はじめまして、Zip Infrastructure株式会社代表取締役の須知 高匡と申します。このたびは塾員来往の執筆という機会をいただき、大変光栄に思っております。

このコラムでは私の人生の一端をお伝えし、これから受験をする人たちにこんな人生もあるんだよということを知ってもらえればと思います。

大学入学前

私は、幼い頃は土遊びや、宇宙や乗り物の図鑑を読むことが好きでした。他にも川遊びや天体観測をしたり、各地の科学館の展示を見に行ったりしたことが楽しかった良い思い出です。

中高の時は一旦サッカー部に入りサッカーに夢中になっていましたが、そこでサッカーが全く上達せず、高校からサッカーをやり始めた友人に半年でレギュラーを奪われるなど一回目の大きな挫折をしました。

その後受験勉強をしていましたが、目標としていた東京大学に落ちるという二回目の大きな挫折を経験しました。その時に自分は何のために生きているのか、ということを深く考えました。それまでは何かの分野で1番を取りたいとぼんやり思っていましたが、本当にそれは幸せなのか、何かの分野で1番をとってもより上位の分野での1番を求めて、きりがないのではと思うようになりました。

そこで本当に好きなことをやろう、それなら無理せず努力できるし、別にトップにならなくても楽しいだろうということで、小さいころから好きだった、宇宙×乗り物への興味を膨らませ、宇宙エレベータに的を定めて、宇宙エレベータを研究するサークルがあるということで最終的に慶應義塾大学理工学部機械工学科に進学することを決めました。

大学時代

大学では授業にもあまり行かない不真面目な学生でしたが、寮生活やサークル活動は全力で楽しんでいました。日吉寮での深夜までの会議、BBQや、慶早ハイク(慶早戦の日に日吉から神宮まで歩く)はその時は大変でしたが、今となっては楽しい思い出です。今や自治寮がある大学も珍しく、さらに、他の学部の人々と交流しつつ生活できたという点で慶應に入ってよかったと感じています。

また、サークルでは超小型衛星を模したCANSATや、宇宙エレベータを模したクライマーを設計、製作していました。それまで本格的にものづくりをしたことはなかったので、CADや旋盤、フライス盤の経験ができたことはとてもいい経験になりました。

しかし、ものづくり系サークルあるあるですが、部品の購入が多く、活動費が全く足りなかったので、せっかくものづくりや設計をしているのだから開発の受託をやろうよということで立ち上げたのがZip Infrastructure株式会社です。大学生活の後半はこちらに全力を注いでいました。

しかし、当たり前ですが、会社を作っただけでは仕事は来るわけもなく、この頃にものづくりのためには技術以外の要素、営業や事業開発という要素も非常に重要であるということを学びました。

またコロナ禍で生活にも研究にもいろいろな制限があり、自宅で実験装置を組んで卒業論文を書いたことも非常にいい思い出です。研究室にもともとあるテーマではなく、自分の将来に役立ちそうなテーマを選んだり、自宅で実験やシミュレーションをしたりと、通常とは違う指導の対応をしていただいて感謝しています。ご指導をいただいた大宮正毅教授、ありがとうございました。

卒業後

受託開発時代の製品

大学卒業後、Zip Infrastructure株式会社に専念することになり、自走型ロープウェイZipparの開発を進めています。

Zipparは、ロープウェイの特徴である安価な建設費という特徴を生かしつつも、これまで不可能であった道路上でのカーブを可能にした新しい交通システムです。バスより定時性が高く、地下鉄より建設費が安い新しい交通システムで世界中の都市渋滞を無くしていきます。

ハードウェアベンチャーの社長として、会社を引っ張るために求められるスキルは、もちろんベースのものづくりや事業開発のスキルもありますが、人やお金を集めてきたり、社内を一致団結させたりと言ったことが求められます。

元々ものづくりをしていたのに、そこまでの配慮や実行ができるのかというのは自分でも悩んでいたポイントでした。しかし、実現したい世界のために真に必要な分野を見つけて、挑戦していくというのは大学時代からの一貫した自分の立ち位置だったということに改めて気づき、日々頑張っています。

最後に

この文章を読んでいるのは受験生が多いと思うので、受験生へ向けて一言。私は2度の挫折もあり、大学入学というきっかけで自分の好きなことをしようと吹っ切れることができました。もちろん、人生いつでも何でもできるというのはありつつも、大学入学というのはまたとないチャンスです。やりたいことをやりきって悔いのない人生を送っていきましょう。

最新のZipparの写真

プロフィール

須知 高匡(すち たかまさ)
(仙台二華高等学校 出身)

2018年7月
Zip Infrastructure株式会社 設立
同社 代表取締役 就任

2021年3月
慶應義塾大学理工学部機械工学科 卒業

現在に至る

ナビゲーションの始まり