Profile

管理工学科(開放環境科学専攻 修士課程1年【※】)

千葉県・県立千葉高等学校出身

昔から興味があるのは数字とスポーツでした。なかでも駅伝を見ながらタイムやコースを計算するという自分なりの楽しみ方で、少年時代は数字と触れ合っていました。高校生になって、数学・統計学の理論を社会につなげる管理工学に惹かれたのは、偶然とは言えません。現在は山田研究室で、品質管理に関わる統計的手法を学ぶ日ですが、研究の合間には、陸上同好会に顔を出して気分転換の時間も楽しんでいます。入学時には「将来なにがやりたいかわからなかった」と話す彼が、修士課程1年生となった今、描いているビジョンとは。

【※】インタビュー時点(2019年7月)の在籍学年です。

「好きなこと」を模索する日々。
自らの興味のアンテナと、
周囲の意見の先で見出した進路。

高校生活はどう過ごしていましたか?

高校3年生の5月に引退するまで、部活中心の生活でした。陸上部に入っていて、800mと1500mを中心に中距離走に取り組んでいました。高校2年生のときから週1回は塾へ通っていましたが、当時はまだ受験なんて意識していませんでしたね。高校も自由な雰囲気だったので、受験について熱心に指導されることもあまりなくて。にぎやかなクラスメイトたちと毎日休み時間に談笑したり、文化祭や体育祭の行事に全力で取り組んだりと毎日を楽しく過ごしていました。

受験勉強はどうしていましたか?

進路について真剣に考え始めたのは、部活を引退した後の高校3年生の夏ごろからでした。それまで本腰を入れて受験勉強をしていなかったので、「やらなきゃいけないことが意外と多い。これはヤバいぞ…」と現実に直面して、急に焦りました。それからは平日の夕方以降と土日は受験勉強に集中。いま改めて振り返ると、高校2年生ぐらいから受験勉強をスタートしておけばと正直後悔をしています(笑)。

理系に進もうと思った理由を教えてください。

「理系に進んで将来何かしたい!」という高い志は実はあまりなく、国語も英語も苦手だしな……という消去法が理由の一つでした。もう一つは、子どものころから算数が好きだったからです。とくに、スポーツ観戦をしながら、選手のタイムを計算したり数字を絡めて考えたりすることが好きな子どもでした。幼いころ、父に箱根駅伝に連れて行ってもらったことがあって、そこで駅伝のおもしろさに惹きつけられたんです。以来、いまでも箱根駅伝を観るときは事前にガイドブックを買って、そこに掲載されている選手一人ひとりのコースごとのタイムやウィークポイント、強みなどのデータを元に計算して、予測しながら観戦します。ほかに陸上や野球などもスポーツは幅広く観ますが、やっぱり数字と絡めて観戦するのが好きですね。

慶應義塾大学理工学部を選んだ理由は何ですか?

数字と向かい合うことは好きでしたが、数学科だと理論や哲学のような話が多く、自分には向いていないと感じていました。実験にも興味が薄く、理科系の学科もピンとこない…。「それらの選択肢以外で、理系だったらなにがいいかな?」と、ともに教職に就いている父と母に相談したところ、「こういう分野もあるよ」と理系にもさまざまな分野があることを教えてもらいました。そこから自分で調べていくうちに、興味をもったのが管理工学と経営工学です。この分野の学科がある学校を受験し、合格したのが慶應義塾大学でした。大学入学時で学科や専攻を決めてしまうのは早いと感じていたので、学部2年時に学科選択できる「学門制【※】」にも魅力を感じましたね。

【※】学門制…入試の時点で5つの「学門」のいずれかを選択し、入学後に自分の興味や関心に応じて徐々に学びたい分野を絞っていき、2年進級時に所属する学科を決定する慶應義塾大学理工学部独自の制度のこと。

大学での垣根を越えた出会い。
さまざまな人との関係が
自分を成長させてくれた。

入学前と入学後で大学の印象は変わりましたか?

テレビなどで取り上げられる華やかな慶應生や、慶應出身のきらきらした女子アナウンサーを見て、自分は慶應の雰囲気には合わないだろうと入学前は思っていました。また野球観戦が趣味だったので、慶應と聞くと六大学野球や、付属高校が強豪校であるという印象もありました。実際に入学してみて、それまでのイメージはだいぶ変わりましたね。理工学部はとくに真面目に勉強や活動に取り組んでいる、落ち着いた雰囲気の学生が多かったです。学部やサークルで様々な考えを持つ学生に出会い、当初は戸惑うこともありましたが、慶應に入ったからこそ、多様な考え方や価値観を持った学生がいることに気づけたと思います。

サークルには入っていますか?

