皆さんのよく知っている世界企業、例えば、Googleやオラクル、Appleなどは、すべて大学から生まれたベンチャー(スタートアップ)企業です。それも、私立大学の理工学部、さらには通信・コンピュータサイエンス・情報工学の、とりわけ大学院の学生が、その中心であることはよく知られています。
私の夢は、慶應義塾大学を日本の科学技術の誕生の源泉とすることです。わかりやすく言うと、日本のスタンフォード大学、つまり、Googleを生む大学にしたい。そして、将来のCTO(技術系最高責任者)となる人材を育てたいと思っています。そのためには、イノベーション(革命)的な研究を行なう。決して、成果だけのための改良研究は行なわない。そして、必ず一部でもいいので、Proof-of-Concept(プロトタイプ)を作って実証することが大切です。それでは、研究の内容について紹介しましょう。 研究室では、光ネットワークのデバイスから制御技術、アプリケーションまでを研究しています。現在のキーワードは、“クラウド”、“スマート”、“エネルギー”、“アクセス”、“グリーン”です。目的指向としますので、まず、何をブレークスルーするか、何に後に立つかのイノベーションを要求します。それでは、いくつかを具体的に見てみましょう。

図1. 研究室のテーマ

写真にあるのは、世界最高速度10nsでスイッチングできるPLZT光スイッチです。これは、今、博士課程に進学した学生が米国のベンチャ企業としてスタートアップさせたEpiフォトニクス社と開発し、さらに、日立製作所中央研究所と共同でシステムを開発しました。アイデアやシュミレーションにとどまらず、実際の物を作り、企業の研究者と共同で、世界を目指します。使った研究費もケタ違いですし、多くの新聞報道、表彰を受賞しています。

図2. 光スイッチモジュール

次の写真は、国際会議iPOP2010でデモを行なった、自動的に消費電力が最小となるネットワークのトポロジーとなるアルゴリズムとレイヤ2スイッチです。簡単に言うと、自動的に不必要なところはパワーオフとなるネットワークです。通信に使用するエネルギーは、将来的には全世界のエネルギーの10%とも20%とも言われます。日常の生活では、使っていない電気を消したり、クーラーを止めるのですが、ネットワークは夜のオフィスも電源はすべて入りっぱなしです。本研究は、総務省からもっとも重要な研究として、慶應大学が単独で受託し、多くの研究成果を出しています。

図3. レイヤ2スイッチ

このように、新しい理論や技術を実際に役に立つシステムとして研究をしていき、国際会議や論文の他に、プロトタイプやさらには技術移転をして社会に出す。そして、慶應発のスタートアップ企業が将来のソニーやキャノンのように大きく成長するのが夢です。

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