8月9日(火)、矢上キャンパスにおいて独立行政法人日本学術振興会と本学の共催で「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI」(研究成果の社会還元・普及事業)のプログラム「プラナリアの生殖戦略—性と生殖—」が開催されました。
この事業は、科学研究費助成事業により得られた最先端の研究成果を小・中・高校生にわかりやすく伝え、科学のおもしろさを感じてもらうために実施されているものです。慶應義塾大学からは理工学部生命情報学科の松本緑准教授による標記のプログラムが採択・実施され、中学生20名とその保護者など13名の計33名が参加しました。
午前10時半、プログラムを開始しました。今回の実験動物である扁形動物プラナリアについて、その仲間や生息場所について紹介したのち、「中枢神経系」「三胚葉性」「多能性幹細胞」「生殖様式」というプラナリア特有の不思議な特徴を解説しました。その後、実際にプラナリアの無性生殖個体、切断後再生1日目、3日目、7日目の個体、有性生殖個体を観察したのち、餌のトリレバーをプラナリアに与え、食べる様子を観察しました。さらにプラナリアをメスで切断し、切断したあとのプラナリアの動きも観察し、その驚異的な生命力を感じてもらいました。
お昼には、松本准教授やOGの鹿児島大学の野殿英恵博士、実験を一緒に行った松本研究室の学生スタッフたちと慶應大学体育会御用達のボリュームたっぷりのお弁当をとりながら、プラナリアへの興味、大学生活への疑問、将来の夢を語りました。食事のあとのキャンパスツアーでは、理工学メディアセンター・理工学インフォメーションテクノロジーセンターを回り、大学の雰囲気を味わってもらいました。
午後からは、メインテーマの「生殖様式の転換」について講義を行い、無性生殖と有性生殖のメリットとデメリットについてともに考え、有性生殖では、遺伝情報であるゲノムに多様性ができ、適応能力が増すことを解説しました。その後、参加者一人一人が、プラナリアの細胞をギムザ試薬で染色し、その標本細胞群の中から、細胞分裂期のDNAが凝集している染色体を探しました。一生懸命、丁寧に観察した結果、全員が見つけることができました。「細胞分裂においてどのようなことが起こって同じ2つの遺伝情報をもった細胞ができるのか?」また、「有性生殖を行う個体が生殖細胞でのみ起こす減数分裂では、多様性を生みだすどのような染色体の動きをするのか?」を各自でモデルを作りながら説明して、さらに理解を深めてもらいました。
最後は、おやつを食べながらのサイエンスカフェを行いました。プラナリア、生殖様式、染色体などについての質問を受けるとともに、「プラナリアでどんな実験をしたいと思うか?」についてみんなで意見交換を行いました。参加者は、おやつを食べることも忘れて話に熱中していました。
その後、プログラムの修了式が行われ、参加者一人一人に未来博士号が授与されました。希望者には、プラナリアがプレゼントされました。このプラナリアを見るたびに、参加者はこのプログラムのことを思い出してくれることと思います。