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学問のすゝめ

「私も政治家!?」

沼尾 恵 (外国語・総合教育教室 専任講師)

私には5歳の娘がいます。その娘と「おもちゃを片付けなさい」「やだ」とか「ソファの上でジャンプしません」「いいんだよ」などと、家の中でしないといけないこと、してはいけないことをめぐってしばしば争います。何をしてもかわいい大好きな娘とでさえこんな状況ですから、育ちも考え方もまったく違う赤の他人と一定の空間を共有し、その空間の中でどのように生きていくべきかを決めることになったとしたら、考えただけで頭が痛くなりそうですよね。

私が専門としている政治哲学は、大ざっぱにいうと、この頭が痛くなる作業をすることです。同じ空間を共有している人々がそこでどのように生きていくべきなのか、またそれは誰(大抵の場合、国家)が、なぜ、どこまで決めていいのか、こうした問題などについて考えることです。具体例をひとつ見ていきましょう。昨年の流行語のトップテンに入った「ヘイト・スピーチ」がありますが、これは特定の集団に対して公な場で侮蔑的・差別的な発言をすることです。さて、こうした発言がこの国で許容されるべきか否か、国はなんらかの法的措置をとるべきか否か、考えてみましょう。許容されるべきで法的措置を講じるべきではない、といった場合、憎悪表現の的となっている人たちが傷つくことを許してしまうことになる、あるいは彼らが安心して生活できなくなる、という人がいるかもしれません。他方、許容されるべきではなく法的措置を講じるべきだ、といった場合、表現の自由を制限し世の中を窮屈にしてしまう、あるいは国家に言論統制する力を渡してしまうことになる、と考える人もいるでしょう。このような問題に対して簡単に答えは出ません。

こうした難しい問題に日々取り組んでいる政治家、あるいは政治家を目指している文系の皆さん、大変ですね、と他人事として片付けたくなるかもしれませんが、これは理系分野に携わる皆さんにも関係ある話なのです。というのは、皆さんもこれから「政治家」になる人たちだからです。いまの世界を見て、理系出身の政治家は決して稀ではありません。最近の日本では鳩山元首相、管元首相、海外ではドイツのメルケル首相、イギリスの故サッチャー元首相などがその例です。また科学やIT技術が日進月歩の今日、当該分野の専門家の提言が政治の現場で多く求められる時代になってきています。たとえば、エネルギー政策などの方向性を決めるうえでは、専門家の知識・見識が必須でしょう。また、皆さんは市民として、有権者として、必然的に政治に関わることになるでしょう。これは広い意味での「政治家」です。「政治家」として皆さんも政治哲学の問題を自分のこととして、ぜひ頭を痛めてください。「リケジョ」ならぬ「リケ・ポリティシャン」が流行語大賞をとることを願って、皆さんに一票投じたいと思います!

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