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管理工学科(開放環境科学専攻 修士課程1年【※】)

米国・Novi High School出身

小学3年生から高校卒業までを海外で過ごし、大学入学を機に日本へ帰国。幼い頃から興味のあった航空管制に関わる学びを深めるために、慶應義塾大学理工学部への進学を決めました。部活では體育會航空部に所属し、パイロットの資格を取得。さらにグライダーの操縦や管制を経験したことで、研究にも役立てています。高校時代から勉強熱心だった彼が、大学で学ぶことで身につけたものとは何だったのでしょうか。

【※】インタビュー時点(2020年11月)の在籍学年です。

いままでと違う世界を
見たり聞いたりしてみたい。
海外から日本の大学へ。

高校卒業まで海外で過ごされていたそうですが、どんな学生生活でしたか?

父の仕事の都合で、小学3年生から高校卒業までの10年間をアメリカで過ごしました。高校では部活はせずに、勉強に集中している学生でしたね。アメリカの高校のシステムは日本とは少し異なり、大学のように自分で好きな授業を組んで受講することができます。数学・物理・化学といった理数系科目は難易度の高いコースを選択していたので、ときには勉強が難しい面もありました。放課後は、近所にあった日本人向けの塾に通って大学受験対策もしていたので、その両立も忙しかったですね。気分転換したいときは、趣味でもある自転車に乗って、公園や森など自然が多い場所に行っていました。また、小学生のときに航空管制官の方に会う機会があり、それ以降は航空、特に航空管制に興味を持つようになりました。空港へ行って飛行機の写真を撮ったり、航空ショーへ行ったりすることも好きな時間でした。

海外の大学ではなく、日本の大学を選んだ理由は?

将来の進路を考えたときに、このままアメリカの大学に進んで就職活動をしたら、人生のほとんどを海外で暮らすことになるだろうと思って……。一度日本に帰国して、異なる世界を経験し、その先を考えたいなと思ったのがきっかけです。アメリカの学校は9月が新学期の区切りになるので、普通に卒業してから日本に帰国すると1学年ずれてしまいます。そうならないために、飛び級をして1年早く高校を卒業しました。実は中学3年生で一時帰国した際に、まだ進路のこともよくわからないまま、慶應義塾大学のオープンキャンパスに足を運んだこともあります(笑)。海外だと日本人に限らず、大学や就職を見据えて勉強をしたりボランティア活動をしたりしている人が多かったので、早めに受験準備を始めたのはその影響も少なからずあったのではないでしょうか。

帰国生対象入学試験を受験するにあたり、どんな手順を踏みましたか?

入試は第1次選考と第2次選考があり、第1次選考ではアメリカ版のセンター試験のようなSAT(Scholastic Assessment Test/大学能力評価試験)やTOEFL® iBTのスコアのほか、自分の通っていた高校の成績表、志望理由書などを提出しました。SATのほかに「SAT Subject Tests」と呼ばれる科目別のテストもあったのですが、こちらは年に数回受験の機会があり、5分野・20科目の中から、一回の試験で最高3つまでを受験できます。僕は数学・物理・化学の3つを受けました。当時はテストでいい成績を取りたいという気持ちがかなり強かったので(笑)、いいスコアは用意できていました。それと、推薦状も別途提出が求められたので、自分をよく知る2名の先生にお願いしました。2次選考は参考小論文と口頭試問もあったと記憶しています。

理系分野以外でも
幅広い知識を蓄えていく。
友人からも学びの多い学生生活。

理工学部、さらに管理工学科を選んだ理由を教えてください。

アメリカの高校では文理が分かれておらず、高校生までは特に得意な科目がなかったので、どちらに進むかは非常に迷いました。そのなかで理系を選んだのは、中学3年生のときに通っていた塾の数学の先生の存在があったからです。教科書に出てくる公式の証明や応用例を丁寧に説明してくださり、ただ練習問題を解くだけではわからなかった、理論の本質やその応用を理解することに面白さを感じました。大学でも数学で何かをやってみたいと思い、いろいろな大学の数学系の学部の情報を調べていましたが、たまたま見た慶應義塾大学理工学部管理工学科のページを見て、これだ!と思うものがあって。自分がやりたいのは数学などの工学知識を使って、社会や、好きな航空の分野に役立てることだと気づきました。また、航空の中でも特に、人間が中心にいる航空管制に興味を持っていたこともあり、人間・もの・情報・金を取り扱っていて、それらの学問と現実社会との繋がりを最も感じた管理工学科へ行きたいと思いました。

実際に入学してみて、管理工学科の印象は?

