「ポストゲノム」の生命科学は、分子・細胞生物学と計算機科学およびその周辺の種々の工学分野を巻き込んだ境界領域の研究パラダイムです。その目的は「生命現象をシステムとして理解する」ことにあり、より具体的には分子・細胞生物学に代表されるような「ウェットバイオロジー」に、情報科学としての「バイオインフォマティクス」の考え方を導入することにより、「システム」として生命を網羅的に理解する視点を導入するものであると考えられます。理工学部・理工学研究科では、医学部、薬学部、湘南藤沢、鶴岡先端生命科学研究所と連携をとりながら、慶應発の新規な生命研究を求めて教育・研究を行ってきました。最近では、慶應義塾は「ポストゲノム」研究の中核的研究機関と位置付けられてきているものと考えられ、この新たな分野の人材の育成に関しても社会的な責任があるものと認識しています。また2002年に新設された理工学部生命情報学科設立の理念である「物質的基盤に基づいた、分子・細胞生物学と計算機科学との融合分野の開拓」を引き継ぎ、大学院における教育・研究を展開します。このような新しい生命科学の理念は広く学内外で受け入れられる様になってきました。

生命科学の分野では、ポストゲノム研究において、ますます国際的な競争力が求められてきています。特に「大規模かつ網羅的な生命科学研究」を行うための種々の実験方法、計算機シミュレーション技術、「バイオインフォマティクス」的な解析方法などの要素技術開発と、それら要素技術の具体的な問題への適用を今後さらに進めてゆく必要があります。本専修では研究室の枠を超えたプロジェクト研究を推奨し、慶應発の「計算機科学と生物学の新規融合分野」の開拓を精力的に進め、これらの研究活動を通じ、本専修がポストゲノム研究の比類なき研究拠点となることを目指したいと考えています。

大学院学生の教育という点では、教育・生命をシステムという観点から見ることができる、計算機科学と生命科学の双方に明るい学生の育成を目指します。そのため「ポストゲノムの生物学」を意識した基盤学術科目を設け、それらの科目を中心に、「生命システム情報」分野の大学院教育を充実させ、新しい生命科学に対する高度な教育を提供します。これら基盤学術課目を効果的に利用することにより、学生の自由度を尊重しながらも、当該分野で研究を行う上で必要な基礎知識について掘り下げを行うことが可能となります。また指導教員は、学生の講義履修についてきめ細かな助言を行い、個々の学生の履修履歴を考慮した効果的な履修計画の立案を支援します。大学院博士課程学生の教育では、研究計画の立案・実行・解析を自ら行い、この新たな生命科学分野で自らが情報発信者になれるような研究者の育成を目指しています。

生命システム専修

ナビゲーションの始まり