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生命情報学科(基礎理工学専攻 修士課程1年【※】)

千葉県・私立東邦大学付属東邦高等学校出身

高校時代は勉強一筋。友達よりも学業を優先することの多い女子高生でした。慶應義塾大学に入学後は、学門制を通じて子どもの頃から大好きだった生物に関わる生命情報学科の道へ。研究室の教授や先輩と触れ合ううちに、研究はひとりではできないことに気づきます。「点数をとる以外で“優秀な生徒”という意味がわからなかった」と、過去の自分を振り返る彼女。勉学の面だけでなく、考え方や価値観にも少しずつ変化が生まれ、「人間力も学びたい」と現在の研究室を選択。大学での生活において、どんなことを感じ、過ごしていたのでしょうか。

【※】インタビュー時点(2019年7月)の在籍学年です。

好きだから、もっと知りたい。
最終的に自分を動かしたのは、
子どもの頃からの好奇心。

高校生活はどう過ごしていましたか?

勉強を第一に優先していました。受験を意識していたというよりは、学校の定期試験に注力して、毎日自分で決めた量の課題をこなしていました。その日授業で習った範囲はその日のうちに問題集を解いて、できなかった場合は週末に勉強。硬式テニス部にも入っていて週に3、4日は部活があったので、高校時代は勉強と部活で精一杯でした。
進路を決めたのは、学校で文系・理系のどちらかを選択する高校2年生のとき。もともと文理問わず苦手な科目があまりなかったのですが、逆をいえば、ずば抜けて得意な科目もありませんでした。暗記するよりインプットしたものを応用する方が自分に向いていると思い、理系を選びました。昔から生き物が好きで、勉強以外で生物に興味があったのですが、テストで良い点が取れるのは物理でした。自分の好きな分野かまたは得意な分野か、悩んだ挙句点数の取れる物理を専攻することにしました。

“勉強以外で生物が好きだった”というのは?

子どもの頃から生物全般、とくに魚やイルカなどの海洋生物に興味がありました。幼い頃、両親にきれいな海に連れていってもらった経験があって、魚を見る機会が多かったんです。日常生活でも鯉や金魚を見つけると、大人に止められるまでずっとエサをあげている子でした(笑)。生物と関わるには獣医や水族館の飼育員など、いろいろな職種がありますよね。でも私の場合は、既存の知識を習得して対応する仕事に就きたいというよりも、「生物についてこんなに好きだからこそ、もっと知りたい」「理解したい」という気持ちが大きかったと思います。

慶應義塾大学を選んだ理由は何ですか?

幼少期から好きだった生物を学ぶか、高校時代に勉強していた物理や化学を究めていくか。高校生の時点ではどちらに興味があるのか自分でもわからず、絞りきれませんでした。また、高校水準の知識では判断材料が少なく、その状態で将来の進路を決定することに不安も感じていました。他大学では入学時に学科を決めなくてはいけなかったのですが、大学でより幅広い知識を身につけてから進路を選ぶことができる「学門制【※1】」がある慶應義塾大学理工学部には大きな魅力を感じました。

【※1】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。

苦手なことも好きになる。
大学に入ってから気づいた
いままでとは違う、私。

入学前と入学後で慶應義塾大学の印象は変わりましたか?

入学前は、とにかく華やかなイメージでしたね(笑)。ファッションにも気を使っていて、賢いだけではなく外見もきれいな学生が大勢いると思っていました。実際に入学してみて、華やかな人は多いとは思いましたが、それ以上に、学生のコミュニケーション能力の高さを感じています。具体的には、普段の会話の中で自然に笑いを誘うことができる人が多くて、勉強以外の部分でも周囲の人のコミュニケーションの取り方は非常に参考になります。

大学に入って、自分自身に変化はありましたか?

