慶應義塾大学理工学部 広報誌
  新版 窮理図解  
01 牛場潤一 氏 3 BMIを患者さんに役立つものにしたい

産学連携ではどんなお仕事が進んでいますか。
 最終的にはBMIを実際に患者さんに使ってもらえる道具にしていかなくてはなりませんから、それに賛同してくれる企業と組んで、一緒に生体信号分析のアルゴリズムを作ったり、機械を作ったりしています。会社によってマーケットまでの温度差があり、先行開発として勉強しながらじっくりやりたい企業からまっすぐに市場をめざすところまでさまざまです。業種はエンターテインメント、家電メーカー、自動車など、これまたいろいろあります。

最近、大きな研究プロジェクトに参加しておられるそうですね。
 文科省の脳科学研究戦略推進プログラムです。慶應のほかに、ATR、東大、阪大、島津製作所などが参加しています。代表者は医学部リハビリ科の里宇(りう)先生で、慶應は医学部と理工学部の連携で取り組んでいます。

ゲスト写真これからBMI研究をどんな方向に進めたいと思っておられますか。
短期、中期、長期の目標はそれぞれどんなことでしょう。

 短期的には、いま立ち上げているリハビリBMIについて数年のうちにエビデンスをきちんと出すのが目標ですね。リハビリはBMIの新しいコンセプトです。学問として道筋をつけて、慶應から世界に発信したいと思っています。世界的にはこの分野で大きな研究拠点が2つありますが、私たちは医工連携の研究をずっとやってきたという自負があるので、BMIをフィールドにして花を咲かせたいという希望をもっています。数年で学問的な検証はある程度進むと思いますが、医療に結びつけるにはさらに年月が必要です。しかし、エアコンをつけるとかTVをつけるという程度の目的なら、数年でデバイスができてもおかしくありません。患者さんが購入できる程度の価格で使えるものを作る道筋をつけたい、というのがもうひとつの目標です。
 中期的には脳科学をベースにしたリハビリのサイエンスを作り上げる一端を担えるようになりたいと思います。現在のリハビリはまだ経験則によるところが大きいんです。それが今、科学として体系化する方向に進んでいるので、自分もそれを担う一員になりたいと思います。
 究極的な目標は教育に還元することですね。この分野は多くの領域を融合的に学び、多様な人と付き合う必要があるので、そうしたことを自発的にできる人間を育てたいと思います。自分自身も勉強しなくてはなりませんが、学生さんたちも一緒に成長してもらって、縦糸をちゃんともっていると同時に自ら隣の縦糸との間に横糸を張っていくことができる人間になってほしいと思います。
 私は、前に述べたような家庭で育ち、小学校、中学校、高校でいろいろなことを学ぶなかで燃えられる対象を見つけることができました。幸い教員の立場になれたので、私も大学生の教育ばかりでなく、小中高の生徒たちが夢やきっかけを見いだせるお手伝いをライフワークとして続けていきたいと思っています。

お忙しい毎日ですが、気晴らしはどんなことですか。
 最近はこれといったものがありませんねえ。仕事もそうですが、小さい子供が2人いるので、その世話でてんやわんやですね。仮面ライダーごっこをしたりするのが、気晴らしになっているかも(笑)。学生時代にやっていたバンドは数年前まではライブハウスを借りたりして続けていましたが、発展的に解消してしまいました。妻はリハビリの臨床医なので、家でも研究の話をしています。幼い頃のあこがれだった書斎を最近作ったので、のんびり本でも読みたいな、と思っていましたが、実際は研究費申請のための書類作りをしているのが現状です。

どうもありがとうございました。

◎ちょっと一言◎
学生さんから:頭は切れるし、先を見通す力がすごい。表現力が豊かで理系には珍しいタイプかも。人をのせるのも上手です。楽しい研究室です。
秘書さんから:整理整頓が苦手なのは頭の回転に現実が追いつかないせいかしら…。仕事についてはやさしくていねいに指示して下さいます。ほほえましいマイホームパパの一面も。
インタビュアーから:肩に力を入れずに成果をあげるタイプとお見受けしました。コンピュータ少年だった頃が目に浮かびます。先は長いので、働き過ぎて疲れを溜めないよう気をつけて。

(取材・構成 古郡悦子)

 

 

1 コンピューターへの興味と 脳への興味
2 大学の魅力にひかれ 母校の教員に
3 BMIを患者さんに 役立つものにしたい
Profile 牛場潤一
生命情報学科 専任講師 ヒトの随意運動や反射に関する運動制御機構に関する研究に従事。最近は、これまでの科学的知見を応用したブレイン・マシン・インタフェースの開発に取り組む。2003年、デンマーク,オルボー大学感覚運動統合センター客員研究員。2004年、博士(工学)を取得。慶應義塾大学 助手。2007年より慶應義塾大学理工学部 専任講師、現在に至る。
 
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