自律して動くロボットや、音声・スクリーン上のキャラクターを使用する情報技術、さらには、ソーシャルメディア上で動く自動ボット、生成AIを下にした対話エージェントシステムが社会の中に増えてきました。人間は、これらの自律したシステムの振る舞いを観察すると、そのシステムをただの道具としてではなく「擬人化」して捉え、他者に対するのと同様の社会的やり取りを、人工的システムに対し意識的あるいは無意識的に期待するようになります。
このように、人間から社会的なやり取りを期待される人工システムは、道具(ツール)と対比して「エージェント」、特に社会的エージェントと呼ばれます。人の間に介在する社会的存在であるエージェントが、人間にどのように働きかけられるかを検討し、使用場面に合わせたエージェントをユーザに対し提示することで、人工システムはユーザの行動を予測し、認識し、ひいてはユーザに対する誘導・教示を行うことが可能となります。
本研究室では、こうした社会的エージェントを、人間社会を拡張する手段として捉え、広く研究しています。個人の能力を拡張する研究分野として、ヒューマンオーグメンテーションという発想があります。持てないものが持てるようになる、考えられないことが考えられるようになる。様々な光学技術が、人間をこうして手助けしています。これと同様に、我々は社会の能力を拡張し補うための手段として、こうした社会的エージェントを活用したいと考えています。例えば、社会的エージェントに教える、社会的エージェントと競う、という形式を取ることで、人間はより理解を促進されます。研究室では、人間と人間の認知したエージェントとのやり取りを、対人実験を介して分析すると同時に、センサ、アクチュエータ、プログラムを組み合わせ、人とシステムの間に介在する新しいエージェントシステムを作り出し、将来の社会の中で活躍する人工システムのあり方を探っています。
同時に、こうしたエージェントシステムの応用を議論する際に、念頭に置かなければならない倫理、価値観、弱い立場の人へのケア、必要となる問題を検討するため、SF(サイエンスフィクション)を用いた未来像の検討を、SFプロトタイピングの研究として手掛けています。ロボットやAIエージェントはかつてSFの想像力が先行した分野ですが、その想像力に触発された研究が現実化しつつあります。その上で、さらに未来のあり方を、フィクションと現実の科学的知見や技術とともに推し進めるのが、我々の研究室の目標です。
