【はじめに】

この度は塾員来往への執筆の機会を頂きありがとうございます。私は慶應義塾大学理工学部応用化学科を卒業し、修士課程を修了しました。現在は国内消費財メーカーにて海外向けの製品を開発するR&D部隊として働いています。本稿では、慶應での学びが今の私にどのように影響を与えてきたのかを振り返りたいと思います。

【理工学部選択の動機】

高校時代から化学への興味が強く、特に実験や理論を学ぶことが楽しかった記憶です。国際化学オリンピック予選にあたる全国高校化学グランプリ2011の二次選考が慶應大学で実施された際、初めて慶應の敷地に足を踏み入れました。そのときの充実した環境や雰囲気に触れたことで、ここで学びたいという思いを抱きました。

慶應義塾大学の学門制は、入学後に自分の専門を選べるという点で非常に魅力的でした。日常の疑問を解決できる科学の知識をつけることが好きな一方で、それを具体的にどう生かせるかイメージがついていなかった私は、この柔軟性にとても惹かれ、理工学部へ進学する決意を固めました。

【大学時代の思い出(学部)】

大学時代には学業にいそしみながら多くの貴重な経験をしました。特に印象深いのは、2013年に韓国Korea Universityと共同で実施するKeio×Korea (K2) Global Leadership Seminarの初回に参加したことです。韓国のソウルにある大学を訪問し、現地の学生と「理想のグローバルリーダー像」について議論を交わしました。壮大な議題に対して当時の私がどれだけ深く理解していたかは定かではありませんが、異なる背景を持つメンバーとの議論を通じて自分の新たな一面を発見することができました。この経験を通じて、「知らない世界に飛び込んでみる挑戦」の重要性を痛感し、越境志向・海外志向が芽生えました。また、意見の対立や異文化の違いを乗り越えるために、どのようにコミュニケーションを取るべきか学んだことは、今でも大きな財産となっています。

さらに、2014年には理工学部の仲間とアメリカ西海岸縦断旅行をしました。秋田から出てきた私にとって、この旅行は世界が一気に広がったように感じました。多様な文化や雄大な自然に触れることで、自分の視野が大きく広がり多くの価値観を体験する貴重な機会となりました。

K2 Global Leadership Seminar: Korea Universityの学生とともに。

アメリカ・ヨセミテ国立公園: 理工学部の友人と、雄大な景色にとても感動しました。

【大学時代の思い出(研究室)】

応用化学科への進学後は生物化学を専門とする清水研究室に所属しました。研究室では、タンパク質の糖鎖修飾に関する研究を行い、大学院まで継続して取り組みました。

生物系の実験となると結果が得られるまで時間がかかることが多く、また担当したテーマが生物系の知識を多く使うものであったため、多くの論文を読み新しい知識を身につける必要がありました。その過程は決して容易ではありませんでしたが、先生方や”師匠”として付いてくれた先輩、研究室の同期の存在に支えられ、国内学会では賞をもらい、国際学会にも参加する機会も頂けるほど研究にまい進して成果をあげることができました。また、後輩が研究を引き継ぎ、論文化まで成し遂げてくれるなど、研究面でも縦横の繋がりを強く感じました。

研究活動以外も充実していて、中でも研究室対抗のソフトボール大会へ参加し、勝ち進むごとに先生やメンバーとともに祝杯をあげながら、塾長杯-理工学部予選を勝ち抜き他学部も含めた本選-に進出できたのも良い思い出です。(初戦で当たった対戦相手のピッチャーが剛腕で、手も足も出なかったのもよく覚えています。。。)

韓国・済州で開催された国際学会: 初めての国際学会で緊張しつつも楽しかったのを覚えています。

研究室同期の結婚式: お互いの結婚式に招待する等、卒業後も研究室の繋がりを実感しています。

【現在の仕事】

研究室での基礎研究を経て、自分の知識やスキルが直接人の役に立つのを見たいと強く思うようになり、B to C分野を志望して消費財メーカーでのキャリアを開始しました。学部での国際経験も相まって、より多くの人に貢献できる海外事業を希望し、現在は主に東南アジア向けのオーラルヘルスケア製品開発に携わっています。

研究室時代の専門とは異なり、歯磨剤や洗口剤の開発には界面活性剤等の専門知識から製品化するまでの品質に関する知識を求められますが、学部の時に学んだことを活かしながら日々未知の世界への挑戦を楽しいと感じています。また、自身が携わった製品が実際に店頭に並びアジアの方々の健康に貢献出来ていると思うと、改めて大きなやりがいを感じます。

一方で、各国の規制に即した表現とそのエビデンスが求められることもあり、研究室で培った生化学、微生物学の実験スキルが大いに役立っています。そのスキルを活かしながら成分の効果を証明する試験も推進し、2024年には国際的な歯科学会にて賞を授与されました。これはひとえに理工学部・研究室での学びがつながった成果と感じています。

ベトナム・ホーチミンで開催された国際歯科学会: アジアの歯科専門家に向け研究成果を報告するとともに、今後の研究についてもアドバイスをいただく貴重な機会となりました。

【最後に】

高校生の皆さんには、自身の興味や関心を大切にし、その情熱を持って学び続けてほしいと願っています。大学は学問だけでなく、自己成長や新たな挑戦の場でもあります。皆さんにとっても慶應義塾大学理工学部での学びは将来に大きな影響を与え、多様な選択肢と機会を提供してくれると思います。自分の夢や目標に向かって、一歩一歩前進してください。応援しています。

息子との一枚

プロフィール

小松 良亮(こまつ りょうすけ)
(秋田県立秋田高等学校 出身)

2016年3月
慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 卒業

2018年3月
慶應義塾大学 大学院理工学研究科 基礎理工学専攻 修了

2018年4月
ライオン株式会社 入社

現在に至る

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