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理工学部HOME > 学問のすゝめ > 光物性の基礎研究から生まれた新たな応用展開

学問のすゝめ

光物性の基礎研究から生まれた新たな応用展開

渡邉 紳一 (物理学科 准教授)

 物質に光をあててみて、その“応答”を通して光と物質の相互作用の様子を調べる。私が専門とする「光物性物理学」の研究内容を一言で言い表すと以上のように表現することができます。“応答”といってもその内容は多岐にわたります。物質の存在によって光の波長が変化する非線形光学現象や発光現象を調べることもありますし、さらには光によって物質の性質(金属・絶縁体・超伝導状態など)を操作することもします。また、光物性物理学は計測対象とする物質のバラエティーも幅広く、半導体から超伝導体、ソフトマターに至るまで、およそ“物性”(いわゆるモノ)の範疇に入るものならば、どのような物質でも光を用いて計測・制御します。私自身もこれまで半導体量子ナノ構造、有機物超伝導体、磁性体、高分子材料など様々な物質を計測対象として研究を進めてきました。

 このように幅広い内容を含む研究分野において、私は常に物質のミクロな構造が光学応答にどのような影響を与えるかに興味をもち研究を進めています。私たちの最近の研究で、半導体のミクロな結晶構造の対称性を上手に活用すれば、非線形光学応答を利用することで光の未知な偏光状態を極めて正しく決定できることが分かりました[1]。図1は、半導体のテルル化亜鉛結晶に、偏光状態が分からない光1(赤色)と分かっている光2(青色)を同時に入射し、非線形光学効果による周波数混合の結果として新しく生じた光3(水色)の偏光状態を解析すれば、未知だった光1の偏光状態を正しく調べることができることを模式的に示しています。この研究は、半導体結晶内部における光と物質との間の非線形相互作用を結晶構造の対称性と絡めて理解することから生まれた、光物性物理学の基礎的で重要な成果と位置付けられます。

図1:非線形光学応答を利用した新しい偏光計測の模式図。半導体結晶に光1(赤色)と光2(青色)を入射し、非線形光学効果で生じた光3(水色)の偏光状態を解析すれば、光1の偏光状態を調べることができる。

 さて、以上の研究は一見すると地味に見えますが、実はこれが重要な応用研究へとつながっています。可視光振動数域には性能の良い偏光光学素子が存在しますが、可視光に比べて振動数の小さい中赤外・遠赤外周波数域の光(いわゆるテラヘルツ光)では、性能のよい偏光子を作ることは極めて難しいのです。私たちのアイディアを利用すると、光1としてテラヘルツ光を、そして光2・光3として可視光を用いることで、テラヘルツ光の偏光情報を可視光の偏光情報に転写して、これを短い計測時間で精度よく読み出すことができます。これによって、私たちは世界に類を見ない速さで計測できるテラヘルツ偏光計測装置開発に成功しました[2]。

 産業界では、テラヘルツ光は可視光が透過しない紙やプラスチックを透過するために新しい非破壊検査光源として注目を集めています。さらにテラヘルツ光の偏光計測技術と組み合わせれば材料内部の屈折率異方性を素早く非破壊検査できます。私たちの基礎研究から生まれた技術はこうした新しい非破壊検査技術に応用できるのではないかということで、大変注目を集めています。このように、基礎的な物理の探求が応用へと即座に結びつくところも、光物性物理学研究の大きな魅力といえるのかもしれません。

[参考文献]
[1] K. Oguchi, N. Yasumatsu, and S. Watanabe, J. Opt. Soc. Am. B 31, 3170 (2014).
[2] N. Yasumatsu, A. Kasatani, K. Oguchi, and S. Watanabe, Appl. Phys. Express 7, 092401 (2014).

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