ダイヤモンドの魅力は宝石だけではありません-高感度センサーダイヤモンド電極-

写真の中でピンセットで挟んでいるものに「永遠の輝き」はありません・・・(灰色!)。しかし、これは正真正銘「ダイヤモンド」なのです。数ミクロンという小さなダイヤの粒が敷き詰められて板状になっているのでこのように黒い色をしているのですが、実はこのダイヤモンド、血液中や尿中の尿酸値、血糖値、あるいは地下水中のヒ素、金属や環境ホルモンなどの濃度を瞬時に、正確に、しかも微量でも測定することができる「高感度センサー」として利用できる可能性があるのです。これが、今注目されつつある新材料「ダイヤモンド電極」です。

図1:私たちの研究室で作っているダイヤモンドです
これが高感度センサーになります

私たちの研究室では、このようなダイヤモンドをマイクロ波プラズマCVDという装置で作っています。原料として、炭素を含むガスか溶液を使います。アルコールでも構いません。これらの材料をマイクロ波によって発生させたプラズマ(図2)中で分解し、ダイヤモンドとして基板の上に降り積もらせます。

図2:このプラズマの中でダイヤモンドが成長します

通常は、人工のダイヤモンドを合成するために高圧合成法という方法を用いることが多いのですが、約10万気圧で約2000℃という地中内部と同じような条件を作りだす必要があるため、装置は部屋1つ分もあるとても大きなものになります。しかし、私たちの研究室にあるこのCVD装置は一畳程度のスペースしかとりません。そのうえ、朝スイッチをONにすると夕方には「高感度センサーダイヤモンド電極」の出来上がりです。このダイヤモンドが宝石のダイヤモンドと大きく違う点は(大きさもそうですが・・)、電気を通すということです。作製の過程で、原料ガスにホウ素を混合(ドーピング)すると導電性のダイヤモンドができるのです。この「ダイヤモンド電極」は、水中で電圧をかけても水が電気分解されにくいなど有用な性質があるので、水中(実際は血液中、尿中、地下水など)である電圧をかけたときの電流値を読めば、その中の尿酸値、血糖値、あるいは地下水中のヒ素、金属や環境ホルモンなどの濃度が正確に測定できるということがわかってきました。

図3:ダイヤモンド電極を用いて水中のヒ素などを分析します

今私たちは、この魅力ある材料が、近い将来医療現場や環境分析現場で大いに活躍する日を信じて、楽しく研究を行っています。

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