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学問のすゝめ

元素の起源と超新星爆発の謎

山本 直希 (物理学科 准教授)

 身の回りの物質はさまざまな元素でできています。例えば、私たちの体は、水素、炭素、窒素、酸素などの元素から構成されています。そもそもこれらの元素は、宇宙の進化の過程で、いつどこでどのように作られたのでしょうか? 水素やヘリウムなどの軽い元素は、宇宙初期のビッグバン直後に合成され、炭素やそれより重い元素は、星内部での核融合反応によって合成されたと考えられています。

 太陽などの恒星は、内部で核融合反応によってエネルギーを生成し、これが星自身の重力とつり合うことで安定に存在しています。特に、太陽の約10倍以上の質量をもつ恒星では、その進化の最終段階で、鉄の中心核を作ります。鉄は全ての原子核の中で最も安定のため、核融合反応でエネルギーを作り出すことができません。その結果、星は自分自身の重力によってつぶれてしまいます。この重力収縮によって中心核の密度が十分高くなると、外側から落ちてくる物質が中心核ではね返されて、最終的に爆発を起こします。これが(重力崩壊型)超新星爆発と呼ばれる現象です。超新星爆発によって、星内部で作り出された元素が宇宙空間にばらまかれ、これらの元素が私たちの体を構成する“素”になっている訳です。カール・セーガンはこのことを「私たちは星くずで出来ている」と表現しました。

 しかしながら、この超新星爆発のメカニズムは、実は未だに完全には解明されていません。実際、これまでの超新星の3次元数値シミュレーションでは、爆発をうまく再現できていないのが現状です。爆発を引き起こすために特に重要な鍵を握るのが、ニュートリノという素粒子だと考えられています。星の重力収縮によって解放されるエネルギーの大部分は、星内部で大量に生成されるニュートリノが星外部に持ち運ぶため、爆発に十分なエネルギーをニュートリノが物質に受け渡しできるかどうかが本質的な問題になるのです。

 ちなみに、このニュートリノは、太陽の核融合反応でも絶えず作られていて、人間の体を毎秒10兆個以上は通過しています。ただし、ニュートリノは物質との相互作用が大変弱く、物質中を殆どすり抜けるため、日常生活でその存在を実感することはありません。どうしてこのような“幽霊素粒子”が存在しているのかということ自体、大変不思議な問題です。さらに不思議なことに、ニュートリノは左巻きのカイラリティという性質をもっていて、これまで右巻きのものは見つかっていません。ニュートン力学や電磁気学など、物理法則の大部分は左右反転の対称性があり、鏡に映した世界でも同じ物理法則が成り立っています。しかしどういう訳か、ニュートリノはこの性質によって左右の対称性を破っています。

 最近の理論的な研究で、ニュートリノのカイラリティが、超新星爆発に重要な役割を担っている可能性が分かってきました。ニュートリノは左右の対称性を破ることによって、超新星において、空気や金属などの身の回りの物質で現れないような、散逸のない効率的なエネルギーの輸送を行うことが可能になるのです。「スケールの全く異なる、ミクロな素粒子の性質とマクロな天体現象が密接に関係している」というのは実に驚くべきことで、このようなミクロとマクロの間の非自明な関係性を見出していくことは、物理学の醍醐味の1つです。

 果たして近い将来、重元素の起源の“最後のピース”である超新星爆発を完全に説明することはできるでしょうか?

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