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理工学部HOME > 学問のすゝめ > 量子論、制御論、そして量子制御。

学問のすゝめ

量子論、制御論、そして量子制御。

山本 直樹 (物理情報工学科 准教授)

量子力学と聞くと、まず「不確定性関係」が思い浮かぶと思います。ある量子的な対象を「見る」と、情報が得られる一方で、観測自体が対象に影響を与え、ある種の「不確かさ」が増大する、というものです。例えば最近の技術では原子ひとつひとつを捉えることも可能ですが、これを見る=光を当てると、その光が原子をランダムに動かしてしまいます。あやふやな説明文で恐縮ですが、ともかく、「絶対に決定できない」事項が量子論にはある、ということです。日常世界での物理法則は、つきつめると「必ず決定できる」レベルに到達します。飛んでいるボールを、それに一切の影響を与えずに観測することは可能です。原理的には、ボールの向き、速度、回転、あらゆる情報をリアルタイムにしかも完璧に入手することもできるでしょう。その場合、そのボールの行き先は100%正確に予測できます。しかし、量子力学では、どんなに理想的な状況を用意しても、対象に一切の影響を与えない観測はできないのです。

さて、「制御」の話をします。我々の日常生活には、この制御が深く関わっています。車の運転ができるのは、時々刻々変化する周囲を見て、それに合わせてハンドル・アクセル操作をしているからです。目隠しをされては運転はできません。部屋の空調が一定に保たれているのも、制御のおかげです。センサーが、部屋の温度を監視し続けて、それにあわせて空調を調整しているからです。これらはいずれも「フィードバック制御」と呼ばれるものです。つまり、対象を見て、情報を得て、それに合わせて対象に操作を加えているわけです。

フィードバック制御は強力です。上の例のように、制御なしの、自然のありのままの世界では、空調が一定に保たれているような部屋は存在しません。つまり、フィードバック制御は、自然のありのままの状態では存在し得ない状況を作り出せます。なので、量子系をフィードバック制御できたら素晴らしいと思いませんか?しかし上述の通り、量子系を「見る」と、必ず、対象に不確かな影響を与えるという代償を払わなければなりません。制御する相手としては非常にやっかいです。量子系を観測して、不確かさ増大の代償を払いつつ、得られた情報を利用して制御 することができるんでしょうか・・・?実はそのことは可能なのです!!

それが何故可能なのか、どうやって実現するのか、これらのことを簡潔に説明することは無理で、またこの小記事の眼目でもありません。また、フィードバック制御の恩恵もお話したいところではあるのですが少々専門的な内容に過ぎるので割愛します。ただ、その理論体系は極めて美しく整然としているという事実と、ごく簡単な挿話を付け加えておきます。その理論は80年後半に発表されていたのですが、当初は少々数学的に難解すぎ、結果だれもフォローできないあるいは真の意味を図りかねる状況が10年以上続いていました。2004年に学位をとりポスドクとして渡米したばかりの私も、この理論の上辺だけを使って研究をしていました。ですが、同年、その理論を明確に説明した論文が発表されました。早速その論文を熟読し真意を理解できたときの感激はいまでも覚えています。物理、数学、工学にまたがる、ちょっと具体的に言うと量子力学、確率・確率過程、制御・信号処理の真髄が融合された理論体系だったのです。幸運なことに、その見事な論文の著者であるB氏は同年齢で、同じ大学同じ研究室に同じ年にポスドクとして渡米し、私たちは友人となり共著論文を書き、子供のミドルネームに彼の名前を拝借したり、・・・すごく充実した、楽しいアメリカポスドク生活だったな~。

脱線してしまいましたが最後に一言。研究は、結局は個人レベルの「感動」でドライブされるものではないか、と思っています。上述したような、物理、数学、工学のエッセンスが融合した体系に感動した私は、そういった感動体験を求めて研究を続けているようなものです。いつか自分で、異分野が融合したきれいな理論体系を発見・構築してみたいものです。

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