「試験で点数が取れることが優秀なのではなく、研究における優秀とはどのような能力なのか」と考えるようになりました。研究室の教授はとにかくコミュニケーション能力が高く、研究者としてはもちろん、その対人術というか、人間的な部分も尊敬しています。その先生を見ていて、人との接し方ひとつで研究の成果や生産性が変わることや、人とのつながりがあるからこそ始まる研究があるということを知りました。高校時代の私は、勉強と友達との約束だと、圧倒的に勉強を優先していましたからね。当時は「勉強するからごめん」と誘いを断ることが多かったのですが、今はなるべく、研究以外の時間も友達と話す時間を持つようにしています。研究室では勉強だけでなく、人間的なことも学んでいると思います。

徹底的に自分の興味を追求して、
そこで解明できたことが
社会貢献につながれば嬉しい。

現在、どんなテーマの研究に取り組んでいるのですか?

私はホヤという生物を用いて、「ホヤの変態に関わる分子シグナル機構の解明」というテーマで研究をしています。ホヤは脊索動物で、ヒトに近い生物種。一方で、ヒトよりも簡単な構造でできているので、ホヤを用いて研究することで、複雑すぎて解明が困難なヒトの生命現象を明らかにできるのではないかと考えています。その中で、特に私が注目しているのが変態という現象。ホヤはオタマジャクシのように、子どもから大人になる過程で変態します。私はこれがヒトの二次性徴にあたると考え、ホヤの変態を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めています。
私がしているのは基礎研究なのであくまで仮の話ですが、もし今後ホヤの二次性徴にあたる現象が解明できて、それを誰かがさらに研究をしてヒトへ応用ができるようになったら、心とからだの性が一致していない問題を抱えている人のメカニズムの解析につながるかもしれません。性について注目が集まる現代において、その現象を明らかにすることは意味のあることだと思うんです。

授業や研究で、とくに思い出に残っているエピソードを教えてください。

学部3年生のときの「生命現象の物理学」という講義の課題は強く印象に残っています。課題レポートの内容が難しく、約1カ月、毎日課題の内容を考えていました。いくつかのテーマから1つ選んでそれについてレポートを書くのですが、私が選んだトピックは物理的な手法を用いて生命現象を明らかにする実験を考えるというもの。実験を考えるためにはこれまでに何がわかっていないかという背景から調べる必要があり、論文を読み慣れていない当時はその作業だけで大変でしたね。また、生物学に加えて物理学の知識も必要だったので本当に苦労が多く、考えていることが妥当であるかという確証がない状態で考えを進めるつらさを感じました。そのぶんレポートが完成したときの達成感は大きく、自分が成長できる良い経験になったと思います。

生命情報学科を選んだことを、振り返ってみてどう感じますか?

学部4年生が一番楽しかったです。というのも3年生まではインプットの時間で、研究が始まったのが4年生だったので。この時「ようやく自分がやりたい研究に挑戦できる!」と楽しくて仕方なかったですね。実際に始めた研究は本当におもしろくて、大学院への進学に迷いはありませんでした。
もし生命情報学科への進学に興味をもっている人がいたら、中学や高校で生物の授業を履修していなくてもまったく問題がないということはお伝えしたいです。私自身、高校時代は生物を履修していません。これは生物以外の授業にもいえることなのですが、大学で学ぶ専門的な授業の前に、「高校でも習うような基礎的な内容から教えてくれるカリキュラムになっている」と私は感じました。これも慶應義塾大学の「学門制」の良いところだと思います。

修士課程修了後の進路や目標を教えてください。

後期博士課程への進学か、就職かで考えている最中です。この選択については学部3年生のときから考えてきましたが、いまだに決められていません。企業での研究職となると、やはり利益を求めるための研究になるので、自分の興味のままに研究できるという意味では後期博士課程への進学にすごく惹かれています。ただ、経済的に独立し、早く社会に出たいという気持ちもあるので、企業への就職も視野に入れています。就職する場合には、大学で学んだ専門知識を直接生かせるような生命科学分野の職、たとえば創薬メーカーや化粧品、食品関係に就きたいですね。

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