慶應義塾大学理工学部 広報誌
  新版 窮理図解  
10 能崎幸雄 3 迷いがある時こそ集中すること

研究とプライベートの区別は難しいですか?
 結婚するまでは研究三昧でした。でも結婚を機にそれを改め、子どもが生まれてからはちゃんと切り分けられるようになりました。講義の準備が大変なので、家に持ち帰ることもありますが、子どもと一緒にいるときは完全にプライベートですね。実際、子どもを前にするとそれだけで手一杯で、物理どころじゃないというのが正直なところです。子どもは何を考えているのかさっぱり分かりませんし、少しもロジカルではない。でも、その分からない感じと手に負えない感じとが相まって面白いんでしょう。現在、プライベートの最大の関心事は子どもであることは間違いないですね。

photo学生には何を学び取って欲しいと考えていますか?
 私自身の経験を踏まえたアドバイスをするなら、どんな研究分野でもいいので、自分が面白いと思える対象に出合って欲しいと思います。すでに見つけている方はそのまま邁進(まいしん)してください。そして、まだ出合えてない方はあれこれ目移りしてしまう気持ちをぐっと抑えて、とりあえずでよいので、何か1つに集中することをお勧めします。
 1つのことに集中して一所懸命になることが格好わるいという風潮もありますが、せっかく勉強できる環境にいるのですからそれを活かさない手はありません。何かに集中して取り組むといくつも壁が見えてきます。その壁を1つ1つ乗り越えていくと、乗り越えた瞬間に劇的に視界が広がることがあります。すると世界の広さを実感できるはずです。
 勉強以外にやるべきことも多く、大変とは思いますが、迷いがある時ほど何かに集中してみてください。それまでの疑問や謎といったいろいろなことがつながり、納得できる瞬間が必ず訪れます。その瞬間をぜひとも捉えて欲しいと思います。

どうもありがとうございました。

◎ちょっと一言◎
学生さんから:
一般教養の講義ではただの厳しい先生という印象でしたが、研究室に入って一変しました。研究で分からないことを質問した時も、単に答えを教えてくださるだけでなく、疑問を解決するためのステップを細かく刻んで、僕らに考えさせながら理解の階段を上っていくように説明してくださいます。質問者だけでなく、ゼミに参加する全員がなるほど、そういうことだったんですかとうなずくことも少なくありません。難しいことをごまかすことなく、難しさはそのまま、ちゃんと理解できるようになりました。
研究とそれ以外のメリハリがはっきりしています。研究室では研究のことばかりが話題になりますが、一緒に食堂で食事をしているときはワールドカップの行方を心配するなど、研究だけにならないところが先生の魅力です。今年は研究室ができて3年目なので、合宿を計画しています。先生の新たな一面を見ることができるかも、と今から楽しみです。

(取材・構成 渡辺 馨)

 

 

1 仕組みを知りたくて カメラを分解してしまう
2 恩師の授業で物理の楽しさを知る
3 迷いがある時こそ集中すること
Profile 能崎幸雄 物理学科 准教授
専門はスピンダイナミクス、スピンエレクトロニクス。現在の研究テーマは、強磁性金属中において電子系やフォノン系と強く結合するスピン角運動量のダイナミクスの制御。基礎研究から実用を想定した応用研究まで幅広く展開している。1998年、博士(理学)を取得後に九州大学大学院システム情報科学研究院助手となり、2006年同大学准教授に就任。2010年に慶應義塾大学理工学部准教授に就任。現在に至る。
 
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