W.A.シューハート(Walter A. Shewhart)が提唱した統計的品質管理は、製品の品質を数値で評価し、製造プロセスを安定させるための革新的な手法です。この方法は、世界中の工場で採用され、日本の製造業にも大きな影響を与えてきました。特に、日本のものづくりは、シューハートの手法を取り入れることで品質の安定性を高め、世界でもトップクラスの品質を誇る産業へと成長しました。

シューハートの考え方の特徴は、品質に影響を与える不確実な要素を統計学の力で管理し、製品のばらつきを抑えることにあります。これにより製品の「安定した品質」を実現し、消費者から信頼される製品を提供することが可能になりました。

それから約100年が経過した現在、品質管理の手法はさらに進化しています。従来の統計的品質管理は、製造の過程において一定の割合で不良品が発生することを前提としており、それを統計的手法で管理する方法で、あくまでも「不良品の発生後に対応を取る」といった後手型の管理手法でした。しかし今日では、そもそも「不良品をつくらない」という先手型の品質管理へと進化することが求められています。この新しいアプローチは、製造過程におけるさまざまな製造条件を常に最適な状態に整え、「必ず良品をつくる(=不良品をつくることができない)」ことを目指します。これは、近年の科学技術の発展により、リアルタイムに製造条件の変化を捉え、製品の品質状態とその製造条件を瞬時に把握できるようになったことで、実現可能となりつつあります。

日本の製造業では、長年にわたり「3現主義」が重視されてきました。3現主義とは、現場に足を運び(現場)、実物を手に取り(現物)、現実に基づいて判断するという原則であり、現場で起こっている問題を正確に把握してこそ、適切な対策を講じることができるという考え方です。先手型品質管理は、ソフト、ハード両面におけるデジタル技術が大きく進展した現在だからこそ実現可能となる技術で、製造した製品ひとつひとつの品質状態を瞬時に可視化し、それを製造条件と合わせて管理することで、現在の製造条件を修正するか、継続するかを逐次判断し、品質不良の発生を未然に防ぐ手段で、まさに現代の3現主義といえます。

このように、日本のものづくりにおける管理技術は、常に進化を続けており、これからも日本の製造業が世界をリードするための重要な鍵となるでしょう。

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