インドネシアでは新型コロナウイルス感染症の累計死者数が6千人を超え、東南アジア諸国では最も深刻な影響を受けています。現地ではこの状況下においてリスクの最前線にいる医療従事者のための保護具が不足しています。インドネシアに限らず、東南アジアの多くの国や地域では、先進国のような保護具の供給体制が脆弱であり、マスクを作成するためのフィルター素材等も入手困難な状況が続いています。
インドネシア・バリ島に拠点を置くコペルニクは、支援が届きにくい世界中の貧困地域のラストマイルの人々に適正技術(テクノロジー)を届ける活動を行っているNGO組織です。コペルニクは、京都大学発ベンチャーの株式会社OOYOO(京都府京都市、代表:山口大輔)と慶應義塾大学理工学部応用化学科の奥田知明教授に、現地でも生産可能であり、かつ粒子捕集性能の高いフィルター素材の開発と提供を依頼しました。そして株式会社OOYOOと奥田教授は共同で、東南アジア諸国の多くの地域では入手困難な高性能なマスクに用いられているメルトブローン不織布を用いずに、ほぼ同等の粒子捕集性能を持つフィルター素材を開発し、コペルニクに提供しました。現在この素材はコペルニクを通じてインドネシア現地の生産工場にて量産され、マスク供給体制が確立されつつあります。
なおこの素材は技術的にはまだ開発途中ではありますが、最近のインドネシアにおける新型コロナウイルス感染症の拡大傾向を受け、現時点での現地での量産体制を構築することを優先しました。開発されたフィルター素材は、現時点で 0.5 μm 以上の粒子を90%以上捕集できていますが、株式会社OOYOOと奥田教授は今後も粒子捕集効率の向上をはかり、2020年度内には市販の高性能不織布マスクと同等かそれ以上の性能を持つフィルター素材の開発を目指して研究開発を続けます。