音声ブラウザ専用。こちらより利用者別メニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりカテゴリ内メニューへ移動可能です。クリックしてください。

音声ブラウザ専用。こちらよりメインコンテンツへ移動可能です。クリックしてください。

慶應義塾大学理工学部
English
サイトマップ
KEIO NAVI
受験生の方
在学生の方
卒業生の方
企業・研究者の方
YAG@MIX(学内向)
概要
学部・大学院
教育・研究
教員プロフィール
関連リンク
交通アクセス
理工学部創立75年

理工学部HOME > 塾員来往 > [第27回] 高嶋哲夫 作家

塾員来往

[第27回] 高嶋哲夫 作家

高嶋哲夫氏

「人生、一寸先は……」

「この一歩は小さいが、人類にとっては偉大な躍進だ」 1969年、人類史上初めて地球以外の星に降り立った宇宙飛行士アームストロング船長の言葉だ。僕は、大学一年生だった。
 ロケットをやりたいと思ったのは、このときだった。といってもどうしていいか分からず、宇宙やロケットに関する写真集や一般的な啓蒙書を買い込んで読んだ覚えがある。 関係する分野といえば、流体力学だった。
 研究室の見学で、MHD発電の基礎研究をやっている研究室があった。真空に引いたパイプの一方に、切り込みを付けたアルミ板をセットして破り、ショックウェーブを発生させる装置だった。電磁流体力学という言葉に何となくアカデミックな響きを感じて、その研究室で卒論を書いた。そこではいい先生、先輩に恵まれ、楽しく有意義な一年間だった。

 大学院に進学してからは、当時、田無にあった通産省の電子技術総合研究所に通い核融合をやった。授業の単位は一年余りで取って、後半はほとんど電総研に通っていた。
 電総研ではθピンチをやった。これは円筒内の気体を磁力線で圧縮して、高密度、高温のプラズマを作る装置である。ここでも能力ある先生たちに恵まれ、有意義な時間をすごすことができた。
 大学院の時は「プラズマ若手」という、全国の大学からプラズマ研究をやっている学生が集まる勉強会などに参加した。
 そのとき、日本原子力研究所を見学する機会を得て、当時では世界レベルのトカマク型核融合実験装置を見学した。「地上に太陽を」この言葉は、すごく魅力的で生涯の研究テーマにしようと熱く思ったことを覚えている。僕は科学を通じて人類に貢献する、などと本気で思っていた。

 修士を終えると原研に就職した。
 ここでは、「JT-60」という次世代の大型核融合実験装置の研究開発に携わった。何年後かに完成すれば、世界トップレベルの大型トカマク実験装置になるはずだった。実際に、稼動を始めてからは世界最高の実験値を出している。
 しかし、就職前に友人を訪ねてアメリカにひと月ばかり旅行し、アメリカの大学を見学したとき、必ずもう一度戻ってこようと強く思っていた。
 幸い、修士論文を英語で書いていたし、原研に入って二年余り後、英文の論文もできたのでUCLAのある教授に送ってなんとか受け入れの返事をもらった。
 それから色々あって、結局、挫折して日本に帰ってきた。面倒だし、あまり楽しい思い出でもないので省く。要するに、自分の才能の限界というものが見えたのだ。世界は広かった。
 日本に帰ってからも色々あった。といっても比較的のんびりした時期で、子供を育てて、ボーっとしている間に時間がすぎていった。
 原研を出るとき、また帰ってきて皆さんの前で講演しますと大見得を切った。当時はまったく恐れを知らないバカ者というか、今考えると赤面する。

 今年、五月、原研で講演した。数式と実験データを示しながら颯爽と、というのとは違って、「科学と文学」という自分でもよく分からない内容だが、何となく古巣に帰ったような気がして楽しかった。講演の後、昔のグループの仲間が飲み会を開いてくれた。文壇のパーティーより、遥かにほっとする。
 正直、物書きとして進む決心をするときには大いに悩んだが、今となってはそれも良かったかと自分を納得させている。
 小説家としてデビューしたとき、編集者が「原研出身の大型新人」でいきましょうと言ったが、理系出身ということはわずかな理系の知識と共に役に立っている。
 本を読んだのは、小学校時代の少年少女世界文学集程度で、その後は小説などほとんど読んでいない。今でも、小説を読むよりは、資料を読むほうが多いし、楽しい。

 意識しているわけではないが、科学をベースにしたものが多い。『ペトロバグ』『命の遺伝子』は遺伝子関係、『スピカ』『冥府の使者』は原子力関係。
 現在は、去年出した『M8』の影響で災害ものが多くなっている。これはスーパーコンピュータを駆使して地震予測をするという、何となくありそうなことだが、この分野に詳しい友人にはかなり眉唾物だと言われた。
 今月15日に『TSUNAMI』が出る。これは名前の通り津波を扱ったもので、本を通じて多くの人たちに地震や津波の恐ろしさを知ってもらい、同時に正しい知識を持ち、対策を立てていればさほど怖いものではないということを分かってもらえれば有り難い。
 現在、ある小説の映画化の話とアメリカでの出版の話が進んでいるが、いずれも形となって現われるのは再来年の話。

 今後も、科学をベースにした小説を書いていきたいと思っていますが、どうなることか。

プロフィール

高嶋 哲夫(たかしま てつお)(岡山県立玉野高等学校 出身)

1973年3月

本塾大学理工学部機械工学科 卒業

1975年3月

本塾大学大学院工学研究科機械工学専攻 修了

1975年4月

日本原子力研究所研究員。その後,カルフォルニア大学留学。

1994年

「メルトダウン」で第一回小説現代推理新人賞を受賞

1999年

「イントゥルーダー」で第十六回サントリーミステリー大賞・読者賞を
ダブル受賞


主要著書:

『スピカ』『ミッドナイトイーグル』『ペトロバグ』『トルーマン・レター』『命の遺伝子』『メルトダウン』『虚構金融』『M8』など多数。

↑PAGE TOP