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学問のすゝめ

匂いのデジタル制御

岡田 謙一 (情報工学科教授)

 私達は日常生活において、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のいわゆる五感全てを通して情報を獲得し、自分の周りの環境や物体の存在、状態を認識しています。もちろん生活環境の情報の多くは視覚と聴覚情報であり、それらにたよる生活が嗅覚を阻害し、嗅覚は五感の中で最も退化した感覚になっています。普段の生活では食事以外、嗅覚の役割に気付くことは少ないのではないでしょうか。実際、皆さんの生活に無くてはならない携帯、インターネット、コンピュータなどいわゆるICTの世界でも匂いメディアは全く利用されていないと言っても過言ではありません。

写真1

 その原因として、映像や音と異なり匂いの発生や制御が困難であることがあげられます。光の3原色のように混ぜ合わせればどんな匂いも合成できる原臭は存在しません。匂いを切り替えるときは、前の匂いを素早く消臭しないと混ざり合った匂いになってしまいます。同じ匂いを嗅ぎ続けると順応と呼ばれる現象により、数10秒でその匂いを感じなくなります。このようなことから現在開発されている香り発生器は、部屋の香り付けを目的としたものがほとんどで、映像にあわせて高速に匂いを切り替えるようなものはありません。
 私の研究室では、総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の支援を受けて、1ミリ秒以下の時間幅でパルス状に匂いを発生させる嗅覚ディスプレイを開発しています。この装置はインクジェットプリンタの技術を応用したもので、数ピコリットルの単位で香料を制御し、4種類の匂いを127段階の強さで射出する事ができます。

写真2

 この装置を用いると今まで経験した事が無いような不思議な匂いを嗅ぐことができます。たとえば、目の前にあるフルーツバスケットの匂いを一息で嗅いで、個々の果物を言い当てることはよほど訓練を積まないとできません。なぜなら匂い分子は空気中で混じり合ってしまうので、一呼吸で感じるのは一つの混ざった匂いだからです。人間が匂いを感じるのは息を吸い始めてから1秒間ほどですが、この嗅覚ディスプレイを用いて細いパルス状の2種類の匂いをある間隔を空けて射出すると、混ざる事無くはっきり2つの匂いを一呼吸の中で認識することができます。

写真3

 反対に、同じ匂いを2回射出したとき、徐々に2つの匂いパルスの間隔を短くしていくとある時点から1回の射出だと感じます。ちょうど視力検査でリングの空いている所の間隔が狭くなるとつながって見えると良く似ています。現在、健康診断で嗅覚を調べる事は殆どありません。しかし、実用的な医療用嗅覚ディスプレイが開発されれば「あなたの嗅力は1.5です」と言われる日も近いのではないでしょうか。
 嗅覚ディスプレイと呼吸センサと組み合わせて、毎呼吸に1回100ミリ秒ほどの匂いパルスを射出すると、順応の影響を余り受けずに数分間同じ匂いを感じ続ける事も分かりました。また、射出量を動的に制御していくと、匂いのフェードインやフェードアウトも実現することができます。このような匂いの演出はまだ未知の分野であり、面白い事が一杯有りそうです。

写真4

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