このたびは、「塾員来往」の執筆の機会をいただきまして、このような貴重な機会を与えてくださった関係の先生方に感謝申し上げます。現在は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構で研究開発員として働いています。大学時代は、自分のやりたいことをすべてやりつくすことができた充実した学生生活を過ごすことができたと思っていますので、ご紹介させていただければと思います。

理工学部を選択した動機

私はもともと数学が好きだったこともあり(国語がとても苦手だったこともあり)、なんとなく大学では理系かなとぼんやりと考えていました。高校の特別授業で「宇宙授業」というものがあり、宇宙に関係する様々な領域の人が講師となり講演をしていただく機会がありそこで宇宙って面白そう!と思ったことが宇宙を目指したきっかけです。内部進学(慶應義塾女子高校卒)であったため、事前に理工学部の研究室の見学できる機会があり、そこで出会ったのが高橋研究室でした。ここなら宇宙の勉強ができそうと思い、高橋研究室に入ろうと考え理工学部、そして学問を選択したことを覚えています。

大学時代

体育会

大学に入ってからは、体育会のバレーボール部に渉外副務・主務として所属し、学業との両立に苦しんだのを鮮明に覚えています。1、2年生の時は9時からの授業に出て、18時過ぎからほぼ毎日体育会の練習に行きという生活をしていました。授業と部活の2本柱があったからこそ生活リズムが出来上がっていたのではないかと今では思います。

研究室配属

CanSatプロジェクト@ブラックロック砂漠 (前列左から二人目)

3年生の終わりに研究室配属の面談があり、無事に第一志望であった高橋研究室に配属されました。4年生になると授業は減ったものの、慣れない研究活動と最後の1年となる部活動の両立に苦しみましたがどちらも自分が選んだ楽しいことだったのでやり抜くことができ、卒業論文を書きながら全国大会ベスト8という記録を残すことができました。高橋研究室では有志で模擬人工衛星CanSatプロジェクトの大会に毎年夏に参加しており、それも一つの大きな経験となりました。研究は一人での作業ですがCanSatはチームのメンバーと話し合いをしながら、夜な夜な開発をし実際に作ったCanSatが動いた時の喜びは今でも忘れられません。

修士時代

留学先の友人とのディナー

修士でも学部と同じ人工衛星の姿勢制御の研究を続けるため、高橋研での研究を希望しました。研究とは別に、学部時代からずっと考えていた留学にも挑戦することを決意し、修士1年の夏から約10ヵ月スウェーデンのLinkoping大学に交換留学をしました。慣れない英語での授業、生活面、聞いたこともないスウェーデン語等何もかもが初めてで戸惑うことも多く最初は苦労することばかりでしたが、他の国からの留学生や日本語を学んでいるスウェーデン人との交流を通して今までの自分では考えられなかった視点を得ることができました。休暇には周辺のヨーロッパの国を旅行しいろいろなものに触れる機会もあり、週末には大学の友達とパーティをし、自分の価値観を大きく変えることができた10か月となりました。

帰国後は、また高橋研にもどり宇宙の研究に励みました。留学中に投稿した国際学会@Bostonに参加することができ、各方面でのエキスパートとの意見交換をすることの意義、面白さを学びました。留学を通して、研究に対する取組み方も少し変わったように感じ、積極的に学会、論文投稿を行うこともできました。論文を書くことが苦手でしたが、論文の書き方がなにもわかっていなかった私に対して、一からご指導くださり、研究の楽しさを教えてくださった高橋先生に感謝しています。修士2年の10月に参加した国際宇宙学会@トロントではJAXAの派遣学生としても参加をしましたが、NASAやESAからの派遣できている優秀な学生たちと交流することができ、自身にとってよい刺激となりました。研究だけでなく、課外活動など様々なことに挑戦する機会があり、その経験が今の社会人生活にも役に立っていると感じています。

初の国際学会で高橋先生と訪れたMIT

国際宇宙学会での学生交流(前列浴衣)

大学院学位授与式 研究室のメンバーと

社会人生活

就職活動ではやりたいことが一つに決まらず、最後の最後まで悩みましたが、ものをつくるだけでなく、新しいこと面白いことをしたいという思いからJAXAへの入社を決めました。
ソフトウエアエンジニアリングの研究をする部署に配属され1年ほど経ちましたが、新しいHTV(国際宇宙ステーションへの補給船)の設計に携わったり、NASA/ESAとの交流、海外出張等幅広く仕事をすることができ、日々忙しくも充実した生活を送っています。いつか高橋先生と学会会場で成長した姿を見せられるよう日々頑張りたいと思います。

入社後の研修にて 臼田深宇宙観測所

塾員の先輩である星出宇宙飛行士と

最後に

大学時代はいろいろな事に挑戦し、いろいろな出会いもあり、自分が一番成長した時間だったと思います。高校時代からの「宇宙」というキーワードを社会人までもつなげることができ、色々なチャンスを与えてくれた慶應での大学生活は私にとってかけがえのない財産です。

プロフィール

能美 亜衣(のうみ あい)
(慶應義塾女子高等学校 出身)

2012年3月
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 卒業

2012年8月~2013年6月
スウェーデンLinkoping大学 交換留学

2015年3月
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程 修了

2015年4月
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 入社

ナビゲーションの始まり