はじめに

私は現在、鎌倉にある中外製薬の研究所で癌治療薬の研究に携わり、また休日にはスポーツや旅行を楽しんでいます。もし慶應義塾大学理工学部に入らなければ、今とは違う生き方をしているでしょう。せっかくの機会ですので、その当時の率直な思いと現在の興味について、自由に執筆させて頂きたいと思います。

理工学部生命情報学科へ

高校時代には部活動のバスケットボールに夢中になっていて、あまり将来のことを考えていませんでした。漠然と建築家になろうと思い、慶應義塾大学理工学部に入学しました。建築の知識を得るために、大学1年生の授業で学んだ建築史は興味深く、世界中の建築物の時代・地域ごとの違いを学ぶことができました。特に、20世紀の建築家の巨匠の一人であるミース・ファン・デル・ローエの作品や言葉に惹かれました。建築の道に進むことをほぼ決めていた中、必修科目の生物の授業で、生命の設計図である遺伝暗号について学んだ時、生命の不思議さに心動かされ、それを詳しく学べる生命情報学科に進む決心をしました。理工学部では、入学前に学科を決める必要がなく、2年進級時に学科を決める「学門制」という制度であるため、私には適していたと思っています。この時の決心で今の私があると考えると人生は不思議だと思います。

研究室生活

生命の遺伝暗号と医療とを結びつけた研究を行いたいと思い、大学4年生から大学院修士課程までの3年間柳川研究室に所属し、「iPS細胞の作製に必要な分子のネットワーク解析」というテーマで、将来の再生医療に役立つ研究を行いました。研究の詳細は省きますが、先生、先輩、友人とディスカッションしながら実験を進め、その成果を学会で発表をしたり、時には、慶應の医学部での実験技術の習得や議論をしたりと多くのことを経験できました。また、研究の傍ら、理工学部内のソフトボール大会に向けて本格的に練習して準優勝したり、好きなバスケットボールも行っていました。このような生活を送れたのは、良い仲間に恵まれたおかげだと思っています。

日本分子生物学会でのポスター発表中(2008年12月)

大学院修了式の後、柳川先生と研究室の同期との記念撮影 (2010年3月)本人、左から1人目

就職活動

大学院の時の授業で、新薬が世の中に出るには長い年月がかかることを知り、良い薬を早く世に出すことに貢献したいと思い、製薬会社への就職を志望することにしました。そもそも、薬の研究をしていたわけではなく、またどのような製薬会社があるのかもよくわからないままの就職活動スタートでした。そこで、大学内の友人からだけでなく、就職活動先の他大学の人とも親しくなり多くの情報を収集しました。もちろん、各企業の採用HPも興味深く役に立ちますので、情報のバランスは大事だと感じました。

中外製薬での仕事と趣味

縁あって中外製薬に入社し、現在、新しい癌治療薬の研究に携わる仕事をしています。癌治療薬では近年、「分子標的薬」と呼ばれる高い有効性と安全性が期待される薬剤開発が積極的に進められていて、私もその一役を担っています。例えば、既存の薬では効果が弱い患者さんでは、なぜ弱いかを分子レベルで理解し、それを新しい薬の候補では強い効果を示すかを調べる、実際の医療現場の情報と基礎研究をつないだ「橋渡し研究」を行っています。医療機関との共同研究の打ち合わせや学会における医師との議論などから情報を収集し、それを研究に活かすことで癌に苦しんでいる患者さんに貢献できることにやりがいを感じています。また最近では、社内外を問わずプレゼンテーションを任される機会が増え、仕事の幅も広がってきていると思っています。
 
プライベートでは、社内のバスケットボールサークルで活動しています。また最近、湘南国際マラソンでフルマラソンを完走しました。沿道からの会社の先輩や見ず知らずの方の応援が今でも忘れられません。 知らない人がエアーサロンパスを貸して下さったりします。今でも会社のメンバーと就業後には会社の近くの鎌倉・江ノ島付近を、休日には皇居を走って気分転換しています。連休の時には、会社の友人と東南アジアやヨーロッパを旅行しました。現地の人とコミュニケーションをとることや知らない文化に触れることだけでなく、世界遺産の建築物を間近で見ることができることが大変興味深く、次の旅行も現在計画中です。大学生のときに学んだ建築史が役に立っています。マラソンと海外旅行が同時に楽しめる、海外でのフルマラソンに挑戦することが私のプライベートの夢の一つです。ありきたりですが、ホノルルマラソンでしょうか。

会社の友人とカンボジア旅行、アンコールトム遺跡(2011年9月)本人、右側

会社の友人とヨーロッパ旅行、ドイツのケルン大聖堂を背景に(2012年4月)本人、中央

最後に

会社の先輩に誘われたバスケチームのユニフォームを着て撮影。会社の社内報にも載りました。(2012年4月) 本人、右側

仕事では、私が携わる仕事から画期的な癌治療薬を生み出し、多くの患者さんに貢献したいと思います。その成果を、国内外の学会で世の中にアピールしたいですね。また、プライベートでは、海外旅行やスポーツだけでなく、新しい趣味も見つけられたらと思っています。

プロフィール

児玉 達史(こだま たつし)
(神奈川県立川和高等学校 出身)

2008年3月
慶應義塾大学理工学部生命情報学科 卒業

2010年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻修士課程 修了

2010年4月
中外製薬株式会社 入社

現在に至る

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