太陽では、軽い原子(水素)が衝突して少し重い原子(ヘリウム)に変わる核融合反応により膨大なエネルギーが生み出されています。核融合エネルギーは、燃料資源が海水中に豊富に存在しほぼ無尽蔵、原理的に連鎖反応などが起こらず安全性が高い、二酸化炭素を放出しない、大規模電力供給が可能、高レベル放射性廃棄物が生じない、等のメリットがあり、実現すれば現在のエネルギー問題を大きく改善する次世代エネルギー源として期待されています。そのため、日本・EU・アメリカ・ロシア・中国・韓国・インドの7極の国際共同プロジェクトとしてすすんでいる国際熱核融合実験炉ITERをはじめ、核融合エネルギーを産業利用するための研究が世界中で精力的に行われています。

核融合反応を起こすために、燃料となる水素をプラズマ状態(イオンと電子がばらばらになった荷電粒子の気体状態)にして、1億度以上に加熱します。核融合エネルギー実現に向けた大きな課題の一つが、「高温プラズマからどうやって装置内壁を守るか?」です。高温プラズマが壁に接すると壁が溶けたり損傷したりしてしまうため、壁にぶつかる前にプラズマを十分に冷やしてやる必要があり、水素ガスや不純物として希ガスを注入し、それらとの相互作用によりプラズマを冷やす方法が考えられています。しかし、壁近傍でのみでプラズマが冷えるようにうまく制御してやらないと、肝心の核融合反応が止まってしまいます。そのような制御方法を考えるには、プラズマ、原子・分子(水素ガス)、不純物に加え装置内壁も考慮し、それらの間で起こる様々な相互作用を理解する必要があります。

私たちの研究室では、核融合エネルギーの実現に向けて、核融合反応がおこる高温プラズマと壁を守る低温プラズマとを両立を目指した研究に取り組んでいます。そのために、数値シミュレーションを駆使して、プラズマ・原子分子・不純物・固体壁の間でおこる様々な相互作用や相乗効果の解明と、それらの制御手法の検討をすすめています。また、同様の物理現象は様々な分野でも重要となっており、核融合研究で培った知見や数値シミュレーション手法を応用して、核融合プラズマの加熱の他、ガン治療や素粒子研究などで必要となるイオン源の性能向上などにも取り組んでいます。

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