学生時代

子供の頃の夢は、研究者になることでした。そして、研究者になりました。

勉強が楽しいと感じたのは、大学4年生の研究室へ配属になってからです。人生の恩師とも言える電気工学科の笹瀬先生との出会いは貴重で、大学4年生からの提案型の知的探索の場である研究室が、私の学びの原点です。自ら考え、課題を抽出し、必要な知識の習得、解決に向けた提案・実装、そして国際会議での成果発表など、この時期に主体的な学びの場に居れたことは良かったです。研究の選手として、創り出す発想力と成功するまで続ける粘り強さが身に付きました。研究のコーチ役としても、期待して見守る姿勢で臨むことで、チームメンバに主体性が生まれ各分野の先駆者として巣立って行きました。

当時の研究室には運動好き、酒好きが揃っており、今でもマラソン、サイクリング、トライアスロンなどへ一緒に参加し、懇親を深めています。笹瀬先生とも、国の委員会や学会活動でご一緒させて頂くことが多く、そのような中で私のワイン好きが伝染したのか、笹瀬先生主催の生協ラウンジで行われる年2回のワイン会も伝統になってきました。卒業してから20年が経ちますが、いまだに矢上校舎へ授業の講師とワイン会の幹事役として、通っています。

1994研究室合宿(大学4年生)

今でも一緒に参加している研究室仲間とのマラソン集合

現在の仕事

au Marketのプライバシ通知画面

入社5年目から、コンピュータセキュリティの研究を始め、ウイルス、遠隔制御、Web改竄対策などに関する研究の日々を過ごしました。途中1年間、社会人ドクターとして博士号を取りに、卒業した研究室へ通っていました。ここ5年程は、スマホ端末のセキュリティ設計、スマホ向けアプリのプライバシ審査など、auスマホのセキュリティ技術を統括しています。

2008年、米国カーネギーメロン大との共同研究の中で、先生が手にしていたスマホに目が奪われました。この時代が来る! まだスマホが日本市場に無かったときに、スマホ研究プロジェクトを立ち上げました。簡単便利で安定性のあるガラケーが普及した日本市場にスマホを出すには、安心感と安全性をベースに、楽しさを訴求する必要があると考えました。そこでKDDIでは、楽しいアプリを直接配信するau Marketを立ち上げ、プライバシ・セキュリティ審査を私のチームが引き受ける方針を立て、本社と研究所が一丸となって取り組むことに。当時はスマホのプライバシ対策に関する法制度が無かった状況でもあり、関係する国や協会に働きかけ、お客様保護に関する議論を進めてきました。我々のノウハウは、「スマートフォン・プライバシ・イニシアティブ」と呼ばれる国としての提言書に纏められ、法制面での社会貢献にも繋がっています。社内外の仲間にも恵まれ、省庁・大学・企業の方々との連携から、スマホのプライバシ保護の取り組みは、日本が世界的をリードするに至っています。たとえば、au Marketからアプリをダウンロードした経験がある方は、プライバシ確認画面を見られた記憶はございますでしょうか。あの画面は、最新技術によるアプリ審査の結果を、法制を勘案してお伝えする、世界初のフレームです。セキュリティ面でも、auスマホ端末の堅牢化に取り組み、ウイルス感染の予防と、たとえ感染した場合でも、完全な遠隔制御や故障を阻止する設計を施しています。

スマホを安心・安全にご利用頂くために、講演会、雑誌、書籍、新聞取材や報道番組などを通じて、普及・啓発にも取り組んでいます。日経・読売・朝日新聞、ガイアの夜明け、NHKニュース、ニコニコ動画などで、皆様にお会いしたことがあるかもしれませんね。

報道対応(NHKニュース)

姿勢

新たなこと、難しいことを選んで仕事をするようにしています。どうにもならない案件、嫌な役回りに限って、私のところに舞い込んできます。出来る限り拾います。また、専門の違う方々とも積極的に交わります。そうすることで、新たな領域の創造と成果を世に出す道が開けます。

私は、あるべき論の理想を目指したい気持ちが高いようで、自分の中では正論なのですが、周囲からは先鋭過ぎて付いて行けないとのご指摘を...。確かに、出過ぎているところもあり、「出る杭は打たれる」の典型例です。でも打たれることで、深く根ざすことができ、より一段高く成長できます。いつか、打つことができない高さに至りたいと。打たれて素直に反省し、謙虚な姿勢で成長に繋げられるかを問い続けている毎日です。

これからの皆さんへのアドバイス

人は学びから成長できていると実感できる環境にいることが、一番楽しいのではないでしょうか。ここ数年、沢山の講演会や執筆をさせて頂いておりますが、学びの場へ来られる方々は、知らない・難しいセキュリティの話に対しても、何かを得ようと前向きです。そして、目を輝かせながらの議論は弾みます。人は学び続けることがDNAに刻まれている生き物です。学べる機会は貴重で、良い指導者と刺激的な環境の中で、いかに主体的な時間を過ごすかで、その後が変わります。皆さんも、大学・研究室選びの際に、何を学び取れるか、どのような経験ができ、成長に繋げられるのか、考えてみては如何でしょうか?

プロフィール

竹森 敬祐(たけもり けいすけ)
(広島県立呉宮原高等学校 出身)

1994年3月
慶應義塾大学理工学部電気工学科 卒業

1996年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程 修了

1996年4月
国際電信電話株式会社(KDD) 入社、KDD研究所 配属

2003年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻博士課程 修了

現在
株式会社KDDI研究所、KDDI株式会社に所属

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