「塾員来往」への寄稿の機会をいただき、ありがとうございます。錚々たる先輩方の中に加わるのは少し気後れしますが、慶應で学び、いま化粧品研究の現場で楽しく働けているその軌跡がどなたかの参考になれば幸いです。
小さい頃から髪をいじるのが好きで、お人形のヘアアレンジや美容師さんの行動観察が好きな子供でした。思春期にはテレビでメイクアップアーティストの仕事を知り、「将来はあれだ!」と盛り上がったものの、「プロになって食べていけるのはほんの一握りかも」という現実がちらつき、理系科目のほうが得意だったこともあって方向転換。「だったら化粧品を作るほうにいこう」と決めたのが中学生の頃でした。
「秋田を出たい」「東京に行きたい」という思いは強く、大学選びは早い段階で首都圏に絞っていました。母が塾員で“慶應の面白さ”をよく耳にしていた影響も大きかったと思います。そんな中、高校に慶應理工学部の指定校推薦枠があると知り、しかも化学系に進めるコースと聞いて目指すことを決意。無事に枠をいただき、夢への第一歩を踏み出しました。
入学して最初に感じたのは、全国から集まった同級生のレベルの高さ。高校までの“まぁ優等生”ポジションは一瞬で剥がれました。ただ、生命情報学科は人数が多くないため、同期の仲間と濃い時間を過ごすことができ、課題も試験も恋も、助け合いながら乗り越えられました。矢上、日吉、渋谷、横浜・・・放課後?の思い出も宝物です。
「将来、化粧品会社に進みたい」と教授たちに相談し、天然化合物による脂肪蓄積阻害メカニズムの解明というテーマをいただきました。植物やキノコから成分を抽出・分離し、脂肪細胞でアッセイ、ターゲットタンパクを探る──といった盛りだくさんの内容でしたが、化粧品・健康食品のどちらにも関わる分野で、毎日が新鮮でした。このとき身に付けた幅広い実験技術は、就職活動で大きな強みになったと感じています。
就職活動では化粧品と食品の研究職を中心に受け、最終的に株式会社ファンケルへ入社。大学院では主に健康食品寄りの研究をしていましたが、「化粧品の基礎研究をやりたい」と強く伝えた結果、現在まで化粧品や皮膚科学の基礎研究に携わっています。同社には健康食品の部署もあるため、大学院時代の知識で会話が弾むことも多く、両分野を行き来できるのは大きな刺激です。入社後はヒト臨床試験の設計やデータ解析も担当し、難しさと面白さを日々実感しています。
共同研究で矢上キャンパスを訪れる機会が増え、当時の自分を懐かしく思い出すことが多くなりました。地方出身で右も左も分からなかった私ですが、慶應という環境と仲間に恵まれたおかげで、今も好きな研究を続けられています。社会に出ても「慶應なんですね」と話の糸口になることが多く、本塾のネットワークの広さを改めて感じます。これから研究職を目指す方、あるいは進路に迷う方にとって、「好き」を軸に動けば道は開けるという一例になれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
池田 麻里子(いけだ まりこ)(現姓:葛井)
(秋田県立秋田高等学校 出身)
2009年3月
慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 卒業
2011年3月
慶應義塾大学 大学院理工学研究科 基礎理工学専攻 修士課程 修了
2011年4月 - 現在
株式会社ファンケル 入社 総合研究所 所属
