われわれの周りには、古くから、いたるところに「ものが燃える」という現象、燃焼現象、がありました。一説には、人間が他のいきものと異なった生き方をするようになった原因のひとつが、火をただ恐れず、火を使うことができるようになったから、とも言われるほどです。火はさまざまな信仰の対象でもありました。また、ごみなどを焼却処分して町の衛生をまもり、感染したものを焼却処分して伝染病の感染拡大を防ぐなど、なにか特別なもの、という印象があったように思います。

そして産業革命を迎えます。熱エネルギーが人間の何百倍、何千倍もの力を与えてくれることが分かり、その熱エネルギーを得るために、石炭などを積極的に燃やすようになります。そして、われわれは燃焼現象を記述する基礎方程式を知るに至り、ものを燃やす学問もスタートにたどり着いたと考えることができます。そして、コンピュータの急速な高性能化などにも助けられ、燃焼の基礎方程式を解くこともできるようになりつつあり、その現象をある程度理解し、また応用に寄与できるようになってきました。

近年、エネルギー源の多様化が進んでいるように思います。多くの将来予測では、再生可能エネルギーの利用などが増加しますが、石炭、石油、天然ガスあるいはバイオ燃料などのいわゆる燃料を燃焼させ、熱や電気を得ることは、将来も重要な役割を果たすことを予測しています。他方、燃焼は、窒素酸化物を排出する、大気中の二酸化炭素濃度を増加させるなど、多くの課題もあります。そこで、「ものが燃える学問」がさらに進展し、問題が克服され、より適切に利用されるようになることを期待しています。

図は、最近当研究室で撮影した、球状メタンハイドレートの炎です。これは研究目的で撮影されたものなのですが、学問的なこととは別に、炎をみていると何かを感じるのは私だけでしょうか。「ものが燃える学問」に関わり、炎について理解を深めてきたとは思うのですが、その何かを感じる感覚がわれわれのどこから来ているのかはわかりませんでした。

写真題目: 球状メタンハイドレート火炎

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