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システムデザイン工学科(総合デザイン工学専攻 修士課程2年【※】)

神奈川県・県立生田高等学校出身

9歳から始めた競技ラジコンレースに打ち込み、エンジニアに憧れて理系の道へ。学びの場ではさまざまな分野の知識を吸収し、自ら考えて自ら作るものづくりに夢中に。今までにない金属3Dプリンターの開発に挑戦してきました。日本国内、海外を飛び回るという忙しい日々の中で、研究とラジコンに全力投球。何事にも本気になって挑んできた原動力と、これから進む道について語ってくれました。

【※】インタビュー時点(2020年11月)の在籍学年です。

競技ラジコンに没頭。
ものづくりへの憧れから
理系の道へと進む。

高校時代はどのように過ごしていましたか?

高校は自由と規律の精神を重んじる校風で、自分自身は9歳から始めた競技ラジコンカーレースに夢中で打ち込んでいました。もともとラジコンが趣味だった父親の影響で車が好きになり、自分でラジコンを組み立てて大会に出るようになったんです。平日は学校から帰ってくると整備や準備を行い、週末は県外や海外でレースを行うなど熱心に活動していました。高校2年生のときには全日本選手権優勝を達成し、その後の世界選手権でもトップ20に入ることができました。
受験勉強については、高校2年生の冬から勉強時間を増やして受験に専念しました。海外のレースでは英語を使う機会も多いし、英語を話せたらかっこいいなと思っていたので、英語は昔から勉強していましたね。好きな洋楽の歌詞を和訳したり、学校で習った言葉を海外で使ってみたり。物怖じせずに英語で発言する力は今も役立っています。

慶應義塾大学理工学部を選んだ理由を教えてください。

ラジコンも含めて昔からものづくりや実験といった理系科目が好きだったこと、エンジニアという職業に憧れを感じて、工学系の勉強がしたいと考えました。慶應義塾大学を志望したきっかけは、オープンキャンパスや矢上祭で活気あふれる学生の姿を見て、この環境で4年間を過ごしてみたいと思ったことです。理工学部には落ち着いたイメージを抱いていたのですが、矢上祭で活躍する様子やキラキラとした雰囲気を肌で感じましたし、憧れました。建物がキレイなところにも魅力を感じました。

入学前と入学後で慶應義塾大学のイメージは変わりましたか

入学前は学部間の交流は少ないだろうと思っていましたが、想像していたよりも多種多様な人と交流できる環境でした。大学1、2年時は多くの学部が日吉キャンパスに通いますし【※1】、サークルや部活動も非常に活発で、理系だけでなく文系の友人もたくさんできました。ウィンドサーフィンの大会で好成績を収めている人、一人乗り飛行機を作っている人、ダンスがずば抜けてうまい人など、学部を超えたいろんな人との出会いから今まで知らなかった世界を知って刺激を受けました。大学は勉強する場ではありますが、出会いも大切だと思います。

【※1】慶應義塾大学では、10学部のうち、文学部・医学部・薬学部の1年生と経済学部・法学部・商学部・理工学部の1・2年生が日吉キャンパスに通学します。一方、理工学部の3・4年生と理工学研究科の大学院生が通学する矢上キャンパスは、日吉キャンパスから谷一つ隔てた高台にある理工学部独自のキャンパスです。

最先端技術に触れながら
幅広い知識を身につけ、
社会で応用する力を蓄える。

システムデザイン工学科の特徴やメリットはどんなところにありますか?

システムデザイン工学科はひとつの分野を突き詰めるよりも、ものづくり技術から情報、建築、制御など、いろんな分野を横断しながら複合的に学べる学科です。さまざまな角度から物事を捉えられるし、幅広い知識を応用して新しい価値を創造する力がつきます。
また、研究と社会のニーズが結びつきやすい分野だと思うので、実社会で使われている技術を研究する教員が多く、2年生から最先端の技術に触れられます。いろんな企業の方が講演してくださる授業もあり、外部からの情報も豊富に入ってきて、実用的なことを学んでいる実感がありました。4年生から本格的に研究に取り組みますが、私が所属する研究室では教授だけでなく大学院生からのサポートも厚く、企業との産学連携の研究も盛んです。
入学前はどんな研究をしたいか想像できなかったのですが、システムデザイン工学科は自分の気づいていない可能性や本当にやりたいことが見つかる場です。「学門制【※2】」にも言えることですが、入学後に進みたい道を探せることは大きなメリットです。

【※2】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。

学生生活の中で、研究以外に打ち込んだことはなんですか?

