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慶應義塾大学理工学部
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理工学部HOME > 塾員来往 > [第104回] 加茂野 有徳 昭和大学 保健医療学部

塾員来往

[第104回] 加茂野 有徳 昭和大学 保健医療学部

理工学部を志望した動機

附属の慶應義塾高等学校から慶應大学に進学するにあたり、私はとくに理工学部を志望していた訳ではありませんでした。何かにすごく興味がある訳でもなく、物理は好きでしたが、経済や文学・語学に興味もあり、何となく学部を選びました。しかしその後、物理情報工学科、生体医工学研究室(富田研究室)を経て大学院進学にまで至ったのは、身の回りの自然界に極当たり前に存在している物事を解き明かし、説明する楽しさを知ることができたからであるように思います。それは、現在の理学療法士という仕事、大学教員という仕事にも通じていることです。ここでは、大学入学から現在に至るまでのエピソードを理工学部、理工学研究科時代を中心にご紹介します。

加茂野 有徳氏

歌にはまった学部時代・・・でも実験が好きでした

ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 (本人、前列右から3番目)

ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
(本人、前列右から3番目)

高校の部活で腰を悪くしていた私は、大学でのサークル選びに悩みました。何かに打ち込んでみたいという気持ちと、これがやりたい!という興味の対象が見つからないもどかしさがあったことを覚えています。そんな中で偶然入ってしまったのが、「ワグネル・ソサィエティー男声合唱団」でした。当然のことながら男ばかり、当時は60-70人の部員がいました。練習に連れて行かれ男ばかりで冗談じゃない、と思っていたはずが、すっかり歌うことにはまってしまい、週5回の練習もなんのその、空き時間も部室や音楽練習室で歌い、しまいには時間を「空けて」まで音楽に没頭する日々でした。講義よりも歌に、音楽に気持ちが行っていましたが、そんな中で私が楽しく取り組んだのは「実験」でした。実験書に沿って進め、理論的に裏付けられた結果を導く。しかしながら、なぜその結果に至るのか、予測値と実験で得られた値との違いは何によるものなのか、実験の手続き上の問題で丁寧にやりなおせば予測値に近い値を得られるのか、制御できない要因によるものなのか、そんなことを考えながら実験を進めたり、レポートをまとめたりすることは大変ながら講義にはない面白さがあったように記憶しています。

研究室配属から大学院進学へ

 学部4年生に進級する際に卒業研究のための研究室配属がありました。歌うことにまだまだ夢中だった私は、ヒトの身体に興味があるという、ほぼ直感に近い安易な動機だけで配属希望の研究室を選んでしまいました。その研究室が、指導が丁寧な(厳しい)ことで有名な研究室であったことは後になって知ったことでした。しかし、ここでの「研究」との出会いは大学院進学を全く考えていなかった私にとって衝撃的で、もう勉強しても仕方ないと決めつけていた思考を180度転換させられるほどのものでした。卒業論文のテーマは神経発火現象のカオス性をシミュレーションするものでしたが、その研究の面白さに加え、月が瀬リハビリテーションセンターの臨床工学室へ行き臨床研究にふれられたことも大学院進学を決めた要因であったと思います。ちなみに、指導教授であった富田豊教授からかけられた「研究に休みはない。365日研究だ!」という言葉は今でも覚えています。

 大学院修士課程では、脳卒中片麻痺者の歩行補助のための電気刺激装置の開発というテーマで、月が瀬リハビリテーションセンターの職員宿舎に泊まりこみ、装置の開発から入院されている片麻痺患者さんでの試用、データ収集を行いました。そこでの理学療法士、リハビリテーション科医師の方々と出合いは、現在に至る私の進路決定に大きな影響を与えました。リハビリテーションという言葉は聞いたことがあっても、理学療法というものを知らなかった私でしたが、ヒトの身体運動を専門的にみるこの仕事に魅力を感じました。理学療法士は英語でPhysical Therapistといい、様々なとらえ方があると思いますが、私はphysicalすなわち身体の専門家、治療者であると考えています。この視点から人、社会の役に立ちたいと考え、理学療法士になることを決意しました。
 修士課程終了後、北里大学医療衛生学部に編入学し、卒業とともに理学療法士国家試験に合格、農協共済中伊豆リハビリテーションセンター(静岡県伊豆市)に理学療法士として就職しました。現在は、昭和大学保健医療学部理学療法学科に専任講師として着任しており、理学療法士を志す学生の教育に従事しています。

現在の私

 現在、私は、脳卒中片麻痺者の歩行トレーニング方法の理論的解明をテーマに研究を行っています。理学療法あるいはリハビリテーションを行っていくと、片麻痺者は歩行を再獲得し、日常生活における移動手段としてその能力を高めていきます。そのプロセスはいまだ十分に解明されておらず、トレーニング方法も確立されていません。しかし、片麻痺者が歩行を獲得するという事実はすでに起こっていることです。どのようなメカニズムでこの現象が成り立っているのか、それに筋道や仮説を立てて解明し、より効果的な治療へつなげていくことが私のこれからの仕事であると考えています。
 さて、大学時代に始めた歌、音楽は今も貴重な財産です。地元横浜の合唱団で歌ったり、ヴォイストレーニングを受けながら独唱したりと、私の生活を彩ってくれています。
 研究と歌 - 理工学部、理工学研究科で学ぶ中で得たものが、私が生涯をかけて打ち込んでいくであろうものになっていることをこの文章を書くなかで改めて感じることができました。

プロフィール

加茂野 有徳(かもの ありのり)(慶應義塾高等学校 出身)

2000年3月

慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 卒業

2002年3月

慶應義塾大学大学院理工学研究科 基礎理工学専攻 修士課程 修了

2005年3月

北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 卒業

2005年4月

理学療法士免許 取得
農協共済中伊豆リハビリテーションセンター 入職

2009年4月

昭和大学 保健医療学部 専任講師 着任
現在に至る

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