私は現在、ソニーに勤務して3年目になります。ソニーと言えば、テレビやウォークマンなどの黒物家電が代表的な商品ですが、私はこのソニーの顔とは異なる分野の業務に携わっています。具体的には、大学時代に専攻していた医療・ヘルスケアに関する研究開発に従事しています。自分の専門性をいかして仕事をしながら、将来の電化製品につながる最先端技術を目の当たりに出来る環境はとても刺激的です。

充実した社会人生活を送れているのは、慶應義塾大学での経験があってこそだと思っています。そんな中、光栄にもこの原稿の執筆依頼を頂いたので、少しでも慶應義塾大学の魅力をお伝えすべく、僭越ながら筆をとることに決めました。

私は理工学部学門1に入学し、2年次に物理情報工学科に進みました。物理情報工学科を選択したのは、矢上祭(理工学部の文化祭)のキャンパスツアーで見学した荒井研究室に入りたいと強く思ったからです。医療工学というやりがいのある研究内容と学生の活気ある雰囲気に惹かれ、荒井研究室への入室を夢見た私は、自ずと勉強に力が入りました。

2年次までは物理学をはじめ、サイエンスに関わる基礎的な学問を学んでいきます。基礎体力がついた3年次になると、教授陣たちは待ってましたとばかりに、自分の研究分野に直結した授業を繰り広げていきます。MRIや通信用光ファイバ、制御工学など世の中で活躍する技術を学ぶことができ、私の知的好奇心を満たしてくれました。

学科の友達との食事会

また物理情報工学科の特徴として、幅広い領域をカバーしていることが挙げられます。そのため、1つ1つの授業が新鮮で、90分の授業があっという間でした。授業や実験では難しい課題が出ることもありましたが、興味深い内容と切磋琢磨できる友達のおかげで、楽しみながら課題をこなし、その度に達成感を得ることができました。その友達とは今でも定期的に食事会や旅行などに出かけています。

さて、念願叶って、4年次への進級とともに、私は希望していた荒井研究室に入室できました。荒井教授のおかげで、医療工学の見識を深めると同時に、多くの貴重な経験を積むことができました。

対外的なものとしては、学会発表や、医師・企業とのミーティング、英語論文執筆、特許出願などがあります。特に学会には国内外含めて頻繁に参加させていただき、権威ある方々と交流が持てたことは素晴らしい経験でした。またBIOSという医療工学の分野で有名な国際学会で、自分の研究内容に対して質問やコメントを受けた時の喜びは格別でした。さらに国ごとの研究スタイルの違いや世界のトレンドの変化を肌で感じることができ、世界を見据えた研究開発の必要性と難しさを学びました。

対内的なものとしては、学事やコロキウム、グループミーティング、夏合宿などがあり、学会発表と同様、プレゼンテーション力を鍛えることができました。さらに実験計画をたてる力や、グループとして研究を進めていく力、指導する力などを養成できました。

そして、社会人になった今でも、学生時代に習得したスキルや経験を通じて感じたことは、仕事を進める上での基盤として役立っています。

学会発表(国内のポスターセッションの様子)

学会発表(国際学会でオーラル発表後に座長とともに)

学生生活の中で最も大変だった時期は、修士論文の追い込み時期に国際学会発表が重なった大学院2年次の冬でした。しかし研究室設立当初の先輩方が荒井教授とともに築き上げてきた雰囲気が私の支えとなりました。具体的には、グループという枠組を超えて、日頃から自然とお互いの研究内容について議論・相談できる環境があり、そのおかげでどんなに忙しい時期でも助け合い、乗り切ることができたと思っています。濃密な時間を一緒に過ごした研究室のメンバーは、先輩・同期・後輩ともに、私にとって卒業後もかけがえのない存在です。

国際学会の合間にサンフランシスコまで観光に出かけた時の写真

お世話になった研究室の先輩方の送別会

在学中の貴重な体験を語りだすときりがないので、ここでは矢上キャンパスでの生活に焦点をあてて書き記してきましたが、慶應義塾大学にはインターンシップや交換留学など自分の可能性を広げる環境が整っています。

学問にプラスして何を経験していくかを左右するのは自分自身です。周りに刺激を受け、自分の視野を広げることができる慶應義塾大学に是非、一度足を運んで、いろいろな人たちの話を聞いてみてください。そして自分の歩むべき道、歩みたい道を見つけていただけたらと思います。

大学院の卒業式(研究室の同期)

大学院の卒業式(恩師の荒井教授と)

プロフィール

箱守 志穗(はこもり しほ)
(女子学院高等学校 出身)

2006年3月
慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 卒業

2008年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻修士課程 修了

2008年4月
ソニー株式会社 入社

現在に至る

ナビゲーションの始まり