理工学部同窓会総会・講演会「老舗企業の改革 ~銀粒からシームレスカプセルへ~」が行われました

2015年10月29日

突き抜けるような青空の下、2015年10月25日(日)13:15~14:00、日吉キャンパス第4校舎J11教室にて、工学部応用化学科1973年卒業生の駒村純一氏(森下仁丹株式会社代表取締役社長)による講演会が、連合三田会大会理工学部同窓会特別講演として、約200名の聴衆を集めて開催されました。

森下仁丹は、銀色小粒の仁丹で知られる1893年創業の120年を越える老舗企業です。創業当時は総合保健薬・仁丹のメーカーであり、浅草広告塔、新聞一面大広告、電柱広告など広告を通じた社会貢献とWorldwide mind による外貨獲得を実現し、圧倒的な知名度を誇る一世を風靡したブランド企業です。その企業の財務は、口中清涼剤競争激化、喫煙率の低下とともに下降線を辿り、およそ10年前の2003年には30億円の赤字を計上するに至りました。

ちょうどその頃、駒村氏が執行役員として入社します(取締役社長は2006年から)。同氏は仁丹と同じようなカプセルの中に液体を包み込む技術を産業用として事業化しました。この事業化により2013年3月期連結で売上97億円を達成するまでに押し上げました。この「立て直し」が劇的であったこと、また、今年から始まった「機能性表示食品制度」推進の立役者の一人として、多くのマスコミに取り上げられ、今や時の人となっています。

透明で継ぎ目のない独自のシームレスカプセルの主力製品は「ビフィーナ」であり、乳酸菌健康食品のシェアNo。1です。これは、胃酸で死んでしまうビフィズス菌をカプセルに入れ生きたまま腸に届けることができるものです。その他にも、「シロアリ駆除(疑似卵開発)」「レアメタル回収カプセル」「経口ワクチン(大腸で溶ける)」などに展開し、また、本塾先端生命科学研究所鶴岡タウンキャンパスのメタボロミクスとのベンチャー企業を成立させ、「アカデミヤ向けのカプセル化受託サービス」「ヘルスケア事業」、そして、機能性を表示する商品を集約させた新ブランド「ヘルスエイド」を立ち上げています。

「老舗病」にかかっている会社を如何にして再興できたのかについて、駒村氏は、講演の中で、「意識改革と組織改革が企業風土を改革する」と述べています。また、「長い歴史を持つ企業には社内に復活の鍵が必ずある。その鍵を見つけ出すためには、建前や既成概念からの自己開放、意識改革が必要であり、それが組織改革を促し、企業風土そのものを変革できる。」 と述べられています。講演の最後に、聴衆からの質問に答え、「社員を叱る際には、連帯責任者全員が自覚するように叱る。」とおっしゃっていました。

TPP(環太平洋経済連携協定)の運用が開始されると、健康食品の分野でも米国制度との摩擦が懸念されます。このような中で、セルフメディケーション(個人の健康管理)に欠かせない健康食品の分野で、駒村氏の益々のご活躍が大いに期待されます。

駒村 純一 氏

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