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学問のすゝめ

電磁気学、ラーメンの湯気?

木下 岳司 (電子工学科 准教授)

 電磁気学は大学で嫌われている講義科目の代表と思われる。しかし、その重要性は誰でも知っているし、理工系学部では必修科目であり続けている。ここでは電磁気学の教科書や講義ではふだん述べない本音を少しお伝えしたい。実は教えている側にも混乱や悩みが多いことが教科書から読みとれることがあるのです。
 電磁気学が嫌われる理由として「見えないからわからない」が最も多い。「気」とつくもの(「物」と書かない)は「気合」「元気」「雰囲気」「気体」・・のように形のないものばかりである。たとえば電界や電場という用語の「界」や「場」という概念は抽象的で、「神」「支配」「運命」にさえ通じるように感じる。見えないものを解明し、利用するのが文明で、それを学ぶのが直接的な目的であるけれども、電磁気学が必修科目である理由のひとつとして「イメージトレーニング」が重要と思われる。電流、電圧のように見えないけれど測定できるもののほかに、実在せず、当然測定できないものが登場するので電磁気学は「お化けワールド」かも知れない。とくに後者はわかりにくく、実在するのか、正しいのか論争の対象になってきたものが含まれる。
 「磁力線」は誰でも知っていて、「魅力」「ひきつける力」のたとえにも使われる。磁石にはNとSの磁極があり、砂鉄を使うと磁力線の模様が見えることを多くの人が経験している。しかし、磁力線の源が何であるかは怪しい。教科書には磁極に「磁荷」があると書かれているが、「実在はしない」とただし書きが付いたり、この発想に否定的な説明を加えることがある。これは勉強する側にとって迷惑に違いない。一方、電子やイオンのような「電荷」は磁力線より無名な「電気力線」の源であり、こちらは明快である。科学は正しい理解に有益であれば、実在しないものを考え出し、利用することを許している。「お化け」も利用してしまう?数字自体にも形はないし、「虚数」は有益な「嘘数(うそすう)」である。そういえば法律、貨幣にも真の形はない。
 金属の棒を棒磁石の磁力線を横切るように動かすと金属棒に電気が発生する。これを「電磁誘導」といい、発電の原理である。電磁気学では重要な項目であり、この用語は現象をうまく表現している。つぎは奇問であるが、逆に丸棒の形の棒磁石を中心軸のまわりに回転すると金属棒は発電するだろうか。磁力線(厳密には磁束線)が磁荷から髪の毛のように「生えている」ならば、磁石とともに回転するので、棒で横切るのと同じで発電することになる。実は発電しないので「生えていない」と考えればよい。筆者は「ラーメンの湯気(ゆげ)」と説明している。もともと磁荷が存在しないので「生えていない」と述べる教科書もある。実用面ではこのパラドックスに陥ることが少ないので、多くの教科書では触れてなかったり、筆者もそうであったが、「生えている」と誤解する読者が多い。
 これ以外にも「お化け」がある。マクスウェルの「変位電流」のような当初異端視された実在しない有用なもの、なかなか実在を示せなかった「ベクトルポテンシャル」、「磁流」のような「ズルい」ものまである。
 「電磁気学は見えないから難しい」けれども、これを逆手にとって、柔軟な発想、イメージ力を使って実在しないものを作って利用する技を身に着けるための科目と考えれば、教科書や講義に縛られない理解のしかた、学び方があるように思う。実は、皆さんのなかには教える側より格段に優れた理解をしている人がいると思っている。「お化け」は有用な友達?

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