Profile

応用化学科(総合デザイン工学専攻 修士課程1年【※】)

千葉県・私立東邦大学付属東邦高等学校出身

中学生の頃から、文系科目よりも理系科目が得意。問題を解き明かした時の達成感が好き。自分が進むべき道として慶應義塾大学理工学部応用化学科を選びました。その選択は、彼女の視野を広げ、大きな変化と成長をもたらしたといいます。「ただ答えを受け入れるのではなく、何が問題で何が必要か、自分でしっかり考察するようになった」と笑顔で話す彼女。そんな気づきを与えた大学の学びの奥深さとは。そこにはどんな刺激的な出会いがあったのでしょうか。

【※】インタビュー時点(2018年9月)の在籍学年です。

仲間に恵まれた高校時代。
互いに高め合いながら、
楽器演奏の練習に励む日々。

高校生活で一番心に残っている思い出とは?

部活の仲間と一緒に文化祭での野外演奏や定期演奏会を成功させたことです。私はオーケストラ部に所属していて、高1でトランペット、高2ではホルンを吹いていました。トランペットを始めたのは、野球好きの父にマリンスタジアムに連れて行かれ、そこで聞いた応援団のトランペットに憧れたのがきっかけです。練習は結構ハードでしたね。平日の朝と昼に自主練、放課後は週3回の合奏やパート練習があって。高2では部長を務め、顧問の先生によく怒られていましたが、オケ部の友達とはすごく気が合って「もっとこうした方が良くない?」なんて、お互いを高め合っていくのが好きでしたね。最後の演奏会では、私のホルンソロが3分くらいあって、やりきった時は緊張と感動で泣いちゃいました。忘れられない思い出です(笑)。

高校時代から理工学部を目指していたのでしょうか?

中学の頃から、文系よりも理系の方が得意で、暗記するより自分で考えて問題を解くほうが好きで。筋道を立てながら計算して、問題が解けた時は楽しいし、達成感があります。高校も理系の学校で、理系に進む女子が多かったので、抵抗なく理系大学への進学を決めましたね。化学の先生の授業が1番好きだったので、応用化学に進もうかなと漠然と考えていました。理系には医学部や薬学部という選択もありますが、血を見るのがあまり得意ではなかったので (笑)。

研究室で、サークルで
気づきをくれる人たちと出会い
自分の意識が変わった。

慶應義塾大学について、どのように知りましたか?

WEBサイトで学科や教育制度、入試情報などを調べました。オープンキャンパスにも行きました。先輩方が結構話しかけてくれたり、どこに行ったらいいのか迷っていたら案内してくれたり、みなさん親切でしたね。オープンキャンパスでは研究室見学ツアーにも参加して、管理工学科とシステムデザイン工学科の研究室を見に行きました。管理工学科の研究室では “世の中のお金がどうまわっているか”という話をしていて、「経済学部のようなこともやっているんだな」と思ったのを覚えています。

慶應義塾大学の理工学部を選んだ理由とは?

漠然と応用化学科に進むことは考えていたのですが、自分が本当に化学を勉強したいのか確信が持てなかったので、学部2年生で行きたい学科を選択できる慶應義塾大学を選びました。実は、他大学も受かっていたのですが、最初から学科を決めないといけなかったので…。応用化学科以外での自分の可能性も探ってみたかったし、「学門制」【※】のある慶應義塾大学に決めました。



【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する制度のこと。

入学前と入学後で大学の印象は変わりましたか?

クイズ番組などで慶應出身の芸能人をよく見るので「美男美女でクレバーな人がいっぱいいる」「キラキラした人が通っている」というイメージでした(笑)。実際に入学して思ったのは、自分の考えをしっかり持っている人が多いということですね。研究室の同期もみな頭が良くて、よく自分の研究データを見てもらうんですが、「ここは何でこうなの?」って私が気づかなかったことを指摘してくれたり、「その考え、違うんじゃない?」って一緒に考えてくれたり。自分にない考えを与えてくれるので、いい刺激になっています。それは、サークルでも同様で。みんな自分の考えをしっかり持って活動に打ち込んでいると感じます。

大学では何のサークルに入ったのですか?