「陸上競技同好会」に所属しています。通常は学部4年生の卒業時に後輩たちに追い出して(笑)もらうのですが、僕は大学院生となった現在もサークルに顔を出し、後輩や大学院生の同期と体を動かしています。競技に打ち込む人だけでなく、趣味で走ったり、体を動かしたりしている人も多く、学年の垣根を越えて仲が良いのも特徴です。休日には卒業した先輩方や現役生の後輩たちと遊びに出かけたり、先輩に勉強や就活の相談に乗ってもらったりして、学年を超えた縦のつながりで関わることができるコミュニティとしても大事な場所です。11月に開催される河口湖の富士山マラソンには、陸上競技同好会の仲間の希望者で集まって毎年参加しています。

管理工学科の特徴を教えてください。

「理系らしくない」とよく言われます。裏付けされている理論は数学的なのですが、理工学部の他学科に比べると社会でより実用的なことが多いと思います。研究範囲は「統計学」「都市工学」「金融工学」「人間工学」「人工知能」など、多岐に渡っていることも大きな特徴です。文系で勉強する内容に、少し近いかもしれません。管理工学科は、これらの様々なことに興味を持つ学生が集まっています。お互い興味のある分野が異なっている中で、同学科の友人とお互いの興味について話すこともおもしろいです。理系だとコツコツと計画立てて実験を行うイメージをもたれやすいですが、どちらかというと要領よく課題をこなしていく学生が多い印象です。

数字やデータで読み解く
品質管理の興味深い世界。
好きなことを突き詰めて、生きていく。

現在、どんなテーマの研究に取り組んでいるのですか?

技術や製品の開発にあたり、「その材料や実験環境をどういう設定にすれば良い製品がつくれるか?」「それをつくるためにはどれくらいのデータを集めて実験すれば良いのか?」など、最適な品質の条件を求めていくのが品質管理です。その品質管理に関わる、統計的手法を学ぶ研究室に所属しています。僕が行っている研究テーマは「ガウス過程回帰による逆推定のコンピュータ実験への適用に関する研究」です。近年は、品質管理のための実験が物理的実験ではなく、コンピュータのシミュレーション実験によるものが増えています。このコンピュータ実験に適用するための、サンプルデータの集め方や統計的な分析手法についての研究を行っています。学部4年時に研究テーマを決める際、野球などのピッチングマシンのシミュレータに興味を持ちました。目標とする軌道を満たすための、ローラーの配置やモータの周波数をどのように設定すればよいか、という題材です。このシミュレータを動かしていくことから派生させて、現在の研究テーマにたどり着きました。

現在所属している研究室を選んだ理由は?

大学入学時から、数学が応用されている分野ということで統計学にとても興味を持っていました。管理工学科に進んだのも、漠然と統計学を学びたいと思っていたからです。研究室を決める時も、応用統計学の分野の中で選ぼうとしていました。学部3年生の秋学期に、山田秀教授の講義で「実験計画法」について学びました。その際に統計手法を用いたサンプルデータの集め方や、品質に大きく関わる因子を見つける解析方法に、とても感銘を受けました。講義の説明がとてもわかりやすかったことも、この研究室を選んだ大きな理由の一つです。

印象に残っている授業や実習はありますか?

管理工学科の学部3年生の時の学習の演習課題やグループ発表で、自分の趣味である野球を題材にして取り組んだことです。多変量解析の演習課題では、当時遊んでいたプロ野球選手を集めてチームをつくるスマホゲームを題材にして、統計ソフトを使って選手の能力値を変数にした解析を行いました。またグループ発表では、自分が応援している千葉ロッテマリーンズの選手の成績を基に、遷移確率を用いて打順組替えの最適化について発表しました。自分の好きなテーマで取り組めたので、解析も結果も、本当におもしろかったです。

研究室の活動で、とくに思い出に残っているエピソードを教えてください。

学部4年生の10月から3月までの毎月5日間、日本科学技術連盟が主催する、社会人向けの品質管理セミナーに学生の書記として参加する機会をいただきました。社会人の方が持ち込んだ品質管理の課題について話し合う、グループディスカッションの機会が印象的でしたね。大学ではどうしても品質管理の理論までしか学べないので、実際の現場ではどういう問題や課題があるのかを肌で感じられて、有意義な時間が過ごせたと思います。また、他大学で経営工学を学ぶ学生も書記として参加していて、彼らとお互いの研究などについて話せたことも、貴重な経験となりました。

修士課程修了後の進路や目標を教えてください。

これから就職活動をしていく上で、いま、まさにどうしようか考えている最中です。いまのところ、IT業界でデータサイエンティストやシステムインテグレーターの職に就きたいと考えていますが、管理工学科で学んだ統計学の知識を少しでも活かせるといいなと思っています。これから夏や秋のインターンシップに参加しながら、就職の希望について、より絞っていければと考えています。また、研究範囲とは少し異なりますが、話題性の高い「機械学習」にも興味を持っているので、就職してからも自分の興味のある分野に関しては勉強していきたいと思っています。

Link

ナビゲーションの始まり