管理工学科は1学年の人数が少ないので、皆がお互いに仲良く教え合ったり助け合ったりしているのは特徴的です。また、研究以外の勉強や、バイトや遊びなどのプライベートなども全力で目標を達成するために、細かくスケジュールを決めてやりくりしている要領のいい人が多いです。皆忙しそうにしていますが、それは皆どれも手を抜かずにやり切りたいと考えているからだと思います。そのためか、知識が豊富な人が多い印象もあります。管理工学科は数学や統計などの理系分野だけではなく、心理学や経済学などの文系分野や文理以外のまったく異なる分野も取り扱う場合もあるので、自分や周りの人が持っている異分野の知識が役に立つ場合もあります。そのような一見関係なさそうな情報が、意外とお互いの研究のヒントになったりもしています。

サークルなど、学生生活で打ち込んだことがあれば教えてください。

学部生のときは體育會航空部に所属していました。この部活動では、部員全員がパイロットとして活動しており、グライダーというエンジンのない、気流の力のみで飛行する航空機の操縦を行います。もちろん、免許も必要ですので、最初は仮免許のようなもので練習を行い、学部2年生の秋にはパイロットの免許も取得しました。また、グライダーの取り扱いや運航も基本的にすべて学生が行うので、整備から管制までを経験することができます。学部4年生は、パイロットや選手としてではなく、地上から無線でグライダーに離着陸の情報を伝えたりする運航側として活動をしていました。もともと航空管制に興味を持っていたこともあり、このときが1番楽しかったですね。滑走路の状況や、気象、風の様子などさまざまな条件を見ながら安全に飛べるようにサポートをすることに喜びを感じましたし、この経験は現在の研究に繋がっていると思います。

経験が研究につながる。
分析した工学知識を通して
いつか社会に役立てたい。

現在、どのような研究テーマに取り組んでいますか?

ヒューマンファクター(人間の行動特性)の観点から航空管制業務を分析し、人間中心設計を通してより安全かつ効率的な航空管制システムを提案する研究をしています。もともと航空管制において人間と機械がどのように助け合い、システムとしてうまく共存できるかということに興味があり、自分が部活動を通して感じたことがベースになっています。一般的な旅客機とは違い、グライダーは整備も管制も操縦もすベて人間が中心で制御しています。そのため、パイロットも運航している人も整備している人も、その都度コツや工夫を駆使しながら柔軟に意思決定をして、安全や効率を達成しています。しかしそれらを、効率だけを重視して単純に自動化してしまうと、これまで行ってきた柔軟な行動が失われてしまうのではないかと考えたのが、僕の研究のはじまりです。将来的には航空管制だけに限らず、医療や鉄道など幅広い分野で活用できるのではないかと思っています。

授業や実習で思い出に残っているエピソードはありますか?

学部3年生のときに「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)」を取り扱う授業(管理工学実験・演習I)があり、眼鏡型のウェアラブル端末を用いて実験・計測をしたことです。ゴーグルをかけるとそこに絵や文字が出てくるようになっていて、近未来的な装置を使った実験でとても面白かったです。管理工学科にはユニークな装置が充実していて、額につけた装置で脳の活動量を測ったり、人間の視点を追う装置で視線計測を行ったりもできます。研究室には小型機用の本格的なフライトシミュレーターがあり、研究室の学生はいつでもそれを使えるというのも魅力でした。また、研究室に入る前によく中西教授のところへ話を聞きに行っていたことがきっかけで、羽田空港の視察に連れていっていただいたことがありました。普段は入れない、管制塔や駐機場などの制限区域含め空港を一周し、現場で働いていた方々のお話も聞くことができ、大変貴重な経験をすることができました。

修士課程修了後の進路や目標を教えてください。

もちろん自分の専門分野や知識が活かせる職業も魅力的に感じていますが、現在考えているのは、インフラやメーカー、IT業界です。最終的にはサービスや研究・開発を通して社会や人々を支えることができる職業に就きたいです。また、学部生のときは研究職や技術職にはさほど興味がなかったのですが、自分の研究を進めたり、学会でさまざまな方と交流したり、研究・開発系のインターンシップに参加したりするうちに、興味を持つようになりました。今年は新型コロナウイルスの影響で、アメリカで開催される国際学会で発表する予定がオンラインになってしまったり、航空会社のインターシップの募集がなかったりと残念なこともありました。その一方、オンライン発表で高く評価していただけたり、自分のテーマと似ている課題を持っている鉄道会社でのインターンシップが経験できたりと、嬉しいことも経験できた1年だったと思います。

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