競技ラジコンのレース活動を継続し、企業のチームに所属して、世界選手権優勝を目指してきました。在学期間中に全日本選手権では通算7度の日本一を達成、4度日本代表として世界選手権に参加しました。2019年は惜しくも世界選手権優勝は成し遂げられませんでしたが、世界3位を獲得することができました。また、矢上祭【※3】の実行委員として得意分野であるラジコンの企画を担当し、子どもたちに楽しんでもらえるようコース設計や車体整備を行ってきました。
アメリカで航空宇宙関連の学会に参加して帰国し、その2日後には再びアメリカに行って2週間レースをしたりと、研究室にあまりいない時期もありましたが、ラジコンが研究に活きることも多いんです。ラジコンはメンタルが鍛えられるスポーツなので、学会発表などで英語のスピーチをするときも「うまくいかないかも」と思うのではなく、「大丈夫だ」と自分を信じて乗り切ることができました。

【※3】矢上祭…理工学部の3・4年生と理工学研究科の大学院生が通う矢上キャンパスで毎年10月上旬に開催される学園祭。ただし、新型コロナウィルス感染症の影響により、2020年はオンラインで開催されました。

特に思い出に残っている授業はなんですか?

3年生の必修科目である「システムデザイン工学演習」です。興味のあるテーマを選んで演習を行う授業で、私は自立走行車の製作を選び、チームを作って機構設計・回路設計・プログラミングを行いました。テーマは与えられているものの、車体の大きさやモーターの数など、どんなものを作るかは自由でした。自分で考えて、自分で作るというものづくりの体験は、現在取り組んでいる研究の起点になっているように感じます。

新規性の高い研究に取り組み、
自分の納得するまで
突き詰める姿勢を発揮した。

現在取り組んでいる研究テーマについて教えてください。

次世代の製品製造方法として注目を集めている「金属3Dプリンタ」の研究をしています。3Dプリンタは粉末やフィラメントを溶かして固め、層を重ねて造形していく技術です。型を作ったり削る必要がないので、複雑な形状のものを作ったり、多品種少量生産が可能になります。その中でも金属材料を造形できる金属3Dプリンタは、航空宇宙や自動車産業で適用が進められていますが、精度や強度に課題があるため幅広い利用ができていません。
そこで私は精度と強度を両立して高められる新しい金属3Dプリンタそのものを開発しました。3Dプリンタでは、理論上は細かい粉末を使えば細かい層ができて高精度のものを作れるのですが、粉末が細かいとかかる重力も弱く、うまく層になりません。そうした問題を解消できる新しい機構を有する装置の開発に挑戦したんです。
今世の中に存在しないものを作る、という研究だったのでかなり大変でした。矢上キャンパス内にあるマニュファクチュアリングセンター【※4】で装置の製作を行っているのですが、初めて図面を持っていったときに、こんなもの作れないよ、と技術員の方に言われて(笑)。どうしても作りたいんです!と相談しながら試行錯誤して作り上げることができました。何事も中途半端が許せない負けず嫌いな性格なので、卒業まで研究を悔いなくやりたい。成果を後輩に引き継いで、いつかみなさんのもとに届けばすばらしいことなんじゃないかなと思っています。
将来的には、資源が限られた宇宙空間でも繊細な構造の部品を作ったり、自動車のエンジンのギアなど信頼性が求められる部品も欠陥なく作れるようになるといった活用も期待できます。

【※4】マニュファクチュアリングセンター…矢上キャンパス34棟1階を拠点とする主に金属材料加工用の各種工作機械を備えた機械工場です。ここでは機械工学科、システムデザイン工学科の実験、実習と理工学部内の卒論、修論の研究に必要な実験装置、試験片等の制作のサポートをしています。工場の設備は理工学部4年生以上なら、どなたでも利用できます。

現在所属している研究室を選んだ理由を教えてください。

工作機械の技術に興味を持ち、研究室見学に行ったのがきっかけで、柿沼研究室に所属しました。巨大な金属3Dプリンタなど高価な最新設備が整っていることにも惹かれましたが、決め手になったのは研究もスポーツも本気に取り組むという教授の考え方です。研究とラジコンの両立への不安を相談したときに、素晴らしいことだからどちらも頑張りなさい。君ならできるよ、と応援してもらえたんです。
研究室はいろんな知識を持った学生や留学生とディスカッションする機会も多く、とても明るい雰囲気です。みんなAIや切削加工など研究内容はそれぞれ違うのですが、視点の違う意見をもらえるので面白いし、気づきがありました。慶應義塾大学理工学部は人も設備も充実していて、スペシャリストの教授の下で学べる恵まれた環境だと思います。

今後はどのような進路に進む予定でしょうか?

研究生活で得た経験を活かして、製品開発の技術者として就職予定です。研究生活で装置を設計しながら機構や回路、プログラミングなど幅広い技術について学ぶことができたので、小さくても自分がすべてに関われて、新しいものを作っていきたいと考えたんです。1つの技術を極めてスペシャリストになるよりも、さまざまな製品や人と関わりながら、社会や環境など全体を俯瞰してシステムをデザインできる技術者として成長していきたいと思っています。

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