これは連続な時間変数を刻み幅 𝒽 で離散化し、微分 𝓍'(𝓉) を時間幅 𝒽 の平均変化率で近似したものになります。𝓀=0 から始めれば、四則演算によって直ちに𝓎0, 𝓎1,𝓎2 … が得られます。各 𝒽 に対して近似解のグラフ{ (𝓉𝓀,𝓎𝓀) | 𝓀=0,1,2,…} の隣接点同士を線分で結ぶことによって折れ線関数 𝓍𝒽 が得られます。ここで 𝒽 を0に近づけると、関数 𝓍𝒽 の“折れ具合”はどんどん細かくなり、その極限において 𝓍𝒽 は何らかの滑らかな関数 𝓍 に“収束”し、 𝓍 は真の解になっていることが期待されます。この予想を厳密に証明することが可能です。そのためには、数列の収束の概念を一般化した「関数列の収束」(上の例では折れ線関数 𝓍𝒽 の列の収束)について詳しく調べる必要があります。「積分」は、曲がった図形の面積の概念に関連していると同時に、微分演算を元に戻す演算でもあり、様々な場面で非常に重要な役割を担っています。最小作用の原理で述べた「関数(経路)の持つ“コスト”」は、例えば次のような積分で与えられます:
ただし L は既知の関数、 γ は経路を表す関数になります。ℒ は「考え得る経路 γ の全体、すなわち関数の集合上で定義された関数」という意味で「汎関数」とも呼ばれます。ℒ を最小にするような関数(すなわち“無駄”のない経路)を見つける問題は、例えば数直線上で定義された関数 𝓎=𝓍4−4𝓍3+𝓍2+3𝓍−1 の最小点を求める問題の一般化と見ることができます。 ℒ の定義域は数直線ではなく関数の集合になっているため、問題は格段に難しくなります。ここでも「関数列
の収束」の概念が非常に重要な役割を果たします。
上記以外にも様々な現象に対応する微分方程式が導出されており、これらを解くために解析学がどんどん発展しています。また、力学以外の様々な問題においても「“コスト”の最小化」という考え方の有用性が明らかになっており、解析学において「変分法」と呼ばれる理論が発展しています。問題に応じた適切な関数の集合を設定し、その集合における関数列の収束やその他の諸性質を明らかにすることが解析学の基礎となります。そしてこれらの枠組みを駆使して現象を解明することも解析学の重要な役割になります。
本稿を通して、解析学という比較的新しい数学の一分野の背景や役割について垣間見ていただければ幸いです。