この度は、塾員来往への寄稿という貴重な経験をさせていただき誠にありがとうございます。
現在は、群馬県にあります私立常磐高等学校という高校で数学の教師をしています。同じ学科には、自分と同じように教職課程を履修し、実際に教師になった人はあまりいませんでした。さらには、電子工学科(物理系)ということで同期では数学の教師になったのは自分以外いませんでした。そのためユニークな例かもしれないですが、読んでくださった人の何かしらになれば光栄です。
高校生の頃から数学の教師には興味があったものの、数学の学力に自信がなく、また、理科の実験も好きで漠然とエンジニアにも興味があったため、当時の学門制で学門2(数学系)ではなく学門1(物理系)を選びました。今考えるとこの選択は本当に良かったなと思っています。
実際入学した後は、大学の授業の難しさ、速さにとても苦戦しました。教職課程も履修したこともあり、こなしきれずに再三単位を落としました(ただの言い訳ですが…)。そんな感じで、相変わらず成績は良くありませんでした。しかし、難しい講義であっても細かくはよく分からずとも、面白さを自分なりに得ることができました。
そして、4年生での研究室への所属は、今でも大切な関わりとなっています。所属した斎木敏治先生の研究室では、3班に分かれて研究をしているのですが、その中でも、せっかくなら高価な機器を使ってみたいと思い、パルス幅がフェムト秒のレーザを用いて実験を行う”フェムト班”を選びました。“フェムト班”は修士2年の優しい先輩と自分だけの小さい班だったので、常にコミュニケーションをとって一緒に実験をしてもらったりしました。研究内容は、2種類の相変化材料を重ねた2層構造の物質に両側からレーザを時間差で照射し、両側からの照射の時間差に変化が起きるような条件を探るというものです。実験をメインとして、たまにFDTDシミュレーションで計算をしました。研究そのものだけでなく、私は人前に立つのが苦手だったため発表練習も何度も見てもらい、無事発表、論文ともに終了することができました。
研究室生活では研究はもちろん行いましたが、夏合宿やスキー合宿、飲み会などはっちゃけることも多くとても満喫?していました。
その後、縁があって現在の職場である常磐高等学校に勤めることになりました。常磐高等学校では特別進学コース、進学コース、総合コース、体育コースと分かれていて、それぞれのコースに特色があり、生徒たちもさまざまな個性をもっています。生徒が成長できるように、学習面だけでなく、生活面など幅広く1人ひとりと向き合って関わっています。ちょうどこの前に1年生から担任を受け持った生徒たちが卒業していきました。成長を間近で見てきたからこそ、喜びはひとしおです。これからも何かしらの関わりをもてたらいいなと思っています。
各コースでさまざまな取り組みをしているのですが、その1つに特別進学コースの理系選択を対象にした“慶應義塾大学訪問”があります。本校は、副校長が化学科の卒業生であることをはじめ、その他にも理工学部をはじめとした慶應義塾大学の卒業生が何名かいることから縁があり、矢上キャンパスや研究室を見学させていただいています。私が勤め始めてからは、斎木先生が快諾してくださったこともあり、斎木研究室も見学させていただけることになりました。生徒たちは、大学という雰囲気に圧倒されながらも目をキラキラさせていたのが印象的でした。私自身も卒業してからも研究室と関わりをもてることをとても嬉しく思っています。
物理系の学科を卒業しながら数学の教師になることは少ないでしょう。私は、数学そのものを追究することよりも数学を利用して考えるところに面白味を感じ、それを後輩にも伝えられたらと考えながら今の職業に就いています。人生は何が正解かが決まっていない道だからこそ、自分なりの意思や意図をもてると楽しくなるのかなとまだまだの若造なりに思っています。
また、人と関わる仕事をしているからこそ、人との繋がりの大切さを実感しています。常磐高等学校に勤める前は、高校が慶應義塾大学と繋がりがあるとは知らなかったですし、斎木先生、研究室とも関わりをもてるとは思ってもいませんでした。繋がりがどこに出来るかわからないからこそ、その時々の出会いを大切にしていければと思います。
半田 弘明(はんだ ひろあき)
(慶應義塾高等学校 出身)
2017年9月
慶應義塾大学理工学部電子工学科 卒業
2017年10月
八王子実践中学校・八王子実践高等学校 非常勤講師
2018年4年
群馬常磐学園常磐高等学校 教諭
現在に至る