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学問のすゝめ

管理工学の先は計画工学?

金沢 孝 (管理工学科 教授)

ビジネス環境
 Globalizationが急速に進む中で、ビジネスの世界では経営とその環境が革新的にパラダイム変化して、以下のようなGlobal競争になっているが、その内容はNothing Newであると思われるのに、なぜ日本だけが“Slow”で、競争力を保ったビジネス展開ができていないのであろうか?
・ Speed:スタッフやエンジニアの業務フローのITによる効率化
・ Delivery:世界中何処にでも24時間で翌日配送する
・ Cost:中国などの低価格製品におけるサービス・コストの低減化
・ Quality:不良ゼロのJapanese品質は果たしてGlobal市場が求める品質か
 このような問題はビジネス世界の問題で学究世界の問題ではないと考えてはいないだろうが、管理工学の研究で上記した問題を直接的に対象にしたものは多くない。日本社会が直面している上記の問題を解決するためには、純粋な研究の世界から少し離れて、産学連携をさらに密にした実証的な研究を進める必要があるのではなかろうか。
 今日本のビジネスに求められていることは“Speed”であり、Globalな変化に対する諸外国の対応のスピードに比べて、日本の対応はスピード感がなく遅れていることを認識する必要がある。経営システムの機能全般における変化対応遅れの問題は、まさに、経営を研究対象の一つとする管理工学の課題であり、変化対応遅れの要因や構図を考察・分析して、遅れを解消するための対応策の研究が望まれている。
 この研究は変化対応の進んだ諸外国から学べないものであることから、既存研究を発展させるこれまでの研究ではなく、Globalな変化と日本の経営システムを考察して、日本独自の方策を提案する研究が必要であろう。

PDCA
 福沢先生や塾長の言われる“実学”における「自ら問題を見つけ」の“問題”とは目標と現実の差であり、“見つけ”とは目標設定することと考えている。この目標をPDCAサイクルに対応させてみれば、欧米と日本では図1のような違いがある。

福沢先生の時代から21世紀初頭までの日本におけるPDCA(図1の左)運用は、欧米という“目標”が暗黙的にあり、その目標に向かって現場中心的なアプローチでQCDを改善し続けることであった。すなわち、Plan(計画)は考えずとも“ありき”で、Action→PlanのないDo-Checkループで改善を進めて、品質とコストで世界一の生産国になった。世界一になって日本がはたと気づいたことは、ありきであった欧米という目標がなくなり、達成すべき目標が見えなくなったことである。
 欧米の経営では、トップがAction→Planループによってレベルアップした目標を示し、それを組織の各レベルと各人の目標に展開して、それら目標を達成するためのDo-Checkループが実行されるというPDCAサイクルが回っている(図の右)。それに対して、日本は上記した欧米という目標があったことと、Top-down的な経営スタイルでなかったことから、2000年頃まではPlanの必要性は薄く、Plan中心のPDCAサイクルの勉強や経験が少なかったことは否めない。
 これまでの管理工学は、欧米に追い付くという目標達成のためのDo-Checkループにおいて、現場志向の継続的な改善アプローチによるQCD向上活動に役立つ管理技術を研究・教育して日本の生産性向上に貢献してきた。しかし、目標を見失った日本では、管理技術による改善だけでは前述したSlowな変化対応しかできていないので、適切に目標設定をして、その目標を各経営レベルに展開して実行する、というPDCAサイクルの日本流を実現化する計画技術を研究・教育することが管理工学に求められている。これは、まさに実学の“自ら問題を見つける”素養を持った人材育成を目指すことと考えている。

問題解決
 目標設定におけるPlanステップを実現化する考え方の一つとして、現場・現物を見て改善を行うIE(川瀬武志:IE問題解決)では、工法・設備・システムなどの“仕組み”の扱い方によって、図2に示すように(図では仕組みを工法としている)、問題解決を以下の2つに区分している。
① 今の仕組み(目標)を認め、その仕組みの運用を改善していく、Do志向の“管理問題”アプローチ
② 今の仕組み(目標)を変更して、仕組みそのものを改善・レベルアップしていく、Plan志向の“改善問題”アプローチ

目標というPlanは、前述したようにマネジメント構造の中で議論されるものであることから、目標Drivenな経営スタイルを日本で実現化するために、西洋流のTop-downによるPDCAサイクルをそのまま日本に持ち込む方策を試行している会社もあるが、それは日本流ではなくなること意味する。
 IEでは、日本の強み・良さである現場を中心にした全員参加型の改善アプローチを発展させて、“今の仕組み”を使いこなして改善していく管理問題としてのDoアプローチを徹底的に行うことによって、次の目標となる“新たな仕組み”が必要になったり見えてきたら、その新たな仕組みを開発する改善問題としてのPlanアプローチをする、という2つのアプローチの繰り返しによって、目標と成果達成のスパイラル・アップを図る改善技術を研究・教育している。すなわち、問題発見志向でスパイラルな目標設定・達成を図れる人材を育成していきたいと考え、実践している。

 以上論じてきたように、日本ビジネスのGlobal展開がうまくいっていない理由は、Slowな変化対応という日本の抱える問題を分析・理解した上で、その対応策を検討するという視点での考察・研究がないからであり、決して本質的な負けではないことから、その視点から今後望まれる新たな計画技術に関する研究は“とても楽しい”ものになるはずであり、“学問としてすすめたい”と考えている。

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