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学問のすゝめ

自然工学のすすめ

佐藤 春樹 (システムデザイン工学科 教授)

 宇宙に浮かぶ地球は白い雲の間に青と緑の輝く星です。白い雲と青の輝きは空と水の色であり美しい地球の空間環境です。そこに光合成にはじまる生命の緑が輝きます。そして全ての輝きは太陽光によってもたらされています。この「青(大気と水)」と「緑(土壌と生命)」、そして「赤(太陽)」の光の三原色を大切にすることが、自然環境と調和することであると思います。

 科学技術は快適な人工空間を多くの人々に提供してきました。一方で現在、人類の最大の課題は、地球規模の自然環境保全です。科学技術は、本来自然科学に学ぶ「自然工学」であって欲しいと思うのですが、いつしか化石燃料資源を貪り、自然環境のバランスを破壊して、生態系に大きな影響を招いています。人類の持続可能性を確保するためにも自然環境と調和できる智慧が必要に思います。坪庭や周囲の自然を取り込む借景の発想をもつ和の住居に代表される「自然環境と共に暮らす智慧が築いた品格ある日本の伝統文化」に学びたいと思うのは私だけではないと思います。

 太陽は人類のエネルギー消費総量の約7000倍のエネルギーを地球に降り注いでいます。このエネルギーが全て大気を温める熱となったら大変です。植物の葉は、例え雑草であっても蒸散によって太陽光を受けても熱くならず、また影をつくって地表が温まるのを防いでいます。そして、光合成は太陽光と土壌と水を用いて大気中の二酸化炭素を栄養に変え、その栄養はあらゆる生命のエネルギー源となり、同時に大気中の二酸化炭素を削減しています。

 即ち植物を伐採すると地表気温が上がり、蒸散による大気への水循環が減り、大気中の二酸化炭素が増えます。森林が周囲温度よりも数度涼しいことは実感できます。天気の良い日には数メートルの高さの1本の木から1日に数10 kgの涼しい水が大気中に蒸散しています。そして蒸散は陸に降った水を、海を介さないで直接大気に返します。その陸と空の間の水循環は海水の総量を減らし海水面の上昇を防ぐ働きもしています。概算すると地球温暖化の影響と言われる年間1.7mmの海面上昇は、陸上の年間降水量の約0.5%に相当します。森林がその程度伐採されてしまった可能性は十分考えられます。

 さて、蒸散を多孔質セラミックスにより人工的に再現してみました。図のようにコップの水に浸けた多孔質セラミックスは水を吸い上げ常に全体が湿っています。そして空気と触れている表面から蒸散を行うことで自然に冷たくなります***。植物の蒸散と同じです。

 セラミックスから蒸散した水のガスは周囲の空気より低温なので、より高温の周囲から熱をもらい続けます。水のガスは空気の成分である酸素や窒素よりも軽いので上昇気流をつくります。山に登ると気圧が低くなり涼しくなります。上昇気流中の水のガスも、圧力が下がり膨張して冷えて、周囲から熱を奪い、熱放射も吸収しながら上がって行きます。そして上空でかなり低温(例えば10,000 m上空の場合は約 −50℃)となってはじめて潜熱****を大気に渡して凝固(凝縮)し白い雲となります。

 空を見上げてください。雲はそんな場所(地上付近〜13,000 m)にあります。白い雲は太陽光を反射して地表に届く光を減らします。そして、冷たい雨や雪となって地表を冷やします。陸と空との水循環は上昇と下降の双方向で地表の気温を下げ、海面上昇も防いでいます。

 二酸化炭素の排出削減が進まない分を地球規模の蒸散で補い、地球の「青」と「緑」と「赤」、即ち、水・炭素・エネルギーの循環を本来の自然環境と調和するように努力してこそ、人類は安心・安全に暮らせます。この三原色を大切にする智慧を「自然工学」と呼びたいと思います。

 水と炭素の地球規模の健全な循環を維持し、太陽エネルギー利用によるエネルギー環境システムの構築から地球環境問題を克服し、幸せな暮らしを実現しようではありませんか。


「自然工学」という用語は造語です。本文の内容は(熱くならないソーラーパネルや蒸散排熱装置の開発など自然環境と調和できる工学を目指す)著者の自然環境現象の解釈と自然環境調和の考え方の紹介です。

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カップのデザインは、株式会社良品計画のWEB上のカタログ写真(閲覧 2016年8月7日)を使わせて頂いた。

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セラミックス表面では空気から入ってくる水と蒸散によって出て行く水の量のバランスで温度が決まります。相対湿度が100%のとき水の出入りは同じ量になり、エネルギーの出入りも同じでセラミックスは同じ温度のままです。湿度が低い状態ではセラミックスから出て行く水の量が多く、エネルギー(蒸発潜熱)が奪われセラミックスは冷たくなります。特筆したいのはこの蒸発潜熱がすぐに空気に渡され大気を温めることはないということです。気体の内部エネルギーとして水のガスがもち続けます。この蒸発潜熱を大気に渡すのは、地上で蒸散した水のガスが上空で雲となり液体の水か氷に相変化する時でかなり低温になってから渡すことになります。一方で、高温で沸騰した水蒸気はすぐに空気に触れて冷やされ、大きな凝縮潜熱を周囲の空気に与えて温め、液体の水に戻ります。この液体の水の粒子が白い煙のように見えます。蒸散した水のガスは目に見えません。

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潜熱(せんねつ)とは、液体から気体、あるいは気体から固体など気相、液相、固相の相互間で相変化する際に必要とされる熱です。このような過程では熱を与えたり奪っても温度は変化しません。熱を与えたり奪ったときに温度が変化するような場合は顕熱(けんねつ)といいます。

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