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生命情報学科(基礎理工学専攻 修士課程2年【※】)

千葉県・私立渋谷教育学園幕張高等学校出身

充実した高校生活を過ごしながら、メリハリをつけて続けた受験勉強。慶應義塾大学に入学し生命情報学科に進んだ後も、常に自身の内面を見つめ、その実現に最適な方法を模索し、ビジネスコンテストへの出場などにも積極的に取り組みました。研究室はバイオ分子化学に関わる「佐藤研究室」を選択。子供の遺伝病を早く見つけるための分析法の研究に挑みました。卒業後の就職は、経営に関わる仕事。あえて専門特化しないことで、より柔軟な立場から日本社会に貢献できる道を選びました。

【※】インタビュー時点(2017年11月)の在籍学年です。

高校生活を楽しみながら
幼い頃から興味があった
生物・化学の分野へ。

高校時代、受験に向けてどのように勉強に取り組みましたか?

中高一貫の進学校ではありましたが、高校三年生時の学園祭に一番力を入れるような校風。勉強一色になるよりも、しっかりと高校生活を楽しんだ上で、勉強もがんばろうというスタンスでした。ただし、やはり高校2年の頃に中だるみの危機感を覚え、本腰を入れて勉強に取り組んだことを覚えています。

理系を選択したきっかけはありますか?

生物や化学が好きだったので、文系は考えもしませんでした。ひとつの要素として、カメ、クワガタ、カブトムシなど、幼い頃からいつも何かしらの生き物を飼っていましたので、その世話を通して理系科目に惹かれたのだと思います。また、中学の授業で、初歩ではありますが化学の面白さをシステマティックに学べたことも、現在の興味につながっていると思います。

慶應義塾大学を選んだ理由を教えてください。

高校生の頃の夢は医学部に行って、臨床医ではなく研究医になることでした。しかし家庭の事情もあって私大の医学部というのも難しかったため、生物の研究ができるところを探して慶應の「学門3」に入学を決めました。ずっと医学部を目指していてその夢がなくなってしまった時、すぐに進路を決めるよりは改めて考え直す時間が欲しかったので、専門分野の決断を後伸ばしにできる学門制は魅力でした。

かねてから思い描いた
医療分野への憧れを
形にする生命情報学科。

生命情報学科を選択した時は、もう迷いはありませんでしたか?

医療に関わる分野を研究したいという夢は変わらずにありましたが、他の学科に進むかどうかで迷いました。そこで他学科の教員にアポイントを取って研究室を見せていただき、悩んでいることを伝えました。すると「この学科は別の領域に軸足があり、その周辺に医療がある。それは必ずしも君のやりたいことではないよ」と指摘してもらい、それが生命情報学科を選ぶ決め手になりました。こちらの学科は、生命に軸足を置きつつ、診断、製薬をはじめ、様々な分野があります。ここならばもし仮に研究室が希望通りにいかなくても、やりたいことの本質は守れると思いました。

学部時代の講義で印象に残っていることはありますか?

生化学、細胞生物学という講義を受けるのですが、それを自分自身に当てはめる面白さがありました。たとえば最近筋トレにはまっているのですが、トレーニングをする時に今までだったら「本にこう書いてあるから、こうした方が良い」となったと思います。ところが講義で学んでからは、「こういうシグナル経路でここで栄養素の取り込みが上がる」などと考えられますので、そういうところで役立っていると思います。かなり狭い範囲の話ではありますが(笑)

大学院への進学は既定路線だったのですか?

実はここでもかなり迷いました。というのも自分は大学以外にビジネスコンテストやビジネスプロジェクトにも参加していたので、早く社会に出てみたいという思いが強かったんです。しかし一方では、昔から続く研究者への憧れもある。ならばなぜ進学にしたかというと、それは「今判断するべきではない」という思いからです。学部4年次と修士課程でしっかりと研究を続け、その上で就活に臨めば、ビジネスと研究の両方をしっかりと理解した上で進路を選べる。それは、いま焦るよりも良い結果につながるだろう、と。結果としてその判断は正しかったと思っています。

研究経験を活かしつつ
ビジネスの立場から
自らの興味を掘り下げる。

現在の研究内容を教えてください。

端的に言えば子供の遺伝病を早く見つけるための研究です。病気というのは、感染症のようにすぐに症状が出ればわかるのですが、進行性疾患といって生まれた時には変化がなく、成長とともに悪化するタイプのものもあります。医師による初期の検診では健康な子供と、実は病気だけれどまだ症状の出ていない子供の区別ができないのです。しかし実際に症状が出てからでは手遅れになりかねません。そこで生まれたばかりの赤ちゃんの血をもらい、そこから将来的に発症する可能性のある病気を見出す分析法を研究しています。最近は月に一回、自分の血を抜いて、それをサンプルにして測定するような実験もしています。

難しい研究のようですが、やりがいはどんなところにありますか?

病院の外部研究としての扱いのため、いわば医学連携の研究。その協調が難しさであり、力になる部分でもあります。というのも理工学部の先生方は、メカニズムや過程を大切にします。一方で臨床の先生方は実際に患者さんを治すという結果を重視する傾向があります。それぞれの立場の先生方がいますから、視点や指示が異なることも多いです。そのなかで自分で考えながら、自らの論文を完結させることが必要です。時間はかかりますが、さまざまな意見を聞けることは非常にありがたいと思っています。

学部時代と現在とで意識の変化はありますか?

はっきりとした違いがひとつあります。それは学部時代の講義には答えがあり、研究にはそれがないという点です。誰かが「これはなぜ?」と聞いてくる試験とは違い、研究では自分で「なぜだろう?」と思わなくてはなりません。だから学部で優秀だった人が必ずしも研究がうまいわけではありませんし、学部で単位を落とし続けた人が、研究で素晴らしい結果を残すこともある。使う思考回路がまったく別物なのです。

就職は決まっているとのことですが、そこに決めた理由を教えてください。

これまでの研究とは直接つながるわけではないですが、経営に関わる仕事に就くことが決まっています。それはより柔軟な立場で、仕事に関わりたいと思ったためです。たとえば日本の医療に貢献したいと思った時、もちろん専門家や研究者の存在は必要です。しかしビジネスの視点からであれば、チャンスがある領域、同じ医療でも力を入れるべき領域を、自分の目で確かめて自分の力で伸ばすことができます。もしもダメならその経験を活かしてほかの分野に移ることもあるでしょう。つまり手法や分野を変えながら、その時に一番やりたいことを追求していけるのです。終身雇用の安定という考えの対極に位置する立場ですが、挑戦を続けていきたいと思っています。

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