました。学門制の詳細は以下のリンクを参照してください。

【※】学門3…応用化学科・物理情報工学科・化学科・生命情報学科の4つの学科に進学可能であった「学門」。2020年度入学者からは、各学門の名称と構成が変更されています。

2年次の選択の際、物理を選んだのはなぜですか?

将来の進路や方向性もまだ定まり切れてはおらず、化学に対してそこまで強い意志やこだわりがあったわけではないため、出来るだけ広い分野について学ぶことができる学科に進みたいという気持ちがありました。また、1年間授業を受ける中でも、化学以外の授業に興味を惹かれることが多く、学門制の良さを活かして最終的な学科選びができたと思います。

与えられたチャンスを掴む。
その飛び込む姿勢が、
新たな喜びへと繋がる。

物理情報工学科の特徴を教えてください。

様々な分野を学べる学科というのは一つの特徴だと思います。物理情報工学科は、主に情報計測・情報制御、量子・情報物理、創発物性科学の3分野に分かれていて、学べる分野が本当に幅広いんです。その分いろいろなことを勉強しないといけないという大変さはありますが、自分の興味のある分野を発見できるというメリットがあると思います。それに、複数の分野にふれて学べるからこそ各分野の比較検討ができ、自分の好きなことや進路に根拠を持って進めるようになると思います。

理工学部・理工学研究科の授業や実習、研究などで、思い出に残っているエピソードについて教えてください。

国際学会に論文が受理されたことは印象に残っています。私のいる研究室には、学会参加者がたくさんいて、修士以上の人はおそらくほぼ全員が学会への論文提出を経験しているのではないかと思います。こうした状況が生まれているのは、担当教員の堀准教授のスタンスも含め、挑戦できる環境があるからです。私も修士になって初めて制御系の学会に論文提出したのですが、「Young Author's Award」という35歳以下の若手研究者に贈られる賞に選出されるという貴重な経験をすることができました。英語でのスピーチにプレッシャーも感じていましたが、たった1名の名誉な賞として自分の研究が評価されたことはとても嬉しかったです。

勉強や研究以外に、大学時代に夢中になっていたことはありますか?

学部3年生まで大学外部のバスケットボールサークルに所属していました。複数の大学の学生が集まっているサークルだったのですが、「真剣にバスケをやりたい」という自分と同じ熱量の人が多く刺激的でした。多い時では、週に2~3回体育館を予約して練習していました。外部サークルに入って良かった点は、通っている大学も生活環境も違う多様なメンバーたちと人間関係を築けたことです。自分が通う大学だけでは関わることができない人たちとの出会いで、視野も広がったように思います。 また、現在は、中学時代の顧問の先生のご縁で、横浜市内の中学校で部活動指導員として中学生にバスケを教えています。研究との両立はなかなか難しいかもと最初は悩みましたが、これはまたとないチャンスだと思い、勢いよく飛び込みました。恩師と一緒に部活動を見るなんて、とても貴重な経験を積ませていただいているなと思います。

時に迷い、模索する。
挑戦をし続けて
自分らしい未来を掴む。

現在取り組んでいる研究について教えてください。

現在、遺伝子回路の研究に取り組んでいます。堀研究室は制御工学系の研究室で、制御の対象は細胞や遺伝子といった生体システムです。その中で私が取り組んでいるのは、細胞内の遺伝子の反応を制御する方法を模索する研究。細胞の中にある遺伝子にはタンパク質を合成するなどの働きがありますが、このタンパク質の合成を遺伝子を組み替えることで制御することができます。制御方法にはいくつかの方法があるのですが、私が研究にあたって採択しているのは囮(おとり)を使った制御方法です。細胞内には、転写の開始に関与する因子が存在し、それが遺伝子に結合すると転写を開始して、タンパク質が合成されます。この結合の際に囮(おとり)を配列して転写因子が遺伝子にくっつかないようにさせることで、タンパク質の合成量を調節することができるんです。私の研究は、この制御方法を使って何ができるかという応用に目を向けているため、数理モデルを作ったり、そのモデルを使ってシミュレーションするためのコードをプログラミングで書いたりしています。 応用することができれば、微生物の持つ機能を上手に制御して希少な物質を効率よく合成したり、医療分野であれば体内の患部に薬剤を届けるドラッグデリバリーシステムを実行する分子ロボットを構築したりすることも夢ではありません。ここ10年位で盛んになってきた研究分野で、まだまだ基礎研究段階ですが、非常に可能性を秘めた分野だと思っています。

現在所属している研究室を選んだ理由を教えてください。

幅広い分野を学べて自身の興味を深めることができるという理由から物理情報工学科を選びましたが、実は昔から興味を持っていたのは「生物」でした。そんな中、大学では学門3を選び、物理情報工学科に進んだものの、やはり頭の片隅には「生物をやりたい」という思いがどこか残っていたんでしょうね。いざ研究室を選ぶとなった時は、実際に生き物は扱わないけれど細胞や微生物などの生物系に近い研究ができる研究室を候補にしました。それに、生体反応に制御工学の考えを適用することにも面白さを感じたので、自分の趣味と興味にマッチする研究室を最終的には選びました。

今後はどのような進路に進む予定でしょうか?

就職を考えて、今はいくつかの企業のインターンに参加しています。進む方向を具体的には絞り込めていない状況ですが、できれば研究でやったことを活かせる仕事に就きたいと考えています。自分の性格的には営業職よりは研究や開発に携わる仕事が向いていると思うので、そういった仕事に就けたらいいなと思っています。ただし、一人で取り組むのではなく、バスケのようにチームでやっていけるような環境が理想ですね。

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