学部生の時にオーケストラサークルに所属していました。大学のサークルは高校とは違っていて、最初はとまどいましたね。高校では指揮者の先生の指導に従えば良かったけれど、大学は学生だけの練習が多く、自分の考えを持っていないとうまく表現ができないんですよ。サークルの同期に、びっくりするくらい楽器が上手い人がいて、「自分のパートはどんな役割を果たしていて、どんな風に演奏すべきか」「どんな練習をしたらうまく演奏できるか」ということを考えながら演奏しているんです。その人の影響で、自分の音楽に対する向き合い方も変わりましたね。それまでは、譜面の音を外さず、出番がきたら吹けばいい、という感じでしたが、ちゃんと周りの音を聞きながら自分で考えて演奏するようになりました。

自分で意識的に考察して、
実験に取り組む姿勢を
身に付けることができた。

現在の研究テーマとは。どんなことを行なっているのですか?

無機蛍光体を使い、H2O2(過酸化水素)を検出するセンサーの開発に取り組んでいます。「蛍光体」とは、外部からのエネルギーを光に変換する物質で、照明機器LEDにも利用されています。「過酸化水素」は、殺菌剤などに使われる、ちょっと危険な物質です。この過酸化水素の溶液に蛍光体を浸すと相互作用を起こし、蛍光体が光らなくなるんです。この作用を研究で活用し、過酸化水素の濃度を検出できるような素材の開発を目指しています。今は蛍光体の粒子の形を変えることで過酸化水素への応答性を上げていく…というような研究をやっています。

蛍光体は、高校の頃から知っていたし、無機化学にも興味があったので、今はやりたかったことが結構やれているなと感じています。何より所属している研究室が自分に合っている。教員も優しく、先輩も同期も後輩も優秀で最高です。この研究室に入って良かったなと(笑)。

無機化学の他にはどのようなことを学びましたか?

応用化学科は、幅広い分野の授業を開講しているので、自分で興味のある分野をいろいろ選択できます。私の場合、無機分野中心でしたが、他分野も学んでおけば今後の研究室生活に活かせると思い、有機化学や高分子化学、生物化学なども受講しました。必要な単位数に関係なく、とりあえず開講されているものは全部受けたという感じですね。有機化学に興味を持っていた友達は有機を中心に受けていましたし、個人個人に合ったスタイルで学ぶことができるのはすごく良いことだと思います。

面白かった授業や印象に残った授業は?

「マテリアル科学1」と「マテリアル科学3」です。固体の物性や機能材料について学ぶ授業なんですが、授業の後半に行う演習がとにかく難しくて、友達と相談しながら授業が終わるぎりぎりまで悪戦苦闘したのを覚えています。問題が毎回違っていて、全員が「こんなのやってない!」って(笑)。過去問学習が通用しないんですよ。でもそれが面白くて。思考することを学ぶ授業だったと思っています。あとは、やっぱり実験ですね。レポートは大変でしたが、実際に溶液を調製したり、分析機器を操作したりするのは楽しかったです。ある日、試薬ビンのふたの部分を持ち上げて取ろうとして、教員にキツく怒られたこともありましたね。「試薬ビンが倒れたらどうする!もし塩酸だったら大惨事になるぞ」って。実験を行う上での基本もしっかり身に付けることができたのは良かったです。

大学での学びで習得したこととは何でしょうか?

以前の私は、「この答えはこうなる」と言われたら、なぜそうなるのかをあまり考えずに受け入れてしまっていて。それで、いざ自分の口で説明するとなると口ごもったり、ちゃんと理解できていなかったと痛感することが多かった。でも研究室に入ってから、周りの影響もあって自分で意識的になぜそうなるかを考えるようになったと感じています。ただ闇雲に実験するのではなく、何が問題で、解決にはどんな実験が必要か、とか。しっかり考察して取り組むようになれたのは、自分にとって大きいですね。

今後の進路や目標について、どのように考えていますか?

正直なところ、進路について具体的なビジョンはまだ描けていません。でも、やっぱり理系の研究職に就きたいかな、とは思っています。化学メーカーのインターンに参加した時、その企業では自分のやりたいことをやっているイメージがあって「いいな」と思いましたし。自分の研究テーマに沿ったところに行くかどうかはまだわからないですが、ただ言えるのは、化学系の職に就くにしても、そうでないにしても、これまで研究室で学んできた経験は、どこに出ても活かせるということ。自分の考えを持つことの大切さを意識し、実験に取り組んで行きたいと思います。それから、人前で堂々自分の考えを話せるようになることも目標です。私は、かなりのあがり症で。研究室に入りたての頃は、発表のたびに緊張で泣いていたので(笑)、これからさらに研究室内での発表や学会での発表をたくさん経験し、しっかり話せるよう努力していきたいと思っています。

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