はじめに

ウズベキスタンの民族衣装を着て

私は慶應義塾大学・大学院と理工学部で情報工学(IT)を専攻しましたが、その後はJICAボランティア(海外協力隊)として中央アジア・ウズベキスタンに赴任し、現地での情報教育活動に携わりました。そして現在、ウズベキスタンの隣国であるトルクメニスタンの日本国大使館で専門調査員として主に広報文化活動などの仕事に従事しています。
一見すると大学・大学院で研究したことと現在の仕事は関係がない様に見えるかもしれませんが、大学、大学院で学んだこと、部活動の仲間たちと一緒に経験したことの全てが現在に繋がっていると感じています。他の卒業生の方々とは少々変わった経歴かもしれませんが、こんな道もあるのだと感じて頂ければ幸いです。

理工学部を選択した動機・大学時代の思い出

子供のころからゲームやパソコンは比較的好きでした。パソコンやゲームは一体どういう仕組みで動いているのかといったことに興味を持ち、進路を選択するにあたり、あまり深くは考えずに理工学部情報工学科を選択しました。

理工学部では1年次に第二外国語としてドイツ語・フランス語・中国語・朝鮮語・ロシア語の中から一つを選ぶことができますが、文字からして変わった言語であるロシア語に惹かれ、第二外国語として選択しました。半分趣味のように、大学院修了時まで勉強を続けましたが、その頃は将来中央アジアの国々でロシア語を使って仕事をすることになるとは夢にも思っていませんでした。

学部3年生の末からは、情報工学科の松谷研究室に所属しました。松谷研究室を選んだ理由は先生の人柄に惹かれたことと、私の代が研究室の第一期生ということで自由に研究ができそうと感じたからでした。躓いたことも何度もありましたが、面倒見の良い先生のおかげでNoC(Network-on-Chips)をテーマに研究を続け、国内外の学会で研究発表するなどの貴重な経験をすることができました。研究室の学生が増えてくるにつれてイベントなども増え、楽しく充実した研究室生活を送りました。また、学部1年生から理工学部体育会の少林寺拳法部に所属し、かけがえのない仲間たちと出会えたことも大学時代の大きな収穫です。

現在までの仕事の内容と趣味

大学院修了後の進路については大変悩みました。普通に就活して就職することに抵抗があったため、理系にこだわらず様々な情報を集めていました。その頃、自身の専門を活かして海外で活動するJICAボランティア(海外協力隊)に、IT系の職種があるということを知る機会があり、迷わずチャレンジすることにしました。応募選考の末、ロシア語圏のウズベキスタンで、情報教育の仕事に2年間携わることになりました。まさか大学時代に履修したロシア語を仕事でも活かせるとは思っておらず、人生は色々とつながっていると感じたことを覚えています。

ウズベキスタンでは、小学校5年生~高校2年生にあたる生徒達の義務教育科目である「情報」における現地教員へのサポートの仕事に従事しました。ウズベキスタンは近年情報教育が始まったばかりで先生の数・質ともにまだまだ不十分なのが現状です。使われている「情報」の教科書には、中学生からプログラミングを教えるなどのある程度高度な内容が書かれているのですが、現場の先生方の指導力不足でその単元の授業が行われないといったことが普通に起こっています。そのため、現地教員への知識面・技術面での手助けと、授業での指導補佐などを主に行っていました。

ウズベキスタンでは言葉、文化などを始め日本とは違うことばかりで、慣れるまでは大変でしたが、2年間の活動の中では現地の人たちだけではなく、現地で活動している日本人など様々な人たちと関わることができ、大きな財産となっていると感じています。

そして現在、私はウズベキスタンの隣国であるトルクメニスタンにある日本国大使館で専門調査員という仕事に携わっています。トルクメニスタンという国に興味を持ったのはウズベキスタンでの2年間があったからこそだと思います。大学、大学院で学んだこととは若干違う方向でありますが、ITの技術は日常生活に深く入り込んでおり、大学で学んだ知識が思わぬ形で仕事の役に立つこともあり、色々な物事がどこかで繋がっていると感じています。

理工学部体育会少林寺拳法部 幹部交代式

ウズベキスタン サマルカンド(世界遺産)

おわりに

この文章を読んでいる人の中には、今後のことで悩んでいる人や、漠然とした不安を感じている人、将来の自分のイメージが持てない人がいるかもしれません。そんな人たちに私からアドバイスできることがあるとしたら、「とりあえず何でも良いから動いてやってみること」だと思います。物事は複雑に絡み合っていて、いつかどこかで自分がやっていたことは、どこかで何かに繋がっていることも多いと思います。私自身、大学で学んだ情報工学、ロシア語、大学で出会った仲間たち、経験した様々のことが意図しないうちに繋がっていることをふとした瞬間に気づくことがあります。大学の選択、学部の選択など悩むことは多いと思いますが、自分の直感を信じて動いてみると思わぬ道が開けてくるかもしれません。

ウズベキスタン カラ(古城)

ウズベキスタン お世話になった家庭での1枚

プロフィール

松村 剛(まつむら ごう)
(逗子開成高等学校 出身)

2014年3月
慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業

2016年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻前期博士課程 修了

2016年7月
JICA青年海外協力隊としてウズベキスタンに赴任

2019年6月
在トルクメニスタン日本国大使館 専門調査員

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