この度は、塾員来往への執筆の機会を頂き、関係各位の方々に深謝いたします。簡単ですが、私の学生生活と会社生活について紹介したいと思います。
私は、学部4年、修士2年、博士2年の合計8年間の大学生活を過ごしました。塾員来往への執筆依頼を頂いてから、改めてこの8年間を振り返ると、慶應義塾大学での私の学生生活は、情報工学、ロボット工学の幅広い知識の習得、サークル活動、アルバイト、旅行、と、とても充実しており、自己成長ができた大変貴重な時間でありました。
鉄腕アトムから非常に強い影響を受け、鉄腕アトムを作ることが私の夢でした。(今もかわらず、その夢を追いかけています!) 特に鉄腕アトムの高度な人工頭脳の興味があり、その夢を叶えるために、パーソナルロボットの電子頭脳や人工知能に関する勉強・研究が行いたく、理工学部学門5へ入学しました。学門5は、ロボットに必要な技術を身につけることができる情報工学科、電子工学科、システムデザイン工学科と複数の学科へ進級が可能ということから選択しましたが、ロボットの人工知能の権威でいらっしゃる安西先生、ロボットの電子頭脳開発を行ってらっしゃる山﨑先生の下で研究を行いたい気持ちから情報工学科への進級を選択しました。
4年生になった時、希望が叶い、安西・山﨑・今井研究室へ配属でき、ロボット研究に明け暮れました。8年間の研究生活で、人工知能の基礎となるソフトウェアと、そのソフトウェアの指示に基づいてロボットの身体制御を司るLSIの開発を中心に、ロボットに必要な音声認識、画像処理等の要素技術も幅広く学びました。ロボットが大好きで、全て自分の手で作ってみたかったので、最後の3年間をかけて後輩とメカ機構設計から何もかも製作したのが最も懐かしい思い出です。学生時代の相棒が何とか動作してくれたおかげで、無事に博士を取得することができました。
研究内容に対する指摘、要求される技術の高さはもちろん厳しかったですが、そのおかげで、エンジニアとして必要となる論理的思考、データ解析力、プレゼンテーション力も鍛えられました。
また、私は福利厚生団体「Student Counselors」とサッカーサークルも所属しておりました。Student Counselors では、オープンキャンパスでのガイド、履修相談と、多くの塾生と話をする機会があり、話し好きの性格は、この時に開花しました…。
2005年にトヨタ自動車株式会社へ入社し、現在までの9年間パートナーロボット部にてロボットの開発に従事しています。入社後も、鉄腕アトムという夢を形にするために、学生時代に培った知識を活かし、ロボットの安全性・信頼性を保証する電子制御システムやソフトウエア構成の開発を行っております。
少子・高齢化が急速に進む日本において、明るく活力ある社会の継続・クオリティオブライフ向上の実現のために、新モビリティ・介護医療分野などで、自分が携わったロボットが活躍できることを目標として日々開発を行っています。興味がある方はぜひ ここ を見てください。
トヨタでのロボット開発生活
開発に携わったロボット
開発ロボット発表会
また、学生時代にStudent Counselorで新入生の支援を行っていたのが縁か、今ではトヨタ自動車を目指す慶應生へのアドバイス・支援もしており、卒業してからも慶應義塾大学との関係は続いています。
福澤諭吉先生の言葉である「学問を志した以上、大いに学問に励むべきだ。」を実践すべく、トヨタ自動車への入学と同時に、後期博士課程へも進学するという選択をしました。月〜金曜日は愛知県豊田市にて仕事、金曜日の仕事後〜日曜日夕方まで新川崎タウンキャンパスにて研究、というロボット開発中心の生活を2年間続けました。この2年は体力的に大変厳しい期間でありましたが、知力はもちろんのこと、何事にも負けない強い精神力を身につける事が出来たと感じています。この経験は、先生、友人、会社・研究室の諸先輩方や後輩、両親と多くの人に支えられたことで達成することができ、今でも大変感謝しています。
博士授与式前
現在の自分が、高校生からの夢であるロボット開発に携わっていれるのも、福澤諭吉先生の言葉である建学の精神「独立自尊」の教育指針の下で、学生生活を楽しく、且つ、必至に過ごして来たからだと思っております。塾員の一人として、世の中に貢献できる人材になれるように成長していきたいと考えています。
平 哲也(たいら てつや)
(金光学園 出身)
2003年3月
慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業
2005年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程 修了
2005年4月
トヨタ自動車株式会社 入社
2007年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程 修了
現在に至る